四方八方から同時にガーゴイルたちが襲い掛かってくる。どちらか一方を倒しても、もう一方からの攻撃を必ず受けてしまう、俺にとっては最悪な陣形だ。
「うぉぉぉおっ!」
……だからといって、死んでたまるかっ!
俺は近くで力尽きていた衛兵たちの槍を拾い、スキル『とうてき』で迫るガーゴイルたちへと投げつけた。そして投げつけたそれ以外の方向から来るガーゴイルたちへと『みだれ突き』。
〔クソがッ! 死にかけのクセに!〕
〔魔王様のために、テメェは大人しく殺されてりゃいいんだよッ!〕
「うるせぇ! お前らの都合なんか知ったことか! 俺は死にたくないんだッ!」
あがいてあがいて、俺は泥臭く戦った。槍を振り回して、ガーゴイルたちを蹴り飛ばして、攻撃をかわすためにみっともなく床を転げ回った。
「うらぁっ!」
〔グギャァッ!〕
隙を見てまた1体、ガーゴイルを貫き殺す。
──『レベルアップ。Lv21→22。スキルを獲得。『トライデント』→一度に広範囲に対しての突きを繰り出す』
新スキルを使う。
『トライデント』。
それは突き出した槍の先端が3つに広く枝分かれし、3体のガーゴイルを同時に突き刺した。
──『『槍の心得』のスキルレベル上昇。LvMAX。『槍の心得』から『槍の達人』にスキルが変化。『槍の達人』→槍を極めし者。槍を使用しての攻撃力が大きく上昇する』
飛んでくるガーゴイルを叩き落とし、横から来たガーゴイルをさらにその上に叩き落とす。そしてまとめて『みだれ突き』。どうやら威力が上がったらしい。まとめて2体を葬り去る。
──『『叩き落とし』のスキルレベル上昇。LvMAX。『叩き落とし』から『槍の結界』にスキルが変化。『槍の結界』→相手の攻撃を弾き返し、反撃する。この反撃の際、自分は相手の反撃を受けない』
左右からガーゴイルが挟み撃ちしてくる。『槍の結界』で攻撃を弾く。そしてすぐさま『しっぷう突き』で反撃に転じる。1体を突き殺した際、もう1体が攻撃を仕掛けてくるがそれは俺に当たらず空を切った。
──『レベルアップ。Lv22→23。『しっぷう突き』のスキルレベル上昇。LvMAX。『しっぷう突き』から『ボルテック』にスキルが変化。『ボルテック』→雷属性の目にも止まらぬ速さの突きを繰り出す。この攻撃は相手の防御を貫通する』
〔この衛兵、できるぞっ! レベル20以上はこっちに集まれ! タイミングを合わせろッ! 同時攻撃はさすがにかわせないはずだッ!〕
「はぁっ、はぁっ……うらぁぁぁッ!」
スキル『みだれ突き』。ガーゴイルたちを怯ませる。
「グゥッ!」
それでも何体かの攻撃はまともに体に受けてしまい、俺の体から血しぶきが上がる。だが、急所さえ守れていればそんなもの知ったことか!
「オラ、ボルテック、ボルテック、ボルテックゥッ!」
〔ギャワッ‼〕
さきほどのみだれ突きで地面に落ちたガーゴイルたちの頭を潰すように、新スキル『ボルテック』でトドメを差していく。
──『『みだれ突き』のスキルレベル上昇。LvMAX。『みだれ突き』から『
Uターンして再度突撃してくるガーゴイルたち。積み重なるダメージが俺の膝を震わせる……ダメだ、まだ倒れるわけにはいかない! 震える膝に力を入れて踏ん張った。
「……『五月雨突き』ッ!」
〔クソッ!〕
その攻撃で倒せたのは、2体だけ。もう1体にはギリギリ当たらない。
……コイツ、他のヤツらより、明らかにレベルが高いな……?
〔死に損ないの衛兵ふぜいがッ! これで終わりだッ!〕
「……やな、こった……」
俺は重力に身を任せ、倒れ込むようにしてガーゴイルの攻撃をかわした。
〔なっ⁉ コイツ……どこにそんな力が……⁉〕
……どこだろうね? 俺はただ、生きたいと思って動いているだけだ。あと深すぎる傷のせいだろうか、今は景色が全部がスローモーションに見える。
「あばよ」
スキル、『ボルテック』がそのガーゴイルの頭蓋を貫いた。
──『レベルアップ。Lv23→24』
……よし、次はどいつだ……? あとモンスターは何体残っている……?
「──グスタフっ! グスタフっ!」
王の声が聞こえる。まさか、また姫がガーゴイルに捕まってしまったのか……? なら、助けないと……。
「グスタフっ、もう、モンスターたちはおらぬっ! ぜんぶ、ぜんぶお主が倒したのだっ!」
「……え」
倒した? ぜんぶ? 確か10体以上いたはずだったが、俺はぜんぶ倒せたのか……?
──ドシャリ。
座ろうと思ったわけでもないのに、体が勝手に地面に倒れ込む。……立たないと……なんでだ? 体が言うことを聞かないぞ?
「ひどいケガだっ! 誰かっ! 誰か救護の者を呼べっ! 回復魔法の術士を! グスタフは英雄だ! レイアを、この国の姫を守った英雄を決して死なせてはならぬっ!」
王の声が遠くに聞こえる。目の前がだんだん暗く……ああ、俺、死ぬのか……?
「グスタフ様っ、グスタフ様っ! 死んではなりません。意識を強く持って!」
ああ、レイア姫の声がする。それになんだろう……なんだかあったかい。なにかが俺の手のひらを優しく包み、そして持ち上げられた頭が柔らかい枕の上に置かれた。ああ、心地よい。それにすごく良いニオイもする。
「グスタフ様っ! グスタフ様っ!」
……幻覚かな、すぐ目の前にレイア姫の顔が見える気がする。それにしてももうダメだ、眠過ぎる……。俺、昨日は徹夜だったからな……。
そして、俺の意識は真っ暗闇に溶けていった。
──ちなみに俺がこのとき、そしてこれ以降も知る由はないことなのだが……これはあくまで確定の死にイベント。
ガーゴイルのレベルも当然、通常より高く設定されており……その平均は19レベル。最後の個体に至っては24レベルあったらしい。よく死ななかったもんだね?
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グスタフ Lv24 ←【レベルUP】
次のレベルまでの必要経験値 153
スキル
『槍の達人』 Lv2 ←【レベルUP】
→槍を極めし者。槍を使用しての攻撃力が大きく上昇する
『ボルテック』 Lv2 ←【レベルUP】
→雷属性の目にも止まらぬ速さの突きを繰り出す。この攻撃は相手の防御を貫通する
『槍の結界』 Lv2 ←【レベルUP】
→相手の攻撃を弾き返し、反撃する。この反撃の際、自分は相手の反撃を受けない
『五月雨突き』 Lv1 ←【レベルUP】
→ひと息に水属性の10連突きを繰り出す。この攻撃を受けた相手の防御力が少し下がる
『とうてき』 Lv9 ←【レベルUP】
→一直線に槍を投げて相手を貫く強力な攻撃をする
『溜め突き』 Lv5 ←【レベルUP】
→力をためて超強力な突きを繰り出す
『トライデント』 Lv3 ←【NEW】
→3又に分かれる広範囲な突きを繰り出す
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