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19. 竹馬と魚とリバーシ


 ぽっくりで遊んだので、今度は違うもの、そう竹馬を作った。

 なんとか見様見真似、記憶を頼りに作り上げた。


 といっても簡単、身長にあった長さの竹を用意する。

 足場の横板を設置。横板を斜めに支える支柱を設置。

 で三角形にするとできる。

 思ったより簡単だった。


「わーい」

「う、うう。あぁっ、難しい」


 余裕で乗っているのはリズ。そしてすぐ倒れてしまうのはドロシーだ。

 俺はなんとか乗れている。


 上級者なら竹馬で、さらに短距離走とかするんだろうけど、まだそこまでは無理そうだ。


「ドロシー、もうちょっと思い切って前傾姿勢してみ」

「は、はいっ」


 ドロシーが前屈みに竹を斜めにする。

 竹馬はだいたいそうしないと乗れないと思う。


「おおっと、おっとっと」


 ちょっとずつ乗れるようになってきた。


「いいぞその調子」


 ドロシーもなんとか乗れて、三人でこれまたその辺を歩き回った。

 ついでにそのまま村の畑の見回りをする。

 特に何も無かった。まぁ、何かあるほうがびっくりだけども。

 野菜は毎日というくらい見ているからあまり変化はない。

 夏野菜も生長してきて、緑が茂っている。

 雑草はそうね、うん、まぁ、目立つ奴だけ抜いている。くそ真面目に小さいのから全部抜いてたら遊んでる暇なんてまったくなさそうだ。




 午後からは、川までちょっくら出張する。

 家から網を持っていく。


 川はそこまで大きくない。

 そして分岐していて、浅瀬のほうへ小さい流れができていた。

 その分岐が合流する手前に石を並べていって、川幅を狭めておく。

 狭めた場所に、網を張って、反対側に俺たち三人が立つ。


 日本だと、川ではアユ釣りとかだけが可能で、場合によっては網とかを使うのは禁止されてるけど、異世界ではそんな細かいルールは無いんだもんね。


 音を立てながら、網のほうへ歩いていく。


 すぐ目の前を、魚が猛スピードで浅瀬を進んでいく。

 そして網に入るっていう手前で、なんと、ジャンプ。


 びゅーん。


 魚が飛んで向こう側に行ってポシャンと水に落ちて逃げていった。

 飛ばない魚もいて、そういうのは網のほうへ追い立てられていく。


「わあああ」

「うにゃあああ」

「うりゃああ」


 俺たちはそれを追って声を上げる。

 網のところまで来た。


 網を上げると、魚が何匹か。全部で六匹だった。思ったよりは多い。

 魚を網から外して、水を入れたバケツみたいな桶に入れておく。


 再挑戦。今回は四匹。

 これで十匹。集落は全部で八人だからこれでいいだろう。


「お魚とれたね」

「うん」

「にゃーん。お魚大好き。もっと頻繁に食べたいにゃ」


 ほうほう。リズは魚好きか。


「私はあんまり」


 ほうほう。ドロシーはあんまり好きじゃないのか。

 ドロシーの好みはお肉か生野菜だもんな。


 魚はアユっぽいのだ。

 ちなみにアユのご飯はコケなので、えさを付けても釣れない。

 友釣りという方法を使うのが一般的らしい。



 持ち帰ったアユは、竹串を作ってそれに口から尾に向けてクネらせて刺す。

 それを火のそばの土に刺して焼くのがセオリーだ。


 外で全部を焼いてしまう。

 もちろんご近所さんにも分ける。


 魚を食べる機会はあまり無いけど、たまに食べると美味しいもんだ。




 遊びといえば、五目並べはルールとか分からないので、やめてリバーシをやってみることにした。

 八×八マスぐらいのものだったと記憶しているので、今回はそれでいく。

 そして普通なら白と黒の丸い板をひっくり返すんだけど、そんなものは無いので、木の板を適当に切ったものを用意して片面を墨で塗って黒くしてみた。

 囲碁みたいに白黒の石にすることもできるけど、今回はパスだ。

 六十四個も作るのは結構面倒だった、というのが正直なところだ。石を拾ってきたほうが早かったかもしれない。

 ちなみに丸く切るのは難しいので、八角形ぐらいの形になった。


「へぇ、ブランは色々考えるねぇ」

「そうにゃんね~」

「まあね、これくらいは、町にも行ってきたし」

「町にはこの遊び、あるの?」

「ん、たぶんないと思う。というか家の外ではあんまりやらないし」

「そうよね。じゃあブランの発想なんだね、すごいね」

「いや、まあ、なんというか。元ネタ自体はあるんだ」

「そうなんだ。でも自分で作れるのはすごいわ」

「すごいにゃん」

「あはは」


 まあ、ほめても何も出ないよ。とは思っておく。


 リバーシはかなり奥深い。

 隅を取られないようにするという戦略とか。

 それを見越して、隅から一つ目を相手に置かせる。

 さらにそれを見越して、ってどんどん難しくなっていく。


 まあ、でも最初は子供の遊びだから、何も考えないで、ただやるだけでいい。

 シンプル、イズ、ベスト、なのだぞ。


「えへへ、はいひっくり返したわ~」

「にゃにゃ。負けないにゃ。一個だけだけど返したにゃ」

「ふふん。はいまたいっぱいひっくり返したわ」

「あ、隅に置けるにゃん。いっぱいひっくり返せるにゃ」

「あららら。まっ、負けないんだから」

「どんどん置けるにゃん」

「まだまだ」

「にゃんにゃん」

「ああ、どんどんひっくり返ってくわ、くっ」


 序盤はドロシー優位に見えたものの、最後のほうでリズが並んでいた列を全部ひっくり返して、大逆転という、よくあるパターンだった。


 リズとドロシーどっちのほうが頭がいいかはよく分からない。

 リズのほうが猫耳族なので、野生の勘が鋭いような気がする。

 理詰めではエルフなドロシーのほうが強いような気がする。

 どっちも、自称ちょっとだけできる俺より、それなりにすぐできるようになった。


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