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第10話 走る

それから。

コゲマメに会えない日が数日続いて、

私は田舎をあとにして、家に帰ることになった。

コゲマメはこうして終わらせたかったんだろうか。

泣き顔を最後に思い出すのは、いやだなと私は思った。

夏休みは終わる。

どうしようもないことだけど。


帰る日の朝。

私は、荷物をまとめて、夏の終わりを感じていた。

心を満たしていた夏の輝きが、

ぽっかりあいたままの感覚。

さびしいと最初に思い、このままでいいのかと、

コゲマメを泣かせたままでいいのかと、

私に出せる答えはひとつ。

「でかけてきます!」

私はばたばたと、夏の間に酷使したスニーカーを履く。


忘れ物をとってくる。

夏休みの友だ。


私は走る。

夏休みの終わりを走る。

コゲマメの行きそうなところを、しらみつぶしに当たる。

コゲマメは何が好きだったか、

きらめく思い出をたどり、

汗は流れるままに、酷使したスニーカーをさらに酷使して。

思い出をたどっていって、

私は、ふと、思い出す。

まさかと思う。


私は、夏のための感覚を開いた感じになる。

身体が涼を求めていた、ぎらぎらした夏。

涼しげな水が欲しかった、原始的な感覚。

この田舎で最初にした冒険。

小さな川を自力で見つけた私の冒険。

そう、その冒険は見つけた後にも話があった。


私はあのときのように、自分の感覚を頼りに探す。

そして、あの場所に、奇跡的にたどり着く。


「ここ、見つけたの? いいところでしょ」

あの時。最初の冒険のその場所で、初めて出会ったのがコゲマメだった。


コゲマメはあのときの場所にいた。

私を見つけて、どうしようもないような顔をした。

私は息を切らしながら、言葉を伝える。

「友達、夏が終わっても、ずっと、だから、また、会いにくる、から」

「ほんとう、に?」

「また、会おうね。ずっと、友達だよ」


コゲマメはようやく、それで笑ってくれた。

「モヤシの癖に」

「コゲマメの癖に」

いいあって、私たちは笑った。

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