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第6話

「えっ!? アベル叔父さん、あたしのパーティに入ってくれるの!?」

 先程までの恥ずかしがるような、どこかオレに対して距離を取るような態度はどこへと行ったのか、クロエがテーブルに身を乗り出して、こちらをキラキラとした黒い瞳で見ていた。その予想外の勢いに押されて、オレはのけぞるように身を引いてしまう。

 どうしたってんだクロエは? なんだか急に活き活きとしやがった。

「あ、あぁ。ちょっとパーティメンバーと折り合いがつかなくなってな。今のオレはどこにも所属していない。それでもし、クロエがよかったらでいいんだが……オレをパーティに入れてくれないか? 7人目でもいいからよ」

 冒険者パーティの人数は、6人までと相場が決まっている。それが、神の課したルールだからだ。

 ダンジョンというのは、神が創った魂の精錬所って説が一般的だ。本当かどうかは知らないが、主に教会の連中がそう説いて回っている。魂がどうのって話はよく分からないが、ダンジョンに潜ると恩恵があるのは確かだ。

 その恩恵というのが、ギフトの成長である。ダンジョンのモンスターを倒すと、ギフトが成長するのだ。

 勿論、普段の生活の中でもギフトは成長していく。しかし、ダンジョンのモンスターを倒すことに比べたら、その成長速度は遅々たるものだ。

 なぜ、ダンジョンのモンスターを倒すとギフトの成長が促進されるのかは分かっていない。だが、先人たちの試行錯誤の結果、分かってきたこともある。その一つが、一度にギフトの成長の恩恵に与れるのは、6人までいうことだ。

 ダンジョンの入り口には、必ず台座に鎮座した白い巨大な真珠のようなものがある。そこでダンジョンに挑戦するパーティメンバーの登録ができるのだが、このパーティの上限人数がまず6人だ。

 とはいえ、べつにダンジョン自体に上限人数は無いので、7人目以降もパーティと一緒にダンジョンに潜ることはできる。しかし、パーティメンバーがモンスターを倒しても、ギフトの成長の促進という恩恵があるのはパーティとして登録した6人までで、7人目以降はなんの恩恵も無い。

 パーティメンバーの誰よりも戦闘で活躍したとしても、パーティメンバーの中になにもしていない奴がいたとしても、7人目以降は恩恵に与れない。

 ちょっと納得いかないものを感じるが、それがダンジョンのルールなのだから仕方がない。

 そのため、多くの冒険者パーティは、6人編成だ。たまに5人のところがあるくらいか。

 いきなりパーティメンバーを追放するなんて、普通じゃ考えられない暴挙だが、オレをパーティから追放したクロヴィスたちの考えも分からなくもない。6人という限られた人数で、よりパーティの質を高めるために、不要になったオレを追放して、新たな戦力をパーティメンバーに加えようというのだろう。

 まぁ、いきなりこれまで苦楽を共にしてきたパーティメンバーの追放する冒険者パーティなんて、怖くて誰も命を預けられないだろうがな。あのバカどもは、常識ってものを分かっちゃいない。

「大丈夫よ! ウチ、5人パーティだから!」

 クロエが更にグイッと笑顔で顔を寄せてくる。その眩しい笑顔に、オレの暗くなりかけてた心に、まるで一条の光が射した気分だ。

「そりゃちょうどいいが……なんで5人なんだ? いいメンバーが見つからなかったか?」

「えっ? あ、うん。ま、まぁそんなとこ……かな。それより! ほんとにウチに入ってくれるの? 言っちゃあれだけど、あたしたちまだ初心者よ? アベル叔父さんならもっといいところがあったんじゃないの?」

 そう言われて、チラリとシヤにクランに誘われていたことを思い出したが、オレはクロエに首を横に振ってみせる。

「いいんだよ。オレのことなんて気にするな。使えるものは便利に使っておけって」

 オレは、べつに稼ぎやギフトの成長が目当てで冒険するわけじゃない。クロエを護るために冒険するのだ。他のことなんて二の次三の次である。

「それよりも、クロエはいいのか? 叔父さんがパーティメンバーになっ……」

「いいわよ! いいに決まってるじゃないっ!」

 クロエがオレの言葉を遮って、噛み付くような勢いで答える。クロエはオレがパーティに入ることを認めてくれるようだ。ありがたい。しかし、一番の難関がまだ残っている。

「クロエはよくても、他のパーティメンバーはどうだ? こんなおっさんがパーティに入るのなんて嫌じゃないか?」

「大丈夫よ! きっと!」

 クロエは自信満々に答えるが、オレには不安しかない。クロエのパーティメンバーを遠目から見たことがあるが、皆成人直後ぐらいの若い女だった。オレは若い女の子たちに歓迎されるような、スマートなかっこいい男ではない。そうじゃなくても、若い女の子の中におっさん一人だ。明らかに浮いている。異性がパーティメンバーになるのを嫌がる子も居るだろう。正直、不安しかない。

「そうは言うがな……やっぱり直接メンバーに話して了解を取った方がいいと思うぞ?」

「そうね。分かったわ!」

 クロエはテーブルの上から身を起こすと、スカートを翻して玄関へと走っていく。思いついたらすぐ行動のクロエらしい決断の早さだ。さっそくメンバーに確認に行くつもりだろう。

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