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65. カレー


 この前の領都までの遠征で、香辛料ミックス、カレー粉っぽいものを手に入れていたので、今日はカレーに挑戦しようと思う。


 お昼前、料理を母ちゃんと交代して、俺が作る。


 野菜類もタマネギ、ジャガイモ、ニンジンと基本は揃ってるし、お肉もシシ肉がある。豚肉とほとんど変わらない。


「何つくってるの、スープ? ブラン?」

「えっとね、カレーっていう食べ物」

「ふうん」


 ドロシーがやってきて見てくる。

 まあカレーっていう固有名詞を出しても分からないとは思う。

 確かに現段階ではスープと一緒だな。


 鍋にお肉を入れていためて、そしてお水とジャガイモとか野菜を入れて、さらに煮る。


「あのね、これにスパイス、香辛料を入れるんだよ」

「へえ」


 特製スパイスを取り出して、ばばって適量、投入する。


「わわ、何かいい匂い。何この匂い、美味しそう」

「だろ、まあ、見ててね」


 みんな集まってきて、見学しだした。

 スパイスはミックスのだったから、何が入ってるかよく知らないけど、まあ、異世界でも似たようなものだろう。

 大丈夫、大丈夫。


 そしてカレーが完成した。


「なんか変な色」


 ドロシーがずばり。

 まあカレーなのでカレー色なんだけど、茶色の透明ではないスープだから、珍しいかもしれない。

 いや、これがいいんじゃんな。


 ご飯を入れてカレーライスといきたいところだけど、お米なんて無い。

 いつもの薄焼きパンを用意する。


 カレーの匂いは暴力的だよな。こんなに食べたくなる匂いなんてそうそうない。


「「「いただきます」」」


「「「美味しーー」」」


「ちょっと辛いね。でも何だか美味しいわ」


 ドロシーも納得の味。

 みんな大好きカレーは、異世界でも人気だった。


 俺は自分の分をお代わりして、そしてトッピング、チーズを取り出してカレーに乗せた。


「おかわり!!」

「あ、わたしもにゃ」


「ボクもおかわりください」


 メアリア以外、カレーをお代わり。

 ご飯と一緒に食べるのと違って、スープみたいにスプーンで食べてるんだけど、それでもやっぱり美味しい。


「チーズ乗せも美味しいね」

「美味しいにゃ」


 今回はいろいろ用意していないけど、トッピングもなかなかいい。

 俺は牛丼の具との、合掛けカレーが好きなんだけど、牛丼のほうは再現が難しい。

 この世界にも牛はいるみたいではあるものの、おそらく高級品だ。


 メインは豚であと羊肉が多い印象かな。

 お肉用として育てているのは豚ぐらいで、他の種類は基本的にはミルクや毛を取るために飼育していて、お肉は副産物だと思う。


「辛い、けど、美味しいぃ。ボク、領都に住んでたけど、こんなの食べたことないんだけど」

「まあ香辛料屋はちょっとマイナーな店っぽかったし、流行ってないみたいだったからなあ」

「そうなんだ」

「うん。あと、値段がね」

「値段?」

「かなり高いんだ、うん」

「そっか」


 香辛料じたいは普通に売っているけど、値段が高いのはいかんともしがたい。

 これではカレーが普及するのは、もっと流通コストが下がるまで待つか、貴族の料理となってしまうか、そんな感じなのが実情だった。


 もうだいぶ寒くなってきたから、辛くて温かい料理は、体を温めるのにもちょうどいい。

 いや、本場インドでは暑くてもカレーか。ということは一年中おすすめということだな、うん。


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