俺たちは夏野菜の残りや干肉を戻したもの、小麦の薄焼きパンなどを出して二人を歓迎した。
「田舎のこんな奥で、けっこう野菜の種類もよく出せるね、正直舐めてた、すごいよ」
ニードルさんは手放しでほめてくれた。そういう態度をされると悪い気はしない。
コーヒーも売ってくれたので、なおさらだ。
種を入手したので各種畑で栽培していると説明した。主に自家消費の少量生産だからできることだ。
これを利益を出して売ることをメインで考えたら、とてもじゃないけど手が足りない。
「なるほど、感心だなぁ」
ババロードさんのほうも、うんうん
こうして日々の生活をほめてくれる人がいると、そのためにやっているわけではないとしても、とたんにうれしくなる。
主目的は自分用ではあるけど、みんなにも、おすそ分けできることは、うれしいことだな。うん。
翌日朝早く、ババロードさんの馬車は引き返していった。
荷物を背負ったニードルさんは山越えルート側の道を指さした。
「じゃあな、また来ると思う、そんときはよろしく」
ニカッと白い歯を見せてニードルさんは登山道を徒歩で登っていった。
正規ルートは山を
本当にまた来そうだな、この人。でもこういう一発当てるタイプの商人は、成功しても、失敗しても、次が無いということも多いらしい。
応援だけはしておこうと思った。
流れの商人が持ち込む、珍しいものはうれしいものが多いと思う、たぶん。
集落の四軒目の家が完成した。畑作業や山の仕事の合間だったので、それなりにスローペースだったけど、これでまた村の住人が増えることになる。
家はうちよりちょっと大きい大家族向けという感じだった。
粗末な家というほど酷くはないし、かといって
要するにこの辺の村町でいうなら普通くらい。
さっそく徒歩で半日進んだ距離にあるトハムン村へ知らせを出した。もちろん集落の誰かが行かないと誰も行ってくれないので、父ちゃんのゴードンが昼頃に出て一泊してきた。
それからしばらく経ったころ、荷馬車がやってきた。
中身はもちろん開拓作業を手伝ってくれるらしい、新しい家族だった。
おじさん、おばさん、おじさんの弟、そして俺たちと同じぐらいの小さな女の子が一人。
女の子は俺たちを興味深そうに見て挨拶をしてくれた。
「こんにちは、私はメアリア、です」
「こんにちは、俺はブラン」
「こんにちはにゃ。リズだにゃ」
「こんにちは。ドロシーだわ」
それぞれ普通に挨拶を返して、そして順番に握手もした。
顔は笑顔だ。とりあえず仲良くできそうで、一安心というところだろう。
それにしても、また女の子か。
「メアリアちゃん、そうだにゃ、最初だしまずは三並べしようにゃ」
「三並べ?」
「うにゃ」
こうしてリズが引っ張っていって、さっそく遊ぶらしい。俺たちもそれを見守る。
三並べ戦は、それなりに盛り上がった。順番にメアリアの相手をしたり、さんざん今までやっただろうにリズ対ドロシーもやっていた。
その間、俺とメアリアは静かに眺めたりして、比較的おとなしい子みたいだな。
リズとドロシーはお嫁さん争奪戦はどうするつもりなんだろうか。
ちょっとトイレとか言って、三人連れだって、俺だけ残されたりした。
何やら女の子同士、話はついているらしいけど、よくわからん。
まだ小さいから半分無効だと思うが、将来なんて今からわかるわけもないよな。
大丈夫、大丈夫。
リズとドロシーは気がついたら居たから、新鮮ではある。
メアリアはちょっとよそよそしいけど、楽しそうに笑う顔がなんとも言えないぐらい、可愛い子だ。
人間、エルフ、獣人の間は種族差別とかはほぼ無いんだけど、やはり人間は人間同士で結婚したほうがいいというのはある。
だからリズやドロシーよりはメアリアのほうが、俺と結婚するなら、いいという風潮はあるかもしれない。
しかしリズとドロシーのほうが一緒にいた期間が長いので現状では有利だ。
ちなみにハーフエルフ、ハーフの獣人とかでも子孫が残せる世界らしいと、風の噂で聞いた。
つまり、現状では戦闘力は同じくらいということになると思う。
なんの戦闘力かは知らない。
夕方、さすがに家に帰らないと。
「じゃあ、また明日。みんな、ばいばい」
「ばいばいにゃ」
「ばいばいだわ」
「はい、また明日、です。今日からよろしくお願いしますね」
頭をぺこりと下げて、メアリアは新しい家に帰っていった。
ちなみに家具とか大それた荷物なんて無いし、引っ越し作業は早々に終わっていた。