「初めまして。四大精霊・ウンディーネの、名をアリアと申します。以後、お見知りおきを――」
ミシェルとはまた違った雰囲気の少女――アリアは、俺の方を見て優しく微笑んだ。
スカイブルーの髪は緩やかにウェーブがかかっていて、岩群青色をした瞳は深海を連想させるように美しい。
ひざ丈まであるドレスとその佇まいからは、裕福層のご令嬢にも見える。
「アリア、お待ちしておりました。征十郎さんを紹介するのでこちらへ来てください」
「はい」
オリビアが言うと、アリアがスカートのヒダを揺らしながら歩きはじめた。
静まり返った神殿の中に、アリアが歩くヒール音が響き渡る。
(あれが四大精霊のウンディーネ…ミシェルとはだいぶ雰囲気が違うし、一見強そうには見えないが、さっきのあの水の量…力は確かなようだ)
まじまじとアリアを見ていると、視線を感じたのかアリアが振り返る。
そして俺の隣にいたミシェルを見つけるや否や、一気に顔が綻び、俺の前を通り過ぎてミシェルに抱き着いた。
「ミシェル!」
「アリア!元気だったか?」
ミシェルの方も、今まで見たこともないような優しい表情で微笑んでいた。
属性は真逆のタイプではあるが、もしかすると2人は仲がいいのかもしれない。
「最近忙しくて中々会えなかったから寂しかったわ」
「私もだ。お互いの時間が空いたら、またお茶でもしよう」
「えぇ!その時はミシェルの好きなイチゴタルトを持っていくわね」
「楽しみにしているよ」
まるで恋人同士のような会話を繰り広げる2人に、水を差すようにオリビアが声をかける。
「アリア。ミシェルとの会話はあとにしてくれるかしら」
笑顔で言うオリビアの目は、心なしか笑っていないように感じる。
「あっ、申し訳ございません!オリビア様」
ハッとしたアリアが慌てた様にミシェルから離れる。
そして…
「キャッ!」
俺の目の前で盛大に転んだ。
「いたた…私ったらお恥ずかしいところを…ごめんなさい…」
「……」
(…なんだか思った印象と少し違う気がするのは俺だけか…?)
一先ず挨拶がてら、握手の意味合いも込めて手を差し出す。
「柊征十郎だ」
「アリアと申します。よろしくお願いいたします、征十郎さん」
笑顔で握り返してきたアリアの手は、ひんやりと水のように冷たかった。
属性の違いで、体温にも影響が出るのかと不思議に思いつつ、俺は静かにアリアの
そして、ようやくメンバーが揃ったところで、オリビアが切り出した。
「今回の任務の期日は予備期間も含め、1週間いただいています。征十郎さんは初の魔物討伐となりますから、ご無理をされないようにしてください。ミシェルとアリアは征十郎さんをしっかりと守りつつ、任務を遂行させるように」
こうして魔物討伐任務のため、俺達はツキドゥーマ森林へ向かった。