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34. 大豆とヨーヨー


 秋も秋。忘れていたわけではないけど、大豆を収穫した。

 大豆は実験農場で、ちょっと広めに場所を取って栽培していた。


 それが大豊作。たわわに実った大豆畑は茶色になっていた。

 若い緑のうちに枝豆で少し収穫して味わっておけばよかったとも思う。


「というわけで」

「「「というわけで」」」


 みんな面白いのか復唱してくれる。


「大豆を収穫します」

「「「わーい」」」


 きっと美味しいものと思っているのだろう。

 正しいが間違いだ。


 大豆を次々引っこ抜いていき、そして豆を回収した。

 一個ずつサヤから出して、中身だけを集める。


 そしてそれをでた。


「ふんふん♪ 大豆、大豆、大豆はどんだけ甘い、美味しい食べ物なのかなぁ♪」


 なんだか願望まるだしの歌を歌うリズを見てちょっと申し訳なくなる。

 違う、そう違うんだ。大豆は茹でたらそのまま食べても、甘くて美味しいわけではない。

 まあそれなりに美味しいといえば美味しいかもしれないが、そうじゃないんだよ。


「すまん、リズ。今回、大豆の半分は非常食に、もう半分は基本的に味噌にするんだ」

「味噌?」

「そうだよ、味噌」


 あれ前にカラスノエンドウで作ったのを忘れているのだろうか。

 俺は覚えているぞ。ちゃんと今も家の隅で、熟成を待っているカラスノエンドウ味噌がある。


「前作ったろ」

「そんなこともあったにゃんね」

「そうだったかしら」


 リズは何となく思い出したようだ。一方のドロシーは完全に忘れているもよう。


 茹でた大豆を潰して塩と混ぜて壺に入れていく。

 みんな興味深そうに見てくるな。


「はい、味噌の仕込みは終わり。あとは一年ぐらい待たないといけないんだ」

「えー」

「えーにゃ」

「えーです」


 みんな不満顔だけど、完成した暁には美味しい味噌が待ってるぞ。だいぶ先だけど。

 もしこれが小説だったら、時間加速培養みたいなスキルで、その話の後半には完成しているんだろうけど、俺の器用貧乏にはそのスキルは発現していないみたいだな。残念。

 ついでに言えば、こうじも無いので、かなりのところ運要素が強い。ドキドキだな。




 この前はコマを作ったので、今度は類似品としてヨーヨーを作ろうと思う。


「というわけで、今回はヨーヨーを作ります」

「「「はーい」」」

「色々なことするね、君たちは」


 最後の発言はアンダーソン騎士だ。彼は今日も暇なので「視察」に来ている。

 村の状況を監視するのも彼らの立派な役割だ。うん。その実、俺たちと遊んでるだけだが。いいんだよ、実態と報告内容が乖離かいりしてても、問題があるわけじゃないし。


 アンダーソンも含めて、五人でヨーヨー作りになった。

 ヨーヨーはコマ以上に、バランスが難しい。左右の木の重さや重心がずれていると、ブレブレになってしまう。


「だから慎重になるべく同じになるように、削っていくんだ」

「なるほどな」


 木工の作業はアンダーソンもできるらしく、器用にナイフで削っていた。そして最後はヤスリで仕上げる。

 円盤を二つ作り上げた。

 軸をつけたら紐を巻いて完成だ。


「で、こうやって巻いてびゅーんってやるとくるくるって戻ってくる、以上」


 残念なお知らせ。俺はヨーヨー作りはわかるけど、遊び方はほとんど知らなかった。

 なんか競技とかで、すごい技があるのは知ってるけど、どんな技があるのかは知らない。

 もっと色々なものに興味を持って、覚えてくるんだった。失態だが、こればかりはもうどうしようもないな。


「びよーん、あはは」

「びよーんにゃ。にゃはは」

「びよーん。面白い、です」


 三人娘は楽しそうだから、これでもいいか。まあ十分だな。


「なんだこれ、面白い、面白いなこれは。びよーん」


 騎士様も大変気に入って、いつまでもびよーんってやっていた。


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