ばあさんと山に入る。
特徴的で目立つ草といえば、ウラシマソウ、マムシグサの花らしい何か。
種類としてはサトイモやコンニャクの仲間で芋もついてるんだけど、有毒というか、頑張っても食べられないらしい。
サトイモは食べられるのに不思議だなぁというか、どの植物もみんなそんな感じだな。
それで、この世界での植物もどうなってるかは、カエラばあさんに聞くほかない。
実際に食べて、ポンポンペインして、口が苦くなったり痛くなったりしたくないもの。
というわけでワーイサトイモだぁといって、食べたりはしない。まぁサトイモは地球の常識でいえば葉っぱが独特だから見分けつくけど。
ナンテンの実とか赤い小さめの丸い実は美味しそうだけど、食べないよね? 普通は。
赤い実だから食べられるみたいな風に見た目で判断しちゃだめ絶対。
食べられそうで、食べられない。鳥は美味しそうに食べるみたいなのに。実に悔しい。
とくに悔しいのは、キノコ。その辺に生える、特徴の無い茶色いキノコたち。名前不明。
不明だから美味しそうでも、食べるわけにはいかない。
一発アウト天国へってこともたまにある。しかも地球では近年毒性が発覚した種類なんかもあるらしい。
カエラばあさんでも知らなかったりする。知っていても判別できないキノコでは食べるのは怖すぎる。
キノコは秋に多いイメージだけど、春にもけっこうな数が生えていた。
そんな風に、食べられそうで食べられない草木を横目に、有用植物を集める。
異世界ファンタジー固有の植物もあって、薬草、魔力草の類がだいたいそんな感じだった。
真っ白な葉っぱや青い葉っぱなんかの目立つのもある。
そういう見つけられやすいのが薬草だと、探すのが楽でいい。
薬草でも食べられないけど薬にはなるのとかもあった。
山から戻ってきて、この間取ってきたタンポポの根っこを
最初に包丁で小さく刻む。そしてフライパンで
家でタンポポコーヒーのチップを綺麗な布きれで包み、お湯を入れた木のボールみたいなのに入れて出す。
お茶を飲む習慣そのものが無いので、
で三人の木のコップに移した。
陶器や磁器のコップなんて持ってない。あれはもっと技術が発達した世界のものだと思う。
地球の現代だと、逆に木のコップのほうが高いという現象があるけど、ここは異世界。木なんか家の周りに生えているから、これは父ちゃんのお手製だったりする。
「さータンポポコーヒーできたぞ」
「やった」
「にゃんっ」
タンポポコーヒーはコーヒーのような濃い色はしていなくて、焙煎を強めにしたので香ばしいような匂いがしている。
さっそく、すぐ飲むんじゃなくて、三人で鶏小屋に移動して飲む。
「「「いただきます」」」
ごくごくごく。
「ふ~ぅ」
「美味しいです」
「美味しいにゃん」
「ああ、うまいな」
落ち着く。本物のコーヒーほどではないけど、いい。本物といっても飲んでいたのはインスタントだけども。
まだたくさん残っているからまた飲もう。
夕方、両親にも試飲させたところ、そこそこ好評だった。
どうも親はお茶を飲んだことがある様子なので、昔は何か飲んでいたかもしれない。
「これがタンポポ『コーヒー』っていうんだよ」
タンポポは現地語マールラ語、コーヒーは日本語発音のままだ。
だってこの世界にコーヒーに該当するものが何か分からないし。
「これはこれで美味しいぞ」
「お茶は知ってるけど、ハーブティーとかかしらね。これは少し苦味があるのかしら。でも美味しいわ」
そこそこ好評だった。すでに少量だけどドロシーにもリズにも持たせてある。
今頃は各家庭で、品評会だろう。
どうも、このタンポポコーヒー。強めに焙煎するとコーヒー風に、弱めに焙煎したりするとお茶っぽく優しい感じになるんだと思う。比べて試してみたわけではないけど、焙煎具合で、味が全然違うという情報は覚えていた。
今までは、スープとかはあったけど、飲み物といえば水だった。
おそらくだけど、水が美味しくないと、この手のお茶やコーヒーは不味い。
白湯も飲んでみて、甘い気がするくらいの水でないと、なんか土っぽかったりして美味しくないというのが何となくの経験則だ。まぁ俺の経験なんてあてにしないでくれ。
これも大量に作れるなら、売れると思うけど、タンポポがそんなにいっぱい生えているわけでもないし、地球ではお茶関連は代用品が多く世間には実はジャガイモ茶なるものとかもあるらしいので、値段は高くないだろう。
儲けようとして大量生産するなら、もっとコスパがいい商品を作らないと、忙しさで死んでしまう。
ということで、タンポポコーヒーは家庭消費用になった。
また何か、楽して少量とかでも値段がついて儲かるものを考えないと。