第一弾のヒヨコたちはもう、立派に大きくなった。
メスが二羽、オスが二羽だった。
第二弾のヒヨコたちも、もうヒヨコではなく若いニワトリになっている。
こっちはメスが三羽、オスが一羽。
そしてうちではフリーのオスを
「ということで」
「「「はいっ」」」
「うんあのね」
言いにくいが、まあね。
「オスの一羽は、お肉にします」
「「「お肉!!」」」
こうして、一羽が犠牲になった。
作業は父ちゃんにお任せなので、俺たちは見てるだけだ。
普段、山の猟は、大型動物の罠が中心なので、鳥とかは仕留めてくることがない。
だからうちでは肉と言えば、シシ肉だったんだけども。
庭に放たれているオス鳥を、追いかけて捕まえた。
そして絞める。
殺しちゃうのは残酷ではあるけど、普段食べてるお肉や魚だって結局のところ、一緒なのであって、それは前世だって変わらない。
ただ、目の前で殺されないってだけだ。
父ちゃんはさっさと血抜きをして、そして羽とかを
それからお肉を部位に切り分けると、俺たちのターンだ。
すでに前世で見たスーパーの鶏肉と大差がない。
「本当は醤油っていうのがあるといいんだけどないから、今日は代案で。これはこれで、とっても美味しいと思うから、大丈夫」
「「「美味しい――」」」
「うん、たぶんね」
鶏肉に塩
酒は蒸留酒で料理酒みたいなのがあったので、買っておいた。
十分に揉んで味をなじませたら次だ。
片栗粉なんてないので、小麦粉を使って粉を薄めにまぶしていく。
それをちょっと贅沢に、サラダ油を注いだフライパンに入れて揚げる。
じゅわああ。
唐揚げの揚げている音がする。
「「「うわあああ」」」
いかにも美味しそうだ。
焦げない程度に揚げたら、油から上げる。
お皿に並べていき、そして横にレモンを添えて、完成。
「熱いよ」
「はい……」
もうリズとかヨダレが垂れそう。
ついでにこれはお昼ご飯なので、サラダとかも作っておく。
それからジャガイモのポタージュスープもある。
この前のおろし金がジャガイモをすって、それっぽくしたものだ。
「食べていいよ」
「「「いただきます」」」
三人娘は我先にと、フォークを唐揚げに突き刺して、持っていく。
「ほふほふ、熱い、でも、美味しい」
「おいしー」
「美味しい、です」
この集落で鶏肉を食べたのは、たぶん、初めてだ。
しかも鮮度のいい「若鳥の唐揚げ」だから、そりゃあ、美味しくなきゃ、おかしいよな。
うちの両親もちょろっと唐揚げを食べる。
ニワトリ一羽分なので、そこそこの量がある。
部位によっても味とか食感とかも違って、それぞれ美味しいと思う。
「ジューシーでおいしい」
ジェシカも来ている。ご飯そのものは宿舎で食べるんだけど、騒ぎを見ていたので、唐揚げの味見をしていった。
「ジェシカさ、町ではニワトリとか食べるの?」
「え、まあ、たまには食べるよ。豚が多いけど、オスのニワトリはやっぱり卵産まないから要らないでしょ」
「だよねえ」
「うん」
町でも一緒なんだな。まあ、そうだよな。
唐揚げは全部なくなってしまった。
「もっと食べたかったにゃ……」
「まあ、またの機会に。オスがまた生まれて余ったらね」
「うん」
リズがそういうけど、基本的には卵用なので、お肉用はおまけだから、あまり機会はないだろう。
村まで行って、ニワトリ仕入れてくるとかすれば別だけど、生きたまま運ぶのも面倒だし、かといって生肉を運ぶわけにもいくまい。
いや待てよ。
ジェシカにひとっ飛びしてもらえれば、町まで買いに行って、新鮮なお肉も買えるのでは。
いやあ、やっぱ持つべきものは、翼人族の友達だな。
「ジェシカ。悪いんだけど、たまに生の鶏肉買いに行ってくれる?」
「ど、どうかなぁ。あんまり任務外の仕事してると、怒られちゃう」
「だよねえ」
「うん。でも、これ本当に美味しいから、隊のみんなの分も作れば、喜んでくれると思う」
「みんなも巻き込んじゃうと。なるほどねえ」
こうして唐揚げは、集落のごちそうメニューとなるのだった。