目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第12話

「それで、だが……」

 オレは、クロエのパーティメンバーをぐるりと見渡す。クロエ、ジゼル、エレオノール、イザベル、リディ。この5人が冒険者パーティ『五花の夢』のメンバーであり、今後オレと活動を共にするメンバーになる。

 クロエはオレと目が合うと「ふんっ!」と怒って顔を逸らすし、リディはイザベルの後ろに隠れたままだ。正直、こんなことで大丈夫かと不安になる。

 クロエからは、全員オレがパーティに加入することを認めてくれたと聞いているが……改めて確認をするべきだろう。

「本当にオレがパーティに入ってもいいのか? オレは7人目だろうと構わねぇが……」

 オレはギフトの成長もしてるし、ある程度の貯えもある。無報酬でもいい。オレの目的は、あくまでもクロエを護ることだ。

「7人目なんてダメよ! アベル叔父さんがあたしたちのパーティに入ってくれるって言ったんじゃない。丁度1人分空いてるんだから、素直に入ればいいじゃない!」

 オレの言葉に、クロエが猛反発する。どうしてもオレをパーティに入れたいらしい。だが、クロエにとって、オレは血縁もある信用できる人物かもしれないが、他のメンバーにとっては、突然やってきた赤の他人だ。信用もクソも無いだろう。

「クロエはこう言ってるが、他の奴らはどうだ? 遠慮しないで言ってくれ」

「そうですわねぇ」

 オレの言葉に、エレオノールがおっとりと頬に手を当てて首をかしげる。そんな動作もよく似合う上品さがエレオノールにはあった。

「イザベル、貴女の考えを教えて下さい」

 エレオノールに話を向けられたイザベルが口を開く。

「そうね。アベルの言うように、アベルをパーティに入れずに7人目と扱うというのも十分魅力的……」

「ちょっとイザベル! なんてこと言うのよ!」

 イザベルの話の途中で、クロエが噛み付くようにイザベルの言葉を遮った。オレをパーティに入れたいクロエには、受け入れがたい話だったようだ。まぁ、自分の叔父がただの荷物持ちみたいな扱いをされれば怒って当然なのかもしれない。

 クロエの気持ちは嬉しいが、今はイザベルの話を聞くべきだろう。オレはただの荷物持ちでもべつにいいしな。クロエの近くに居て、護れるならどんな条件でも呑むつもりだ。

「クロエ、大事な話なんだ。お前の気持ちは嬉しいが、自分の気に入らない話でもちゃんと聞け」「話はまだ途中よ。ちゃんと最後まで聞いてから反論なさい」

「2人で言わなくてもいいじゃない……」

 オレとイザベルから同時に窘められ、クロエはすねたように頬を膨らませた。小さい頃から変わらないな。本来なら叱るべきことだが、そんなクロエの姿がかわいらしく思えて、オレはついつい目を細めてしまった。やれやれ、オレも相当な親バカならぬ叔父バカらしい。

「続きいいかしら? パーティメンバーにもう1人加えることもできるし、たしかにアベルを7人目として扱うのも大きなメリットがあるわ」

 オレはイザベルの言葉に頷いて同意を示す。オレを7人目として扱う場合、6人が上限であるパーティの枠が1つ余る。その枠にもう1人パーティメンバーを加えるというのは、かなり魅力的なはずだ。

 オレはポーターと呼ばれる荷物持ち。正直、低レベルダンジョンならまだしも、高レベルダンジョンの戦闘に役立てるほどの戦力は無い。できるのは、仲間の荷物を持つことぐらいだ。そして、それはオレをパーティに入れようが、7人目として扱おうが変わらない。

 ならば、戦力になりそうな戦闘系のギフト持ちをパーティに加えた方がいいだろう。

 ギフトってのは、不可能を可能にするほどの強力な力だ。戦闘系のギフトを持っているか否かで、戦闘力はかなり違ってくる。

「でも、私はそれらメリットよりもデメリットの方がはるかに大きいと考えるわ」

「デメリット?」

 そんなものがあるのか?

 オレはイザベルの言葉に納得がいかず、疑問の声を上げた。周りを見ると、イザベルの言うデメリットが思い浮かばないのか、ジゼルもエレオノールも疑問を覚えたような難しい顔をしている。クロエは話の流れが変わったことに嬉しそうな顔を浮かべていた。ちなみに、リディはまだイザベルの後ろに隠れたままだ。

「とても大きなデメリットよ。それこそ、私たちの冒険者生命を絶たれかねない……ね」

 そんな大きな問題なら、気付きそうなものだが……まったく思い浮かばなかった。

「それはどういうことでしょう?」

 エレオノールの問いに、イザベルが頷いて口を開く。その虹色の瞳は、真っすぐにオレを見ていた。

「アベル、貴方はたぶん1つ勘違いをしているわ」

「あん?」

 オレが勘違い? どういうことだ?

「貴方の名声は、貴方が思っている以上に高いということよ」

「……は?」

 オレは、イザベルの言葉に、再度疑問の声を上げる。オレの名声だと? おかしなこと言いやがる。

「自分で言うのもアレだが、オレは3度もパーティを追放されるような【収納】しか能のない奴だぜ? オレに名声なんてあるわけがねぇ」

 だが、イザベルは緩く首を横に振ってオレの言葉を否定する。

「それは大きな間違いよ。貴方の所属していた冒険者パーティは、どれもレベル6以上のダンジョンを攻略していることがその証明。冒険者の大多数がレベル3以下でくすぶっているというのに、貴方が所属したパーティは、全てレベル6まで上がったわ。貴方には人を導く才能があるのよ」

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?