以前話していた通り、そろそろブラックベリーが山の中のあちこちでなる時期だ。
ということで、みんなを連れてブラックベリー狩りをした。
「こっちにも、あっちにもあるにゃ」
そうなんだよ。見渡す限り、あっちにもこっちにもなってる。しかし一か所ずつは、少量しかなってないので、歩き回らなければならない。
そのため面倒くさいのが嫌いな俺は、なるべくサボりたいけど、金貨の山になると思うと、そうも言ってられない。
「さあ、頑張って集めよう」
「「「はーい」」」
試食権が与えられている女の子たちは、今からジャムを楽しみにしている。
春以来、いくつかジャムを製造してきたけど、みんなどのジャムも好きみたいだ。
実をなるべく収穫時には潰さないように集めていく。
ジャムにしちゃえば結局潰れるとはいっても、収穫後に沢で洗わないといけないので、今は潰れると困る。
神経を使いつつ、籠に入れていく。
「あ、ウサギさんっ!!」
「本当、です」
おっと今回はメアリアもちゃんと見れたようだ。
以前、ウサギと会えるのを楽しみにしていたらしいので、よかったな。
ウサギはそれほど警戒せずに、その辺をうろちょろした後、どこかへ消えていった。
「可愛かった、です。うふふ」
うっとりしてるメアリアもウサギに負けず可愛いが、まあ野暮なことは言わないでおこう。
どんどんブラックベリーを集めていく。
お昼を挟んで、夕方近くまでかかってしまった。
まだ山の中を探せば、だいぶ残っているけど、これは動物たちのご飯でもあるので、残しておこう。
「はい、ご苦労様」
「「「はい」」」
みんなに見られながらベリーを洗って、鍋に放り込む。
外で様子を見ていた、ジェシカもやってきた。
「みんな楽しそうだけど、何してるの?」
「ああ、ブラックベリージャムだよ」
「ジャム? ジャムってあの? 最高級品とか言われるあの?」
「あ、そんなふうに言われてるの?」
「はい。なんでも領主様が大好きで、お気に入りの人の食事会にしか出さないけど、出すと自慢をするという」
「そんなことになってるんだ」
「一部の人しか知らないよ。ボクはたまたま耳にして」
「たまたまか」
「へ、なんで、そんなものがここに」
「なんでって、領主様へ届けてるジャムのうちいくつかは、ここ産だからだよ」
「へええ。ええええええ」
ジェシカの反応が思ったよりすごかった。
そういえば一緒に住んでるけど、最近ジャムを出したことがないな。
「え、ジャムが下っ端のボクにも手に届くところに」
「まあ、後で完成したら味見は一緒にしようか。それまでは、ステイ、待てだよ」
「はい」
ジェシカはしょんぼりして、ステイしている。
でも羽がちょっと音はしないけどバタバタしてる。
ジェシカでもこんな顔するんだな。
ちょっと落ち着きのない小さい子みたいで、可愛い。
「はあ、こういっては悪いけど、こんな何も起きそうにない
「そうなんだ」
聞かされたこっちも、やや困惑気味だ。
鍋でぐつぐつ煮た後、蜂蜜を投入した。
「はい、できあがり」
みんな、固唾を飲んで見守っている。
「じゃあ、試食会しようか」
「「「はーい」」」
ジャムの試食会をする。
「ジェシカもいるし、せっかくだから、薄焼きパンを焼こう」
「えーー」
「えにゃ」
「え、です」
「まあまあ、そのままでも美味しいけど、ほらパンにつけたほうが美味しいでしょ」
「う、うん」
ドロシーが渋々了承して、みんなも続いた。
「はい、パンも焼けました」
「「「いただきます」」」
ジャムを塗って薄焼きパンを食べる。
うん、パンに最高に合う。さわやかな酸味、そしてかなり強い甘み。
「「「おいしぃいい」」」
はい、最高。
この量をもし砂糖で作ると、かなりの金額になってしまう。
今回は自家製の蜂蜜だ。蜂蜜でも買っていたら、それなりのお値段がする。
貴族様直行であの値段で売れるから、買ってもなんとか利益が出てる。
金貨が飛ぶので、販売額に対して利益率じたいはそれほど高くなくても、ベースが金貨なので、利益も金貨なのだ。
お貴族様の金銭感覚は怖いが、それに助かっている。
今回は材料から自前なので、原材料が掛かっていない。いくらになるかは想像しにくい。