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18. 夏の風


 もう季節は夏になろうとしている。


 まずヒヨコが生まれた。同時に三個温めていたので、黄色い小さいのが三匹増えた。

 お出かけしている間にあったことなので詳細は分からない。

 まあいい。


 ヒヨコちゃんはオスメスが分からない。プロなら分かるのだろうけど。


「ヒヨコちゃ~ん」

「にゃ~ん、猫のお姉さんですよぉ」


 とまあ、ドロシーとリズが楽しそうに見に来ている。

 ピヨピヨと鳴いて、親鳥の後を歩き回っていた。




 夏なので暑い。涼みに行こう。


「ということで、川で遊びましょう」

「「はーい」」


 先に集落の横を流れている沢に向かった。


「イドル貝、取ろうぜ」

「いーよ」

「たくさん集めるにゃ」


 イドル貝というのは、淡水の綺麗な沢とかに住んでいる異世界固有種の二枚貝で、その大きさがハマグリぐらいある。

 これで出汁だしを取ればいい味のスープができると思う。

 焼いて醤油をかけて食べるだけでも美味しそうだけど、醤油が無かった。

 ぶっちゃけ塩だけでも美味しいからいい。


 大きな石をどかすとその下とかに貝は潜んでいる。

 沢の中の石を次々にどかして探していく。


 たまにザリガニとかもいる。そしてサワガニみたいなカニ。

 どちらも茶色だけど、でると赤くなる。かなりおいしいと思う。

 ただ捕まえるのは少し難しい。できないこともないけども。


「貝取ったにゃぁ」

「おお、リズいいね、いいね、その調子」

「私だって何個か取ったもん」


 リズだけ先にほめたらドロシーがねてしまった。可愛い。

 どんな顔しても、可愛いんだからお得だ。

 薄着の麻のワンピースタイプの服が、肌にぴったりと張り付いて、ちょっと目のやり場に困りそうな感じがする。

 といっても幼女のそれなので、おっぱいの形がくっきりとかではない。

 お腹とかに張り付いて、地球の日本から見ればいけない感じというだけだ。

 別にこの世界では普通だ、普通。

 平常心だ。

 そう思うと余計ドキドキしてくるから不思議だった。誰も見てないのに視線が気になってくる。


「ブランどうしたの?」


 ズバッと突っ込みを入れてくるドロシー。なかなか俺の些細ささいな変化に敏感だ。


「えへへ、貝取れたにゃぁ」


 俺の機敏とか全然気にしないリズもリズで無邪気でよろしい。

 後ろ向きで、向こう側の石をどかしていた。

 茶色い猫しっぽがワンピースの切れ目から飛び出して、ぶんぶんしている。

 そのお尻のところも張り付いていて、ちょっとアレな感じになっていて俺は目を逸らす。

 くるっとこちらを向くと、満面の笑みで、大きなイドル貝を高々と上に掲げる。


「もうブランったらリズのほうばっかり見てっ!」


 しっぽがなぁ面白いんだもの。ドロシーに文句を言われる。構ってほしいお年頃なのだろう。


「ドロシーも可愛いよ」

「えっ、ちょっ、か、可愛いだなんて、そんな……」


 小声で否定しつつ、まんざらでもなさそうな顔をして赤くなった。

 コロコロ表情が変わって、こちらも面白い。


 その後も、しばらく貝取りは続いた。



 お昼は、新鮮なイドル貝を入れたスープになった。

 三軒しかないので、色々なことに協力している。スープはうちの母親担当で、ドロシーとリズの家にもできたスープを持っていく。

 リズとドロシーは一緒に味わいたかったらしくて、うちに来ていた。


 おばばは一人でご飯か。寂しくないのかな。


「うーん。貝のお出汁最高ね」

「うん、うまい」

「美味しいにゃぁ」


 まぁ何食べさせても美味しいっていうような気がするけど、そんなことはないんだよな。最近は美味しいものが増えていると考えるべきだろう。当初計画からいい感じだ。


 料理をしているうちに服は乾いて、もう視線を向けても大丈夫。俺の平安は守られたのだ。




 午後はちょっくら遊ぼう。

 竹のコップのあまりを六つばかり集める。

 ひっくり返して、上になった隅のところ二か所に穴を空けて紐を通す。


 完成、ぽっくり。


 普通は缶で、缶ぽっくりっていうのを作るんだけど、缶なんか無いわけでして。

 見学していた、ドロシーとリズに渡してやる。


「紐を手に持って、ここに乗るんだ」

「ほへー」

「ふむふむにゃ」


 ぽっくり、ぽっくり、と音が鳴るんだけど、地面が砂地なのであまりいい音がしない。

 失敗だった。でも多少は竹でも音が鳴る。

 地球の時は地面がアスファルトかコンクリートだったから気がつかなかった。


 三人でぽっくりを装備して走り回る。

 リズはさすが獣人族、危なげなくこなしている。

 ドロシーはちょっと不安定だった。


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