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46. 妖精光と魔法剣


 翌朝、アンダーソン騎士もさっそく起きてきていたので、一緒に朝のお祈りをすることになった。


「まあ、ちょっと変わったことがあって、一緒にお祈りしてみましょう」

「ほう、どれどれ」


 俺たちはほこらに祈る。


『女神様。今日も一日、よろしくお願いします』


 目を開けると、ぽ、ぽ、ぽと光が灯る。


「ほーお」

「ね、なんか変なのが」

「変なのとは、ちょっと違うな。これは妖精光だよ」

「妖精なんですか? 女神様じゃなくて?」

「まあ厳密なことはわかっていないが」

「ああ、そうですよね」

「一つ一つが、妖精が光ってるって言われてる。姿を見せることは稀だそうだ」

「ふむふむ」

「この里は神とか妖精とかに好かれてるな。どうりで豊かなわけだ。もちろん住人の努力の結果でもあるだろうけど」

「まあ、普通に生活しているだけなんですけどね」

「あはは。私はここは気に入ってるよ。交代制なのが惜しいくらいだ」

「ふうん」


「よし、もう一回祈っておこう。あとで兵士たちにも来させるようにする」


 この妖精光、ビンにと思ったけど、ビンがないな。壺に入れて取っておくとかできないだろうか。罰当たりという問題があるので試せないよな。

 一応、手で掴まえることはできるみたいだけど。

 手を開いたら、光は消えていた。ということで確保は無理っぽいな。


 俺からしたらどう見ても、奇跡の御業なんだよな。

 神職者とかが見たら、きっとびっくりだと思うんだよ。


「ふうん、これがそんなにすごいことなの? ねえブラン」

「ああ、すごいんだと思うよ、俺は」

「そうなんだ」


 ほらドロシーも今一つ、ことの重要性を理解していない。


 なんならここにマジもんの神殿が建つ可能性だってあるよ。

 そうしたら村まで信仰者の群れが毎日来るようになって、宿業でがっぽがっぽ、ついでにお土産とか開発して、がっぽがっぽだぜ。

 考えることが俗っぽすぎるか。あははは。


「そういえば、ヘルベルグ騎士は魔法使ってましたね。びっくりしました。アンダーソン騎士は魔法は?」

「ああ、私は魔法剣ぐらいかな。あとは身体強化」

「ほほう、まあ普通ですね」

「まあな。剣の腕はそれなりだと思うぜ」


 いやいや魔法剣だって十分にすごい。とりあえず俺はまだ使えない。というかそういう発想がなかった。ファンタジー小説で予習したというのに、普通にアイスとかファイアとか使ってたわ。


 妖精光を目の当たりにした、交代要員の人たちは士気が高い。

 訓練にも気合いが入るというものだ。


 ついでに俺たちも魔法剣をお勉強することにした。

 メアリアは剣を持っていないので木剣だ。ということで見学。木剣で魔法剣なんてしたら即、ぼろぼろになってしまうだろう。


 ということで魔法剣の練習には真剣を使った。


 俺は一番得意そうな、そして強そうな気がする火剣。

 ドロシーは風の剣だ。

 リズは水の剣。


 みんなでやってみると一発でできたのはドロシーだけだった。

 そしてなんかドロシーの剣の周りには妖精光、緑バージョンが漂っている。


「ほう、これはすごい。参ったな。領主に報告しておかないと」

「ああ、ドロシーのコレ、綺麗だけど、そんなにすごいの?」

「ああ、これも本物の妖精光だよ。要するに『妖精剣』なわけだ。純血のエルフのなせる技だな」

「妖精剣」

「どれくらい珍しいかというと、いわゆる伝説級だな」

「「「伝説級」」」

「いや伝説は言い過ぎかもな。伝承でしか聞いたことがない。実物を見るのは初めてってことだよ」

「「「……」」」


 ほへぇ。みんなほうけてしまった。

 そうなのだ。実はドロシーは今では数が少ないといわれている純血のエルフ。当然のように両親も純血のエルフなわけだけど。

 多くのエルフは同じエルフでもハーフエルフ、クォーター、って血が薄まっている。人間と交配したそういう普通のエルフとは、ちょっと違うんだって。

 それで命を狙われたりするんだよ。怖いね。

 特に若い娘の純血で純潔のエルフは奴隷にすると高く売れる、らしい。奴隷がどのような用途に使われるかは、誰も教えてくれなかったけど。


 なんでこんな山奥に住んでるのか不思議だったけど、要するに隠れ住んでるんだな、ドロシーのために。

 こんな何もない不便な土地にくるくらいだから、訳ありなんだなあ。

 うちもなんかあるらしいしな。聞いたことないから知らないけど。


「試しに、案山子かかし切ってみ、剣を当てないで風圧で」

「わかりました」


 アンダーソン騎士がちょっといたずらっぽく言ってくる。

 ドロシーは真剣な顔でうなずいた。


「えいやああ」


 ドロシーの前方に案山子がある。それがドロシーの妖精剣の風圧というか剣の先から出る魔法みたいな何かに切られる。

 丸太の案山子は真っ二つになりドゴンっと転がった。


「「「おーお」」」


 なんだこれすごい。ドロシーの前に立って素振りするのはやめよう。


 兵士には他言無用が言い渡された。領主には知らせるらしい。

 俺たちも両親とか以外、言いふらさないように言われた。

 ヘルベルグ騎士たち交代要員には秘密にする方針らしい。知っている人が少ないに越したことはない。

 ヘルベルグのおっさん、アンダーソン騎士に信用されてないんだな。あばばば。


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