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第58話『初めての中央都市』

 目的地に到着したのようで、魔車が駐車スペースで止まった。

 次に、運転手の方から「目的地に到着いたしました」と。


 僕たちは魔車から降りて、先に到着していたみんなの合流を果たした。


「おぉ」


 新鮮な光景が目に飛び込んできて、ついそんな声が漏れる。

 特に高層な建物が並び立っているというわけではない……のだけれど、一つ一つのスケールが凄い。


 今、目の前に立つのは学園ほどではないにしろ、普通の宿というにはあまりにも大きすぎる。

 右に左に首を振っても端がを捉えることはできず、見上げたところで屋根の触りが見える程度。


 ちなみに、みんなも大体僕と同じ反応をしている。


「こりゃあ、想像以上にすげえな」

「だね……」


 確かに、1人や2人が宿泊するわけではないのだから、これぐらいの規模間にはなるのだろうけれど。

 それにしても、この真っ白の壁がそびえ立っているかと錯覚してしまう。


 口が見開いているのを忘れて眺めていると、先生が扉から出てきた。


「皆さんお疲れ様です。上級生は先に中へ入っていますので、皆さんも行きましょうか」


 海原先生に言われていたけれど、やはりぼんやりしていた、西鳩先生。

 説明通りに、転入初日に廊下ですれ違ったという事実は憶えていたけれど、本当に一言交わしただけだった。

 それに、目線を合わせていたのもほんの少しだけだったし。


 だけど、こうして面と向かうと、ようやく思い出せた。


 細めの眼鏡に、キリっとした細目。

 第一印象は少しキツそうな性格を彷彿されるものだけれど、低い声に丁寧な言葉遣いは少しだけ距離感を感じさせるものだけど、それが逆に安心して落ち着く。

 しっかりと目線を合わせてくれるというのも、誠実さが伝わってくる。

 冷静に物事を判断しそうな印象に固まる――なるほど、自分を過大評価するわけではないけど、海原先生が言っていたあの言葉の意味がやっとわかった。


 西鳩先生の誘導のもと、僕たちと門崎さんのパーティ計16人は足を進める。


 まず初めに、人物感知の自動で開く扉を通った。

 こんなところから、普段からの違いが出てくる。

 一樹とか他数人はこれでも「おぉ」と零す。


 お次は廊下。

 だたの廊下といえばそうだけど、これはもう驚愕を隠せない。

 とんでもなく広いっていうのは大前提として、等間隔にある柱の彫りが芸術的になっている。人間の手で彫られたのか、そういう技術があるのかつい考察してしまうほど。

 それに加え、遠くにある壁には様々な絵が飾られている。

 どれを観ても価値はわからないけど、高価なものとは容易に想像がつく。

 さらには、柱付近にある机の上に乗る壺や皿。


 あれらを観てしまうと、礼儀が成っていないと罵られようとも、通路の中央を歩くんだと決意を胸に秘める。


「では、ここで一旦軽く説明をします」


 西鳩先生は振り返って足を止める。


「本日よりこのホテルにて宿泊をするのですが、遠征試験もここで実施されます。当然、各々の部屋割りもありますし、ご飯もここで摂ることになります。――ということで、皆さんもわかっているとは思いますが、注意事項を言います」


 海原先生であれば、ここでため息一つという場面だけれど、西鳩先生は表情一つ変えることなかった。


「他にもこのホテルには宿泊している人がいます。なので、移動の際はくれぐれも私語を慎んでください。もしも迷惑になるような行為が確認された場合、本試験において獲得した点数を引くことになりますので覚悟しておいてください。当たり前ですが、個人ではなくパーティ全員の点数を引きます。連帯責任ということですね」


 冷静に考えればそうだ。

 他にも人が居るというのはわかっていても、今回ここに来たのは遊びでも旅行に来たわけでもない。

 僕も初めての光景に少しだけ浮足立っていた。


「と、若干脅し気味にはありましたが、皆さんもわかっていることだと思います。学生という身分から逸脱せず、時・場所・場合に合った行動を心がけましょう」


 みんな声を揃えて返事をした。


「では、ここからは通路も狭くなっていきますので、二列になってください」

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