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部下と遊びはめんどくさい。本気の恋ならなおのこと。
七瀬京
BL現代BL
2024年07月30日
公開日
28,399文字
連載中
気軽な遊びのはずだったのに・・・

マッチングで相手を探して気軽な関係を楽しんでいた瀬守達也は、かつてマッチングした相手、水野凪が新入社員で直属の部下になったことに動揺していた。
凪を避けたい達也。
達也は、過去に恋愛で痛手を負った経験から、誰かと付き合うと言うことに消極的になっていた。
けれど、凪は構わずに達也を追いかけてくる・・。

執着系年下攻め×過去にワケアリ年上受け。

第1話 後輩男子はめんどくさい

 社内で、恋愛関係になるのは、正直、面倒だと、瀬守せもり達也たつやは思う。


 本人達は、人目を忍んでやりとりをしているつもりで、しかもそのスリルを楽しんでいるのだろうが、周りから見たらバレバレだし、その、隠れて何かをやっている感が痛々しい。その上、周りの人間は、知らない振りをしなければならないので、正直な所、迷惑でしかない。


「笠原さんと、弓月さん、社内恋愛ですかぁ」


 社内恋愛を見事に成就させた二人から連名でメールが届いたのは、先ほどだった。それを見ながら、達也の隣で、後輩の朝比奈が、小さな溜息と共に呟いたのが聞こえた。


「弓月ちゃん、同期なんですよ。はあ、また、ご祝儀貧乏に……瀬守さん。本当に、迷惑ですよね。社内恋愛って」


 同意を求めるように、朝比奈は問いかけてくる。


「そうだな、俺も、社内恋愛は面倒だと思うよ、周りも気にするし」


「そうそう! 結婚式までの間、面倒じゃないですか、微妙だし……」


 朝比奈の声が高くなる。そろそろ雑談を切り上げようかと思ったとき、


「いいじゃないですか」


 と瀬守の背後から、声が聞こえてきた。今年入社の新人で、達也の部下の、水野みずのなぎだ。


 ふんわりとした柔らかそうな髪、整った顔立ち。いつも柔和な態度でいる凪は、常に人目を引いている。


「水野……」


「あっ。凪さんは、社内恋愛肯定派なんですね。ちょっと、意外。普通に、マッチングとかで相手探してそうなのに」


 朝比奈が、探るような目で見ている。


 実情を知る達也は、目を背けて、パソコンの画面を見やる。残念なことに新着のメールは入っていない。入っていれば、仕事に戻れるところだった。


「ひどいなあ、それじゃ遊んでる人みたいじゃないですか。俺、結構、一途なタイプですよ。ねえ、瀬守さん」


 凪は意味ありげな視線で達也を見た。その余裕ぶった表情が腹立たしくなって、「そろそろ、雑談は辞めて仕事に戻ろう」と切り上げる。朝比奈は、ハッと我に返って、


「すみませんっ」


 と小さく謝ってから、仕事に戻る。凪も、「俺も、戻ります」と言って自席に戻る。その通り過ぎざまに、達也に「あ、これ書類です。確認お願いします」と渡してから去って行った。達也が書類に視線を落とすと、凪が置いていった書類の端に、付箋紙が付いている。


『今夜、会えませんか』


 と一言。そして、場所と時間が指定されている。乱暴に付箋を外して、去って行った凪を睨み付ける。振り返った凪は、へらっと笑った。


 水野凪。


 達也よりも六歳も年下の、直属の部下。チームは増強が必要だったし、インターンの頃から、仕事ぶりを買われていた凪が、チームに入ってくれたことには、不満はない。仕事上は、大いに役立っている。


 しかし―――……。


(こっちは問題大ありなんだよ)


 と、達也は溜息を吐いて、私物のスマートフォンを取りだした。マッチングアプリからの通知が来ている。ゲイ専用のマッチングアプリだ。ここで、気軽に遊び相手を探していたのだ。


 思い起こせば半年前。


 このアプリでマッチングして会ったのが、凪だった……。

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