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8話:相性差最悪の世話係-Ⅱ



その後、オリビアに魔物討伐の申請をするため、ミシェルとともに神殿へ向かっていた。

オリビアの神殿に向かうまで、ミシェルはずっと「無理だ」と止めてきてはいたが、そんなものはやってみないと分からない。

一度だけでもあの悪魔に拳が当たったんだ。魔物と戦える可能性はある。


神殿へ着いて、開口一番に話を切り出した。


「オリビア。魔物討伐の仕事をしたいから、申請をさせてくれ」


「…そうですか…ふふっ、分かりました」


一瞬だけ驚いた様子のオリビアだったが、すぐに満面の笑顔でOKしてくれた。


さすがオリビア。

頭の固いミシェルとは違って、ちゃんと俺の事を分かってくれている。


一方で、申請が通ると思っていなかった魔物討伐反対派のミシェルは猛抗議をする。


「オリビア様!いくら人間とは言え征十郎に甘すぎです!確かに体力はそれなりにある方だと思いますが、私達の体力には及びません!それに人間には天力てんりょくがないのですよ!?魔物に魔力を使われた時はどうするおつもりですか?!」


「そのために貴女がいるのではないですか」


ミシェルに向かってオリビアが笑顔を向けた。


「え…ま、まさか…」


「征十郎さんのお世話係であるミシェルがいれば、なんの問題もないでしょう?」


「っ……」


キラキラした笑顔が眩しい。

目の錯覚か、オリビアの周囲に花と宝石が散らばっているようだ。

なるほど…こういう人が異性を虜にするのか。


ミシェルとは言うと、笑顔という最強の圧力をかけてくるオリビアになにも言い返せずにいるようだった。


「ちょうど先程、魔物討伐の依頼が入った所だったんです。征十郎さん、試しに行ってみますか?」


「行けるなら行きたい」


「分かりました」


オリビアは笑顔で返事をすると、力を使い、俺やミシェルが見られるよう空中に映像を映し出した。


「依頼者は人魚族のノヴァさん。街で奥さんのリールさんと宝石店を経営している方です。ノヴァさんは、ツキドゥーマ森林内にあるみずうみを約4か所所持していいて、体内で価値の高い宝石を生み出す鳳怪魚ほうかいぎょという怪魚かいぎょを養殖しています」


依頼者の姿と名前、店の場所や販売している時の光景、怪魚の姿がスライドショーの様に映し出される。


「しかし、数日前から所持している湖が、何者かによって荒らされるようになりました。現在は養殖されていた鳳怪魚の半分が食い荒らされており、水は汚れ、店は経営危機に陥っている状況です」


画面が切り替わり、荒らされてぐちゃぐちゃになった怪魚の死体と、湖の様子が映し出される。


「酷い…っ」

ミシェルが顔を歪めながら言った。


「誰がこんなことをしたのかは分かっていないのか?」


「荒らされた状況と痕跡こんせきを見る限り、犯人は恐らく鳳怪魚ほうかいぎょを好物とする魔物“ミオールキャット”でしょう」


再び画面が切り替わり、3メートルほどの大きい口の裂けたヒョウのような魔物が映し出される。


「ミオールキャットか…前に全滅させたと思っていたが、

まだ生き残っていたのか…」


ミシェルが呟いたと同時に、映像が映し出されていたスクリーンのようなものが光の粒子りゅうしを散らしながら消えた。


「ミオールキャットの危険度はSランク。属性は水属性です」


「水属性ということは、火属性のミシェルとはあまり相性がよくないな」


「普通に考えればそうだが、私の場合はあまり関係のないことだ」


「ですが、全滅させたはずのミオールキャットの出現です。なにがあるか分かりません。それに今回は、所有している湖の水質を改善し元の状態に戻してほしいという要望もありますので、強力な助っ人を用意させていただきました」


オリビアがそういった瞬間、天井から水滴が1滴滴り落ちる。




「どうやら着いたようですね」


「え…」


すると、滴り落ちた水滴から大量の水が溢れ出し、空中で渦を巻くと水の中から水色の髪をした女が現れた。


「!!」


(誰だ…?)


「征十郎さん、紹介します。彼女は四大精霊の1人ウンディーネです」



「初めまして。四大精霊・ウンディーネの、名をアリアと申します。以後、お見知りおきを――」




少女は、スカートのすそを両手で掴むとふんわりと微笑んだ。



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