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9話:水の四大精霊 ウンディーネ-Ⅰ


「初めまして。四大精霊・ウンディーネの、名をアリアと申します。以後、お見知りおきを――」


ミシェルとはまた違った雰囲気の少女――アリアは、俺の方を見て優しく微笑んだ。


スカイブルーの髪は緩やかにウェーブがかかっていて、岩群青色をした瞳は深海を連想させるように美しい。

ひざ丈まであるドレスとその佇まいからは、裕福層のご令嬢にも見える。


「アリア、お待ちしておりました。征十郎さんを紹介するのでこちらへ来てください」


「はい」


オリビアが言うと、アリアがスカートのヒダを揺らしながら歩きはじめた。

静まり返った神殿の中に、アリアが歩くヒール音が響き渡る。


(あれが四大精霊のウンディーネ…ミシェルとはだいぶ雰囲気が違うし、一見強そうには見えないが、さっきのあの水の量…力は確かなようだ)


まじまじとアリアを見ていると、視線を感じたのかアリアが振り返る。

そして俺の隣にいたミシェルを見つけるや否や、一気に顔が綻び、俺の前を通り過ぎてミシェルに抱き着いた。


「ミシェル!」


「アリア!元気だったか?」


ミシェルの方も、今まで見たこともないような優しい表情で微笑んでいた。

属性は真逆のタイプではあるが、もしかすると2人は仲がいいのかもしれない。


「最近忙しくて中々会えなかったから寂しかったわ」


「私もだ。お互いの時間が空いたら、またお茶でもしよう」


「えぇ!その時はミシェルの好きなイチゴタルトを持っていくわね」


「楽しみにしているよ」


まるで恋人同士のような会話を繰り広げる2人に、水を差すようにオリビアが声をかける。


「アリア。ミシェルとの会話はあとにしてくれるかしら」


笑顔で言うオリビアの目は、心なしか笑っていないように感じる。


「あっ、申し訳ございません!オリビア様」

ハッとしたアリアが慌てた様にミシェルから離れる。



そして…


「キャッ!」


俺の目の前で盛大に転んだ。


「いたた…私ったらお恥ずかしいところを…ごめんなさい…」


「……」


(…なんだか思った印象と少し違う気がするのは俺だけか…?)


一先ず挨拶がてら、握手の意味合いも込めて手を差し出す。


「柊征十郎だ」


「アリアと申します。よろしくお願いいたします、征十郎さん」


笑顔で握り返してきたアリアの手は、ひんやりと水のように冷たかった。

属性の違いで、体温にも影響が出るのかと不思議に思いつつ、俺は静かにアリアの華奢きゃしゃな手を離す。


そして、ようやくメンバーが揃ったところで、オリビアが切り出した。



「今回の任務の期日は予備期間も含め、1週間いただいています。征十郎さんは初の魔物討伐となりますから、ご無理をされないようにしてください。ミシェルとアリアは征十郎さんをしっかりと守りつつ、任務を遂行させるように」



こうして魔物討伐任務のため、俺達はツキドゥーマ森林へ向かった。




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