この前の領都までの遠征で、香辛料ミックス、カレー粉っぽいものを手に入れていたので、今日はカレーに挑戦しようと思う。
お昼前、料理を母ちゃんと交代して、俺が作る。
野菜類もタマネギ、ジャガイモ、ニンジンと基本は揃ってるし、お肉もシシ肉がある。豚肉とほとんど変わらない。
「何つくってるの、スープ? ブラン?」
「えっとね、カレーっていう食べ物」
「ふうん」
ドロシーがやってきて見てくる。
まあカレーっていう固有名詞を出しても分からないとは思う。
確かに現段階ではスープと一緒だな。
鍋にお肉を入れて
「あのね、これにスパイス、香辛料を入れるんだよ」
「へえ」
特製スパイスを取り出して、ばばって適量、投入する。
「わわ、何かいい匂い。何この匂い、美味しそう」
「だろ、まあ、見ててね」
みんな集まってきて、見学しだした。
スパイスはミックスのだったから、何が入ってるかよく知らないけど、まあ、異世界でも似たようなものだろう。
大丈夫、大丈夫。
そしてカレーが完成した。
「なんか変な色」
ドロシーがずばり。
まあカレーなのでカレー色なんだけど、茶色の透明ではないスープだから、珍しいかもしれない。
いや、これがいいんじゃんな。
ご飯を入れてカレーライスといきたいところだけど、お米なんて無い。
いつもの薄焼きパンを用意する。
カレーの匂いは暴力的だよな。こんなに食べたくなる匂いなんてそうそうない。
「「「いただきます」」」
「「「美味しーー」」」
「ちょっと辛いね。でも何だか美味しいわ」
ドロシーも納得の味。
みんな大好きカレーは、異世界でも人気だった。
俺は自分の分をお代わりして、そしてトッピング、チーズを取り出してカレーに乗せた。
「おかわり!!」
「あ、わたしもにゃ」
「ボクもおかわりください」
メアリア以外、カレーをお代わり。
ご飯と一緒に食べるのと違って、スープみたいにスプーンで食べてるんだけど、それでもやっぱり美味しい。
「チーズ乗せも美味しいね」
「美味しいにゃ」
今回はいろいろ用意していないけど、トッピングもなかなかいい。
俺は牛丼の具との、合掛けカレーが好きなんだけど、牛丼のほうは再現が難しい。
この世界にも牛はいるみたいではあるものの、おそらく高級品だ。
メインは豚であと羊肉が多い印象かな。
お肉用として育てているのは豚ぐらいで、他の種類は基本的にはミルクや毛を取るために飼育していて、お肉は副産物だと思う。
「辛い、けど、美味しいぃ。ボク、領都に住んでたけど、こんなの食べたことないんだけど」
「まあ香辛料屋はちょっとマイナーな店っぽかったし、流行ってないみたいだったからなあ」
「そうなんだ」
「うん。あと、値段がね」
「値段?」
「かなり高いんだ、うん」
「そっか」
香辛料じたいは普通に売っているけど、値段が高いのはいかんともしがたい。
これではカレーが普及するのは、もっと流通コストが下がるまで待つか、貴族の料理となってしまうか、そんな感じなのが実情だった。
もうだいぶ寒くなってきたから、辛くて温かい料理は、体を温めるのにもちょうどいい。
いや、本場インドでは暑くてもカレーか。ということは一年中おすすめということだな、うん。