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15話 装備の強化、そして・・・

「ラッシャイ」


「どうもです」



再び、俺は城下町の行きつけ(ゲームをプレイしてた時は)の鍛冶屋へとやってきた。相変わらず無口で無愛想な店主のジイさんが不機嫌そうに出迎えてくれる。



「この間はどうも。ネックレスありがとうございます」


「フン……ただの気まぐれだ」



プイッとそっぽを向かれてしまう。でも大丈夫。このジイさんはただツンデレなだけだし。



「それで、今日は何の用だ?」


「ああ、はい。ちょっと素材を売りに」


「ほう、どれだ」



俺は店のカウンターへドサリと風呂敷に包まれたそのガーゴイルの素材を置いた。



「べらぼうな量じゃねーか。どうしたんだこりゃあ」


「えっと、この前俺が倒したやつです」


「お前さんが? これだけのガーゴイルを?」



信じられないような、そんな目で見られる。まあそりゃそうだわな。つい先週くらいか、この店に来た時に俺は自分のレベルが5だと明かしてしまっているわけだし。そんなザコがガーゴイルを倒せるわけないと思われるのも当然だ。



「まさか、グスタフっていうのはお前のことか?」


「え、はい。確かに俺はグスタフですけど」


「……フン。なるほど、通りでな」


「はい?」


「ちょっと待ってろ」



店主のジイさんはそう言うと店の奥に引っ込んで、それから白金に輝くカブトやら鎧やらを持ってきて、それらを俺の前にガシャリと置いた。



「もってけ」


「……へっ?」


「プラチナヘルム、プラチナアーマーだ。代金は要らねぇ」


「い、いやいやいや! えっ? どういうことです?」



鍛冶屋のジイさん、突然のデレ期? っていうかこんなシチュエーション、ゲームの中であったっけ? 混乱しているとジイさんが呆れたように鼻を鳴らした。



「うろたえるな、みっともねぇ。それに勘違いするなよ、コイツは陛下へいかからの直々の依頼だ」


「陛下? 陛下って……国王のっ?」


「それ以外なにがあるってんだ。陛下から書状で依頼がきてな、グスタフって野郎の最上級装備を用意してくれってよ。だからこれからちょうどお前さんに届けようとしていたところだったわけさ」


「そ、そうだったんですか」


「そうさ。ほれ、着て見せろ」



ジイさんに勧められるがままに俺は今の装備を脱ぎ、そして新しい装備を身に着ける。……軽い。まるで装備の重さを感じないのに、しかし体はしっかりと守られている感覚。これが最上級装備なのか。



「フン、どうやらサイズはちょうどいいみたいだな」


「はい、ピッタリです」


「何があったかは知らんが、陛下がこんな風に直々に俺に依頼してくることなんてそうそう無い。どうやらお前さんは相当に期待されているらしい。しっかりと働いて陛下に報いるんだな」


「は、はい」



期待、されているのか? この前の玉座の間でのやり取りで終盤、やってしまった感があったのに意外だ。いや、もしかしたら親衛隊という任についた俺への形式的な贈り物ってだけかもしれないし……気は抜かずにおこう。



「それとガーゴイルの素材だが、見た限り14か15体分はありそうだ。1体あたりだいたい700~900Gが相場ってところだが……まあサービスだ。15,000Gで買い取ってやる」


「えっ、いいんですかっ? 良心的すぎませんっ?」


「フンっ、良心的とか言うんじゃねーよ! あとはついでにコイツも持っていけ」



ジイさんはしゃがみ込んでカウンターの裏側に閉まってあったらしいそれをガシャリ、俺の前に置いた。



「この店で扱う中じゃ最上級の業物、【ポセイドン・ランス】。水属性魔術が付与されていて、すべての攻撃・スキルに水属性値が上乗せされる代物だ。その装備に今までの槍じゃ見劣りがするってもんだ」


「えっ! こ、これはちなみにおいくらで……」


「むろん、無料だ」


「えぇっ? どうしたんですかっ⁉ まさか本当にデレ期がっ⁉」


「んなワケあるかこんちくしょうめがっ!」



ジイさんにマジギレのごとく怒鳴られた。いやいや、でも俺知ってるよ? このレア槍は物語後半に25,000Gで買える高級なヤツだってこと。



……ちなみに衛兵である俺の1ヶ月の給与はだいたい5,000Gほど。

つまり、俺の月収の5倍の値段がする槍だぞ? そんなものポンとは渡せないでしょ、普通。



「フンっ、これは投資みたいなもんだ」


「え、投資……?」


「そうだ。陛下が期待で買っているお前をワシも買う、それだけのことだ。陛下がお認めになったお前さんのことだ、これからきっと多くのレアモンスターを狩ることになるだろうよ。その時に得た素材はウチに売りに来い。他よりも高く買ってやる」


「ああ、なるほど。つまり俺を通じてたくさんのレア素材をゲットしたいと」


「これもまた商売の内ってことよ」



ジイさんが不敵に笑って見せた。そうか、まあ純粋な好意だけじゃなくて俺への投資って形で譲ってくれるなら貰っておこう。



「それじゃあ、ありがとうございます」



尻の穴を心配する必要もなさそうだし、と俺は槍を受け取った。




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~装備~

『ポセイドン・ランス』←【NEW】

→水属性+

『プラチナヘルム』←【NEW】

→素早さ+

『プラチナアーマー』←【NEW】

→素早さ+

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所持金 ←【UPDATE】

17,000G

→ガーゴイルの素材売却 +15,000G

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さて、それから俺は鍛冶屋を後にして、ピカピカの白金プラチナよろいのまま城下町を歩く。



──ヒソヒソ、ざわざわ。



人々の視線が俺に集まってくる。うわぁ、めっちゃムズムズする。なんというか、これは新しい服装で街を歩いてる時みたいな感覚だ。理由もなく人の視線が気になったりして、「え、俺これ着こなし方とか間違ってるのかな? 他人から見たら何かおかしいのかな?」なんてネガティブになるやつ。あるある体験だよな……? え、俺だけ?


まあ、大丈夫さ。ただ鎧の色がちょっと珍しいだけで、衛兵なら誰しも鎧は着てるわけだし、全然変じゃない、大丈夫。そう自分に言い聞かせながら王城への帰り道を急ぐ。



……ホントは城下町のお店とかに寄って、買い食いの1つでもしたいところだったけどな。こんな注目されてる中でそんな度胸は俺にはないぜ! 


なんて、まあそうやって気もそぞろだったのが良くなかった。


バッ! と小さな影が後ろから俺に体当たりしたかと思うと素早く駆け抜けていった。



「うわっ⁉ な、なんだったんだ、今の……」



その影を慌てて確認しようと思ったが、しかしすでに人混みに隠れてしまったらしい。



「ハッハッハッ、やられちまったねぇ衛兵さん」


「へっ?」


「ここよ、ここ」



屋台のオッサンがポンポンと腰辺りを叩くジェスチャーをする。腰? なんだ、俺なんか腰にゴミでも付いてるか……?



「……ふぁっ⁉」



腰にくくり付けていた袋──金貨や銀貨を入れていた袋がこつぜんと消えていた。




====================

所持金 ←【UPDATE】

0G

→Σ(゜Д゜;≡;゜д゜)エッ⁉︎

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……まさか、スリ? ヒヤッと。俺の背筋が凍るのだった。

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