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53. 昼食会


 領主館で昼食会とか、アンダーソン騎士の家の食事は前座だったのか。予行演習だと思えば、今回が本番だ。


 長いテーブルで、対面形式でずらっと並ぶタイプだった。

 お誕生日席に領主様、前にも見た領主の家族、妻、娘二人が並んでいる。

 そのこっち側にユドルフ将軍。宰相は参加しないらしい。

 将軍の隣に俺、娘さんの隣にはドロシー。

 リズとメアリアが対面に座っている。


 ああ、立食のバイキング形式とかが俺はいいなあ。気を遣うレベルが全く違う。

 バイキングいいよバイキング。普及しないかな。


 サラダ、卵焼き、スープ、パン、何かのお肉の焼き肉風。そしてデザートとしてプリンが出てきた。


「このプリンというもの、ヘルベルグの報告にあってな、作ってみた」

「さようですか」

「とってもおいしかったから、お気に入りなのよ」


 娘さんが補足してくれる。


「というか、あなた、ジャムの子よね?」

「そうです」

「あれからブドウジャム、マロングラッセとか食べさせてもらってるわ、どれも好きよ」

「ありがとうございます」

「冬はどんなジャムが取れるの?」

「いや、冬はちょうどいい実がならないので、いや、そういえば、あれが」

「あれですか」

「はい。ブラックベリーという低木の木の実がありますね」

「そう、それは楽しみね」


 娘さんちゃっかりジャムのおねだりか。

 うちの集落にはないけど、オレンジが時季だと思うから、マーマレードとか作ればいいんじゃないかな。

 でもオレンジは普通に運べるから別に珍しくないんだよね。

 ブラックベリーは地球のものと違い、珍しく冬の初めに実を付けるベリー系の植物だ。

 ただ林の中にバラバラに生えているので、集めるのが面倒くさい。


 領主様の家族は娘二人か。本当はたぶん男の子のほうが喜ばれるとかあるんだろうな。

 第二夫人の子供とかも、ありな世界のはずだ。

 第二夫人がいないということは、奥様を愛している誠実な人なのかもね。

 その辺の話はもっと道中ちゃんと聞いておけばよかった。

 もし隠し子とかいて、実はドロドロしていたら、目も当てられない。

 微妙な問題は口にしないに限る。


「そういえば、ゴードンとナターシャは元気にしているかね」


 領主様が俺への質問だ。


「え、あ、はい。元気ですよ。この前もゴードンはイノシシを倒していましたし、ナターシャは料理も畑仕事もばりばりしてます」

「ほほほ、そりゃあいいな、ワシもそういう生活したかった」

「ご冗談を」

「冗談だと思うかね、まあいい、あはははは」


 というか、なんというか、よく両親の名前なんて覚えてるな。超頭いい人なのか。

 それとも俺の両親って何かいわく付きなのか。謎だが、これは質問してはいけない気がする。

 きっと深い闇に関する事柄だと思う。




 町に戻ってくる。

 緊張しまくったけど、なんとか不労所得の権利を勝ち取ることができて、一応は満足だ。

 ドロシーのことも、領都で騎士団に入らないかとか言われるんじゃないかと思ってたけど、そんなことなく、村でひっそり暮らすことを許されたみたいだったし、よかった、よかった。


 さて、別にお金そのものは入ってきていないから、買い物しまくるわけにもいかない。

 何か商売をするにも、アンダーソン騎士は書類仕事があるみたいだし、うーん。


 とりあえず、リバリエ家でお世話になることになった。

 予備で持ち歩いているリバーシをして遊ぶ。


 この遊びは奥深い。

 あと、ひっくり返したときの快感がいい。


 アイテムボックスに関してドロシーたちには言ってある。だからひょいっとリュックサックから何か取り出す振りをして、アイテムボックスから出すのは問題ない。


 結局暇になってしまい、ウィンドウショッピングすることにした。

 付き添いはリバリエ家の執事さんだ。


 何かびびっとくるものがあったら、私用で買って帰ろう。


「どう、ブラン?」

「いや、別にないな」


「ブランのお眼鏡にかなうものはあった?」

「ないない。それに俺はそんなにすごいやつじゃないよ」


 結局、コーヒーを見つけたので少し。あと砂糖と胡椒こしょうを売っていたので、少々。

 いひひ、あとはですね、香辛料ミックス、日本風に言えばカレー粉ですよ、カレー粉。それが売っていたので買ってきた。


 今度からたまにスープはカレー味にしてもらおう。

 高いものばかり買ったので、お財布の中身がやや寂しいことに。とほほ。


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