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第27話、今の自分と前の自分

「みんないつもありがとー!」


 私はいつも通り配信していた。同接も度々5000人を超えることもあるほどになっていて、自分で言うのもあれだけど盛況していると思う。それもこれも、前世の私を支えてくれた推しやVTuber活動に協力してくれているしおりお姉ちゃんがいてくれているおかげだ。私のやることに全力で肯定してくれるリスナー達がいるからというのももちろん大きいだろう。私一人じゃここまでたどり着けなかっただろう。


「今日は事前に募集したマシュマロ読むよ」


 そう。今日はマシュマロをたくさん募集し、それらを読んでいこうという企画である。1つ2つはなんてことないのだが、かなり量がある。それにコメント欄で反応するのにも限界があるため、こうして配信で読むことにしたのだ。

 マシュマロは様々なものがあって、面白いものばかりだ。中にはちょっと際どいものもあってドキッとしてしまうが、それもリスナーのコメントに助けられながら読み進めていく。その中でも特に印象的だったものをいくつか紹介しよう。

 まず一つ目は、『VTuber活動で大変なことは何ですか』というもの。これはかなり多かった質問の一つだ。他のVTuberがいないからそういう質問が多くなるのは必然だろう。


「大変なことかぁ。やっぱり難しい質問だよね。色々あるけど、一番大変なのはやっぱり飽きられないようにすることかなぁ」


 リスナー達がコメントで【なるほど】とか、【確かに】と同意してくれている中、私は続ける。


「配信も毎日できてるわけじゃなくて、結構不定期だから見に来てくれる人はいつも同じってわけじゃないんだ。だから飽きられないように常に新しい企画を考えてたり、話題性を大事にしてるんだよ」


 これは本当に大変だと思う。配信する日は事前に告知しているから、その日を楽しみにしてくれているリスナーはいる。しかし、それ以外の日も必ず見に来ているという人は少ないのだ。


「だから毎日新しいこととか話題性のあることをしていかないといけないんだよね」


 このコメント欄には【なるほど】や【確かに】といったものから、【無理しないでね】や【いつも楽しいよ】といった励ましのコメントが寄せられている。本当にいいリスナー達だ。

配信は楽しいし、やり甲斐がある。しかし、それと並行して大変さやプレッシャーもあるのだ。それらとしっかり向き合いながらこれからも頑張っていきたいと思う。


「次は、『いつも配信を見ていて元気をもらっています! これからも頑張ってください!』っていうマシュマロかな。これは本当に嬉しい! ありがとう」


 私が感謝を伝えたことで、【こちらこそ】や【いつも楽しい時間をありがとう】といったコメントが多く寄せられた。本当にいいリスナー達である。

 他にも、『VTuberってやっぱり大変ですか?』とか、『VTuberをしていて嬉しかったことは何ですか?』というものなど、様々なマシュマロを読んで答えていった。

 こうして配信をしていて思ったのは、やはり私はVTuberが本当に好きだということだ。毎日配信するのが楽しみで仕方ないし、リスナー達とお喋りするのはとても楽しい。今まであまり気づかなかったけれど、VTuberとして活動を続けていくうちにどんどん好きになっているように思う。

 だからこそ、これからもVTuber活動に全力で取り組んでいきたいと思っているのだ。そしていつか、前世で叶えられなかった夢をこの世界で叶えることができたらいいなと思うのだった。


「ふぅー! 終わったぁ!」


 VTuber活動を終えて一息つく。今日は配信が長引いてしまって、かなり遅くまでかかってしまった。それでも疲れたという感覚はなく、むしろスッキリした気分だ。それはきっとリスナー達と楽しい時間を過ごせたからだろう。

 それにしてもVtuberというのは本当にいいものだ。前世ではただのリスナーでVTuberオタクなだけだったけど、今は自分自身がVTuberになっている。だから私の好きなVTuber達と同じような体験をすることができているのだ。それが本当に嬉しいし、楽しい。そして何より、私がVTuberとして配信をしているというだけで喜んでくれる人がいるというのはとても嬉しいことだ。


【しおりお姉ちゃん、今日もありがとね】


 私はお風呂に入る前にしおりお姉ちゃんにお礼を伝える。彼女はいつも私を優しく見守ってくれている。そんな存在がいてくれるだけで、私は安心して活動できるのだ。本当に彼女には感謝しかない。

 前世の記憶があるため自分だけでも話題性が高いゲームや雑談のネタを探すのは容易だが、しおりお姉ちゃんの情報収集能力が凄まじいから、自分の視点では見えなかった部分にまで気づけたり、新たな企画のヒントをくれたりしているのだ。

 配信でも言ったけど、飽きられないように企画を考え続けるのは大変だ。いくら前世の知識や記憶があるからといっても、それを活かせなかったら終わる。だからこそ、そんな私にとってしおりお姉ちゃんははなくてはならない存在だ。


【しおりお姉ちゃんのおかげで今の私がいるんだ】


 今日もしおりお姉ちゃんに感謝の言葉をかけつつ、湯船に浸かって疲れを癒す。やっぱりお風呂は最高だ。これで明日もまた頑張れる。そう思えるくらいには気持ちがいい。

 明日はどんな企画をしようか。そんなことを考えているうちに眠くなってきてしまった。このまま寝落ちしてしまいそうだ。しかし、ここで寝るわけにはいかない。ちゃんとお風呂に入ってスキンケアをしたり髪の毛の手入れもしないといけない。いくらVTuberをやっていて忙しいからといって、自分を疎かにしてはいけない。


「よし! 寝よう!」


 私はお風呂から出て髪の毛を乾かし終えると、そのままベッドにダイブして眠りにつくのだった。

 配信をしていくうちにすっかりVTuber活動が生活の中心になってしまった。まあ、楽しいから全然いいのだが。前世では推しに憧れたことは何度もあったが、自分もそちら側になれるとは思わなかった。推しに……近づけているだろうか。もっともっと近づきたい。もう昔の、前世の自分に戻りたくはない。推しの存在だけが頼りだった、あの頃の暗くて狭い世界には……もう……


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