秋になってくると、キノコも増えてくる。
実はキノコ自体は春や夏にも結構生えているんだけど、美味しい有名なキノコは秋が多いので、秋の味覚みたいに言われるんだと思う。
まあ異世界では知らないけどね。
「というわけで」
「でたでた『というわけで』。ちゃちゃーん。何、何、今日は何するの?」
「えっとですね。山でキノコが無いか調査アンド採取です」
「それってつまり」
「そう、キノコ狩りで~す」
「「わー、ぱふぱふ」」
またカエラばあちゃんを連れて、というか連れられて山に入っていく。
「どう? メアリア、辛くなったら言うのよ?」
「はい、ドロシー。でも大丈夫ですよ」
「そう、それならいいけど」
ふむふむ。ドロシーもメアリアのこと気にしてくれてるな。
まあ大丈夫っていうし、大丈夫だろう。
恒例、山登りだ。籠を背負って、えっちらおっちら登っていく。
今日はいつもより、山の深いところまで来ている。
山を登って、ちょっと下って沢に降りてきた。
「あれこれ『ワサビ』じゃね」
「なになに? ブラン?」
「カエラ、とっても辛い葉っぱだよね、これ」
「おお、そうじゃなワサビじゃな」
ワサビ発見。日本のものとそっくりだ。ハート形の葉っぱをしている。
サトイモもハート形だけどツルツルでワサビの葉っぱはざらざらした見た目をしている。
「これも取っていこうよ」
「ええで」
「やった」
俺は周りを軽くほじくり返してワサビゲット。
五個ぐらい取っておく。
「いひひ、ワサビ取れたぞー」
「ブランがニヤついてて気持ち悪い」
いいじゃん、ニヤついてても。だって心の友、ワサビだぜ。醤油が無いから応用があんまり思いつかないとはいえ、辛みだって重要なアクセントだ。
さらに山を登っていくと、あった。あるある。キノコちゃん。
土や枯れ葉とは色が違うからすぐわかる、白と茶色のキノコが生えていた。
「ふむ、これはマイタケだな」
木の根元のところに、大型の株ができていた。マイタケは群生タイプだ。
「これは美味しいん、ですか?」
「すごく美味しいよ」
メアリアが質問してドロシーが答える。
「大当たりじゃな。マイタケはうまいぞ」
カエラがしみじみと言った。
マイタケを取って次へ進む。
キノコは別に一部を取っておくとか考えなくても、また来年生えてくるので、株ごと全部採取してしまう。
しばらく進むと、今度は倒木があり、キノコが点々と生えている。
「シイタケじゃな」
「おお、シイタケきたかぁ」
俺が思わず
江戸時代ぐらいまでは高級キノコだったシイタケちゃん。
逆にマイタケやマツタケのほうがたくさん取れた時代もあったらしい。
シイタケは株にならず、一本ずつ倒木から直接生えていた。
それを一つずつ摘まんで取っていく。
「シイタケ♪~、シイタケぇ♪~」
シイタケの歌を歌うリズ。なんか面白いな。
籠にぽいぽいしていく。
ささ、次を目指そう。
次は南の斜面だ。
「地面にキノコ発見にゃ!」
リズが鋭く指摘する。
そこには、松の木が。ということはマツタケだ。
「マツタケじゃな」
「「「わーい」」」
みんなで周りをよく探して、同じように生えていないかチェックしていく。
「こっちにもありました!!」
発見者はメアリア。お
この辺は、南の斜面でけっこう傾斜がきつい。
それでも懸命に登って、マツタケを探す。
それなりに生えていて、一人一本分ぐらいは取ることができた。
行きはまだよかったが、帰りが大変だ。
荷物を背負って山を下っていく。もう疲れてるので、へろへろになった。
集落に戻ってきた。
俺はみんながキノコに夢中になっている間に、ちょっと裏の水路に向かった。
そしてちょっと広くなっていて浅いところを横に掘って作った場所を確保して、そこにワサビを植えた。
ふふふ、どうだ自作ワサビ田だぜ。
ワサビ田には、ワサビに石を乗せて抑えるタイプと砂に植えるタイプがある。これは砂タイプだ。
へへへ、数が増えたらラッキー、たまに収穫しよう。
キノコのうちシイタケとマツタケは焼きキノコになった。
「あっちち」
「うまうま」
「いい匂い」
みんなで火を囲んで、キノコを頬張る。
マツタケはいい匂いだ。シイタケは旨味がいい。どっちも、かなり美味しい。
マイタケは野菜と一緒に鍋にする。鍋といってもここは異世界、具だくさんスープなんだけど、まあいい。
「キノコ美味しーい」
「キノコ好きにゃ」
「キノコ、大好きになり、ました」
三人とも大好きらしい。よかったよかった。カエラも美味しそうに食べてたよ。
もちろん自分たちだけで食べないで、他の家にも分けたりした。