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第35話ー春の訪れー

「禁止令?」


風呂から出て、ジルとベッドに入る。


「あぁ、俺の部屋や風呂場に女を送るのは禁止させる。」


ついさっきの女の事を思い出す。ハッキリと見た筈なのに、もう顔さえ覚えていない。


「ジル以外の女など、俺にとってはどうでも良い。皆、一様に同じ顔で同じ作りにしか見えん。」


ジルがクスクス笑う。


「笑い事では無いんだぞ?」


言うとジルが俺の胸板に頬擦りする。


「私は心配していません、あなたが私を愛してくれている事は分かってますから。」


ジルの頭を撫でる。


「あぁ、そうだ。だが、不快だ。」


またジルがクスクス笑う。


「それでは、そのように、国王陛下。」


俺は笑って言う。


「あぁ、そうするさ、王妃殿下。」



翌朝、俺は朝早くから家臣たちを呼び出した。


「お前たちを呼んだのは、昨日の夜這いについて、だ。」


俺は目を光らせた。驚く者がほとんどの中で一瞬だけ目を伏せた者が居た。


「エリオット、何故、目を伏せる?」


エリオットは最近、王城に召し上げられた貴族だ。エリオットはその場にひれ伏す。


「国王陛下!申し訳ありません!」


やはり、か。


「何故、風呂場に女を送った?あの女は何者だ?」


聞くとエリオットが言う。


「あの者は私の娘にございます…」


自分の娘を国王である俺に献上する気だったか。


「目的は何だ?」


聞くまでも無いが一応問う。


「国王陛下が王位を継承されてから、もうふた月でございます。それなのにまだお世継ぎの知らせは届かず、少しでもお役に立てれば、と。」


俺は持っていた杖をドンッと床に突く。


「役に立つだと?」


辺り一帯の温度が上がる。


「これは謀略か?マクリー。」


宰相であるマクリーは俺の横に立ち、ルビーのあしらわれたマント留めに手を当て、言う。


「そうですな、陛下。」


エリオットは首を振る。


「謀略などとは!」


俺はまた聞く。


「どう思う?騎士団長。」


マドラスもルビーのあしらわれたマント留めを撫でながら言う。


「由々しき事態です。」


俺はエリオットを見る。


「だ、そうだぞ?エリオット。」


そして溜息をついて、その場に居る家臣全員に告げる。


「この場に居る全員に告げる。今後、このような愚行をした者はどのような理由があろうと極刑になると思え。」


そして立ち上がりながら言う。


「連れて行け、二度とその顔を見せるな。」



秋口、収穫祭が王城にて執り行われた。王城を会場にしての大規模な夜会だ。俺はジルと揃いの服を誂えた。王ともなれば、夜会の最中はずっと席に座り、夜会を眺めながら食事したり、挨拶に来た者に挨拶を返す、やる事はそれぐらいだ。


退屈だ、そう思った。


「ジル、おいで。」


そう言ってジルの手を引く。


「良いの?抜け出すなんて。」


俺は玉座から裏側へ入り、夜会会場のすぐ隣の部屋にジルと入る。そこは少しの間、休憩出来る作りになっていて小さなソファーとテーブルくらいしか無い。扉を閉めてすぐジルを抱き寄せて口付ける。舌が絡み合うと、我慢が出来なくなる。ジルの体を撫で、背中のホックを外す。


「ダメよ、テオ…」


唇を離してジルが言う。俺は自身の下半身をジルに押し付け、ジルの手を誘導し、それに触れさせる。


「こんな状態じゃ、戻れないだろ…」


ジルは顔を赤くして俺を見上げる。


「でもこんな場所で…」


羞恥心、それが俺たちの間ではスパイスにしかならない事を俺は知っている。


「どこだろうと関係ない…」


ジルの体の向きを変えさせ、開いたドレスの隙間から手を入れジルの胸を鷲掴みにする。


「んっ…」


ジルの口から声が漏れる。


「声出すなよ?聞こえてしまう…」


ジルの目の前には夜会会場へと繋がる扉。その扉にジルは手をついて俺の愛撫に体を震わせている。ドレスをたくし上げ、ジルの足の間に手を入れる。


「あぁ、濡れてる…」


そこを愛撫しながら俺の頭は既に痺れていた。俺は着ていた服からそれを解放し、ジルの足の間にそれを押し付ける。


「…んっ…」


ジルが小さく声を出す。


「シーッ。」


そう言って俺は俺のそれでジルのそこを擦る。ジルが俺を見て、小さな声で言う。


「挿れて…」


そう言われて俺はそれを押し込む。


「…!!」


ジルの耳元に口を寄せて囁く。


「入ったよ…全部…」


ジルの腰を引き寄せて、一番奥に押し付ける。ジルの息が浅くなり、中がキュウッと締まる。


「あぁ、ジル…すごい締め付けだ…」


囁くとジルが体を震わせる。


「あ…ダメ…」


そう言われて我慢が出来なくなる。ゆっくりと音を立てないようにジルの中を抉る。ジルは身体を仰け反らせ、ビクビクと身体を震わせる。扉一枚向こうは夜会会場。玉座に行くまでの通路があるにしても、すぐ外にはおそらく何人かが立っているだろう。ジルの中を抉りながら、背筋がゾクゾクする。繋がったまま、ジルを抱え、向きを変える。すぐそこにはソファーがある。ソファーにジルを乗せて、四つん這いにさせる。音を立てないように突く。ジルは必死で声を我慢しているせいか、中が良く締まる。息を切らし、ジルに覆い被さる。腰を押し込みながら抱き締める。


「あぁ…ジル…愛してる…」


耳元で囁く。


「テオ…もう…」


ジルの体が強ばる。あぁ、イキそうなんだ、そう思った。


「イッて良いよ…俺も…イキそうだ…!」


キュウッと中が締まる。腰を押し込み押し付ける。背筋がゾクゾクする。


「イ…ク…」


ジルがそう小さく言うのと同時に俺の熱い飛沫が噴き出す。


「あっ…!」


ビクンとジルの体が跳ねてガクガクと震える。ジルの中がヒクヒクと甘く痙攣する。その甘い痙攣を味わうように腰を抉るようにゆっくりと動く。



会場には俺だけ戻り、夜会をお開きにした。休憩室に居るジルをマントで包み、抱き上げる。



その冬、前王妃殿下が無事に男児をご出産された。



籠の中で眠る小さな命。髪も瞳も兄上譲りだ。


「抱いてくれても良いのよ?テオ。」


セリーヌ前王妃にそう言われたが俺は辞退した。


「いや、止めておきます。初めて抱く赤子は自分の子が良い。」


セリーヌ前王妃は微笑み、言う。


「本当にジルを愛しているのね。」


そして笑みが漏れる俺を見て、セリーヌ前王妃はハッとする。


「もしかして!」


俺は口に指を立てる。


「まだ秘密です。」



不思議な気分だった。お腹に手を当てる。ここにテオとの子が居る。まだ実感は無い。それでも何か気泡がお腹の中をくすぐる感じはする。



妊娠が分かったのはつい先日の事。それまでは無かった目眩を感じてフラついたり、胃がムカムカして食べられなかったり、吐き気がしたりしていた。初めは風邪だと思っていた。そんな私の体調の変化にいち早く気付いたのはメアリーだった。


「ジル様、もしや…」


メアリーにそう言われてハッとする。メアリーは急いで侍医を呼ぶ。



その日の夕刻、私はテオと共にテラスに立つ。


「テオ、お話があるの。」


言うとテオは優しく微笑み聞く。


「ん?何だい?」


私はテオの手を掴んで自分の臍の下辺りを触らせる。


「赤ちゃんが…」


言うとテオは驚き、そして笑顔になる。


「本当か!」


私が頷くとテオは私を抱き締める。


「あぁ、何て俺は幸せ者なんだ!」


そしてテオはハッとして私に言う。


「ダメじゃないか、テラスなんて!冷えたらどうする!」



そこからはテオの甘やかしモードがずっと続いた。テオが王位を継いでからというもの、王国は平和そのものだった。隣国との関係は良好で、その手腕は前国王陛下のようだ。



寒い冬が終わり、春の訪れと共に、私のお腹もかなり大きくなった。今日はテオが花でいっぱいの中庭でのピクニックに誘ってくれた。手入れされた芝生に座り、いつものように私を膝の上に乗せるテオ。


「俺は幸せ者だ。」


テオはそう言いながら愛おしそうに私のお腹を撫でる。


「私の方こそ。」


そんなテオの頭を撫で髪を梳く。さらさらと揺れる銀髪が時の流れを教えてくれる。始まりはこの王城


での婚約破棄だったな、とふと思い出す。


「ねぇ、あなた。」


呼びかけるとテオが私を見る。


「ん?」


私はそんなテオの頬に触れる。


「この子が産まれたら、セリーヌ様のお子様と兄弟のように育てたいわ。」


テオが微笑む。


「そうだな。」


テオは私の手に口付ける。


「あなたとあなたのお兄様のように、互いを支え合える、そんな兄弟に。」


テオが私の頬に触れる。


「全く、君という人は。」


首を傾げテオの手に頬擦りして聞く。


「なぁに?」


テオはその手を私のうなじに伸ばし引き寄せると、私に口付け、そして言う。


「いつも一番欲しい言葉を俺にくれる…さては俺の心を読んでいるな?」


そんなふうに言うテオが可愛く感じてクスクス笑う。温かい風が吹き抜ける。


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