次にドドンゴが来るまでに文字を覚えよう。
父ちゃんに時間を作ってもらって勉強することにした。
ドロシー、リズも一緒だ。そのほうが効率はいい。
羊皮紙もあるにはあるけどもったいないので、木の板に手本を書いてもらう。
まずは数字から。
地球と同じ一から九そして〇、ゼロがあった。よかった。ローマ数字みたいのだと読み書きが面倒だ。とくに筆算するときに大変だし。
全部の数字が独自の形をしている。形はなんか蛇が曲がったみたいなやつ。
文字のほうはアルファベットに似た表音文字だった。
ABCの歌みたいに文字を並べて書いていく。
スペルは例外が少ないみたいで、覚えやすかった。発音がほぼそのまま表記になっていた。これは助かる。
多くの言語では例外みたいなのとか、音と文字が結局一致していないとか日常なので、整然としているのは楽ちんだ。
まぁスペルが間違っていても読めるし、スペル知らなくても発音できれば、その単語を知っていれば意味も分かるからあんまり困らない。
一通りの文字さえ覚えてしまえば、ここの単語は勘だ勘。それでいいんだ。
また野草サラダ、今度はタンポポと沢にあるクレソンと、セリ、そのへんに生えているカタバミを入れてみた。
カタバミは三つ葉のクローバーみたいな草で、クローバーには普通白い模様があり白かピンクのポンポンみたいな花を咲かす。カタバミには模様がなくて、黄色い五枚の花びらが特徴だから見れば分かる。
もちろんカエラおばばに確認はしているから大丈夫。
カタバミは少し酸っぱい味。
今回は塩とサラダ油でシンプルなドレッシングにしてみた。
鶏小屋にはもう住民がいるのでおままごとはできないから、家の中でやった。
サラダ油は冬から春にアブラナを育てている。
別の日。暇だったので裏山に行って竹を取ってきた。
流石に手で持ってくるには大きかったので適当な長さに切った。
それを麦ワラの籠に入れて集落に持ち帰った。
節のすぐ下をなるべく垂直、真っ直ぐになるようにノコギリで切っていく。
切り口はドロシーとリズにお願いして、ヤスリ掛けをしてもらう。
かなりの数の竹のコップができた。
急な来客用、おままごと用、そして販売用にいいと思ったのだ。
木のコップのほうが断然いいけど、あれは削るのにかなり時間が掛かる。
竹のコップは切ればいいから簡単だ。二十個ぐらい作ったので、また竹を切りに行って合計六十個くらい用意した。
一つ百円でも六千円にはなる。日本円換算だと。
この世界にもちゃんとテンプレである銅貨、銀貨、金貨がある。
銅貨が百円くらいの価値で、銅貨百枚が銀貨、銀貨十枚が金貨だ。
細かいお金が無いじゃんかと言われるだろうがそのへんは「おまけ」とかでなんとかする適当なのが普通らしい。
だいたい中世で一円みたいのを作ろうとしてもコストのほうが高いから、そんなものは作らない。
お金の単位も一応あって、銅貨一枚が百ガドルだ。一ガドルじゃないのかと思うかもしれないけど、日本にも量を買うときには円の下の銭の単位を使うこともあるように、そのほうが便利なんだそうだ。
「あああぁあああ」
「次、私。あああぁあああ」
「ああああぁあああにゃああ」
何してるかというと、ターザンごっこだ。木に絡んだ
もちろん千切れる可能性があるから、ちゃんと引っ張って確かめる。
大人よりこういうときは、小さい体が有利だ。
原始的だけど、ブランコに通じるというか、何となく楽しい。
あはははは。ぶらーん、ぶらーん。
握力だけでぶら下がるから、体重が軽いほうがいい。まだ子供なので余裕だった。
もし太ってたら大変なことになる。
遊びといえば、鶏小屋がニワトリに占領されてしまったので、自分たちの家が無くなった。
ということで、ニワトリ臭くないちょっと離れたけど近くの場所に、俺たちの新居を建築中だ。
もちろん遊びみたいなもので、頑張って住もうと思えばトイレ以外はできそうな感じの家にする。
すでに鶏小屋でスキルを磨いているので、それを少し大きい家に応用するだけだった。
一部屋だけの農作業小屋という感じだけど、ドロシー、リズの三人でせっせと木を切ってホゾを彫って差し込んでとかやって、ちょっと本格的な秘密基地を作った。
今度はちゃんと地面むき出しではなく、床を作った。
「秘密基地は土足禁止とします」
「わーい」
「にゃーん」
全然丸見えの秘密じゃない秘密基地だ。
いいんだよ。別に。中までは見えないし、別にエロ本とか隠してるわけでもないし。
あんまり分かってなさそうな二人に手本を見せて、靴を脱いで上がる。
俺たちは文化が進化してないけど文明人なので靴下は履いている。
靴は木靴ではなく革と布でできてる買ってきたやつだ。
こうして新しい遊び場ができた。