突如訪れた悲劇――。
レンジャーラットの強攻撃によって
今すぐにでも駆け寄って安否を確認しないといけないけど、行くにいけない。
「
「なんで!?」
「今は……今はダメだ!」
僕だって、今すぐに回復スキルを使いたい。
でもダメだ。
元々背後にいたメンバーが、機転を利かせて立ちまわってくれているようだ。
でも、こんな状況で回復量の高い回復スキルを使用、もしくは多発すれば、間違いなくこちらに向かってくる。
そんなことになろうものなら、壊滅は必然。
考えろ。
頭を回せ。
明らかな不測の事態……解決策を練り出すんだ。
盾役がいない状況で回復はできない。
回復をしてしまえばヘイトを一点に集めてしまう……。
「きゃああああ!」
「うわああああ!」
「
「っ!!」
それが意味するのは、攻撃を食らってしまった。もしくは、衝撃によって飛ばされた……ということ。
絶望的状況。
解決策……解決策……なにか、なにかっ!
「あっ――そうか」
「えっ」
「
「え!? 稼ぐってどうやって!?」
「少しで良い――お願い」
「
「……ありがとう」
彩夏と幸恵は意を決して、持ち合わせる魔法攻撃スキルを全部放ち始めた。
そのタイミングに合わせて、両手に盾を装備。
そして、拳を思い切り強く握って覚悟を決め――。
「
「よーーーーし、待ってましたーっ!」
「【インスタントヒール】【ファストヒール】――【クイックヒール】【フィウヒール】――」
僕は、回復スキルと連発し始めて、一歩ずつ前に足を進める。
「志信くん、なにをしてるの!? そんなのことしたら!」
「美咲、今のうちに全員を回復させて! 立て直すまで、僕と
返事は聞こえない。いや、もはや今の集中力は極めて高くなっている。
「いくよ!」
「よしきた!」
結月と横並びに走り出して、レンジャーラットの懐へ飛び込んだ。
「せえぇぇぇぇい!」
まずは結月の一撃。
「【スタン】!」
次いで盾で、頭部に対しての攻撃。
「りゃぁぁぁぁあ!」
「【インスタントヒール】【クイックヒール】――【ファストヒール】【フィウヒール】」
結月の連撃――回復の連発。
『じぃぃぃあぁぁぁ!』
レンジャーラットの攻撃を――――体を反らして、寸で回避。
そして続く連撃――――回避。
「結月!」
――次。
「志信!」
――次。
僕と結月は、レンジャーラットから離れることなく攻撃と回避を繰り返す。
そして攻撃とスタン値を貯めて、ダメージを与えながら時間を稼ぐ。
――こうしているうちに、レンジャーラットの動きが鈍くなってきた。
「【スタン】!」
『…………』
決まった。
スタン値が一定に達したようで、レンジャーラットはフラフラとし始めて、頭で円を描いている。
それを見計らい攻撃の手をやめ、状況確認。
「美咲! 状況は!」
「――しーくん。いけるよ」
「僕もいける」
返って来たのは、守結と桐吾の声だった。
「――――よし、みんな! ここから反撃開始だ!!!!」