その身は鉄格子に閉じ込められ、その手足は手錠で拘束され、その思考は薄い空気によっておぼろげになる。
ああ、なんと無為な生涯か。
傀儡を許容したのは、その檻に入ろうとしていたのは自分自身。なのに、どこかで助けを願っていて、どこかで自分を壊して欲しくて、形ばかりの栄光を幾度となく振りかざし続けた。
だからあの時、あの情熱的な終わりを前にした"ボク"は思わず笑ってしまったのだろう。
◇
「……なぁ真才、赤利は……」
「?」
「──赤利は……"答え"が欲しいのだ」
天竜との交代を行う少し前の待機室。天竜の活躍をその目で見ていた赤利は、差し迫る隘路を自覚するように真才へその問いをぶつけた。
「赤利にとって、この戦いは何かを得るための戦いじゃない。何も失わないための戦いなのだ。だから勝つことに執着してるし、ただ勝てばいいとも思っている。……でも、オマエ達はそうじゃない」
慟哭の果てに、赤利はその手を胸にあてて訴える。
「オマエも天竜も、この戦いで成長している。今あの場で天竜と対峙しているカインでさえ自分の限界を超えた将棋を指せている。……なのに赤利は、この戦いで何かを得たわけじゃない。ただ消化して、進めて、繋いできた。勝利に向かって歩んできただけなのだ」
赤利はアリスターたちに聞こえない声量で呟く。
そのやり方は決して間違いではない。精一杯のやり方で、自分にできる限界の戦い方で、勝利のために戦ってきた。
それ以上を望むのは単なる強欲であり、それ以上を得ることに価値があるのかすら定かではない。
ただ、自分だけが置いて行かれたような気持に苛まれた赤利は、過去の自分と目に映るほどの決別ができている感覚がない。
県大会の敗北を経て、今の青薔薇赤利は完成されつつある。
しかし、完成とは終わりを意味する言葉でもあり、それ以上先がない証左でもある。だからこそ不安は増大し、自分だけが止まっているかのような焦燥感を覚える。
──憂うような、哀愁の影が言葉に滲み出てしまっている。
赤利が何を欲しているのか、その答えが一体何を指しているものなのか。そんな婉曲から降り注ぐ形のない問いかけに、真才は静かに口を開いた。
「……これは俺の持論。だから発言に責任は持てないけど、それでもいい?」
赤利はコクリと頷いた。
「そもそも人は、努力をすることで無限に成長できる生き物じゃない」
真才は初めにきっぱりとそう言い切る。
「ゲームみたいにレベルが上がって、それで分かりやすく実力が伸びるなら誰も苦労はしない。現実は努力の結果が数値化されているわけでもなく、どこが限界なのかを知ることもない。だから自分のレベルが
無駄な努力。そんなものはないと告げる多くの先人たちを否定するように、誰よりも
「……努力の上限は、人によって違うのか?」
「そうだね、違うと思う。そしてきっと、それを世間一般では"才能"と呼んでいる。才能のある人は勉強すればするほど強くなるし、才能のない人はいくら勉強してもすぐに頭打ちになる。努力をする人は努力をしない人に勝てるだけで、同じように努力した人には勝てるとは限らない。そこで差をつけるのは結局のところ個々人が持つ才能の理不尽なぶつかり合いで、青天井に強くなっていける人だけが勝ち残るようにできている」
残酷、しかし現実。強さとは何事においても絶対的な指標として君臨するが、同時に千差万別の道から辿られていく軌跡であることを忘れがちである。
両手を後ろについて座り、足を延ばしながらおもむろに上の空を向く真才。
将棋が取り柄だった真才には、将棋の才能がなかった。それは自らが挑むべき競技への限界がハナから決まっており、それ以上先には進めないと確定している人生でもあった。
──『そんなことはない』。『努力が足りないだけだ』。そう後ろ指をさして告げる者達の声を、誰よりも肯定したかったのは真才自身である。
もっと努力すればいい、もっと頑張ればいい。今勝てないのは努力が足りないだけ、これ以上先に進めないのは他の人よりも研鑽を積んでいないだけ。
……だからきっと、たくさん努力したら勝てるようになる。
そう思いながら一切の実績を残すことなく父の他界を見送ることになった真才は、その努力という行為が何よりも人を裏切る言葉であることを知ってしまった。
そんな真才が今、こうして"成長"を遂げているのは、ひとえに何かを積み上げ続けてきたからではない。
「俺は──」
話の続きを聞きたそうに沈黙している赤利に、真才は自分がこれまで経験してきた人生の中でようやく生まれた"回答"を赤利に告げる。
「……俺は、"変化"することも成長のひとつだと思っている」
赤利は口元に指を添える。
「それは……居飛車を得意とする者が、振り飛車も使えるようにする。とかか?」
「それも確かに変化だろうね。でも、それはその人が持つ武器を変えただけだ。悪く言えば誰にでも取れる変化だし、あくまで選択肢の1つでしかない」
単なる変化では意味がない。相手もできる変化では意味がない。それはイーブンであり、ドローである。相手も選択できる手札を切ったところで、相手を上回る何かを得られるわけではないのだから。
「じゃあ、真才が考える変化ってなんなのだ? 赤利がここからもっと強くなるためには、成長していくためには、どう変化すればいいのだ……?」
赤利は問いかける。これまで迷いのなく突き進んでいた瞳の奥に、何かを掴みたがっている焦燥が見え隠れしているのを悟られないように。
真才はその視線を受け止め、少し考え込むようにして軽くあしらった。
「──そんなの、俺が知るわけないじゃん?」
「……え?」
きょとんとした赤利の丸く小柄な顔が真才の瞳に映る。
「俺がこの大会で自滅流を使わずに戦ったのも変化だし、天竜が左手で指すのをやめて右手で着手し始めたのも変化のひとつだ。でもそれは、その人だけが意味を為す変化であって、今の赤利が同じようにしたところで意味はない」
「なら、赤利は……今の赤利は……もうやることをほとんど終わらせて……」
既にレベルの限界に達している、頭打ち状態である。
そう思っている赤利に、真才は首肯しながらも否定の言葉を返した。
「愚問だね。そもそも変化とは『変わること』だ。今の自分を『より良くすること』じゃない。それはあくまで進化のことだからね。進化は理想の体現だけど、言ってしまえば成長の結果であって、成長の本質じゃない」
そう、変わることとは常に良いことではない。
真才が自滅流を使わないで戦うということは、自分の得意戦型を封じるという一種のハンデを背負うことでもある。、天竜がイップス状態になっていた右手を使って指し始めるということは、それに伴う様々な弊害やトラウマの併発を呼び起こす危険性があるということでもある。
それで悪い方向に向かってしまえば、後になって変わらない方が良かったと思うことも多々あるだろう。
だから、変化に良し悪しを求めてはならない。
それでも変化を求めるのは、頭打ちになった現状を打破するための究極的な手法であり、嵐に飲まれてもなお前に進めるかの覚悟を問う選択でもある。
そんな中で一歩、その先に一歩だけでも前に足を進めることができたのなら、それは限界だった自分の壁を別な角度から越えたことになる。
だから真才は"変化"をし続けた。限界の壁にどうあがいても越えられないと気づいた時、現状の自分が形作っている『完璧な自分』を壊して前に進む覚悟を選択し続けた。
例えそれで過去の自分より実力が落ちてしまおうとも、その先に進む道の先で何も得られない無駄な結果になってしまったとしても、再びスタートラインに立てるまで何度でも努力を重ねて一歩だけ前に進む。そこでまた躓いてしまったのなら、再び別な手法を取り入れて、その時の完成された自分を切り崩す。
そうやって進んでいき、止まることなく、ただひたすらにずっと進んでいった。
──それが、真才にとっての"努力"の果てにある結論である。
「……」
今の赤利が言い表せない何かにもがいている、そのモヤモヤの正体は、かつて真才が躓いていた限界の壁そのもの。
これまで積み上げてきたありとあらゆるものを整理し、並び替え、綺麗に建て替えることで『完璧な自分』を創り上げた。
赤利に足りなかった最後のピースは瑞樹夢野が示唆していた"敗北"である。勝つことに執着しながら、勝つことに飽いてしまったその鼓動を叩き起こす、その確かな衝撃を敗北から得ることができた。
ゆえに、今の青薔薇赤利は完成されつつある。個人がたどり着ける最後の境地に立っている。
だからこそ、そこで止まってしまうのが怖いのだろう。それ以上先に何も見えてこないことが不安を煽るのだろう。
かつて、父親のために必死になって研鑽を積んできた真才がどうしようもない壁にぶつかってしまった時と同じ、棋力の限界が見えている。
(まるで、昔の自分を見ているみたいだな)
……だが、忘れてはならない。
変化を続けた今の真才は、その壁をとうに越えている。
「まぁ、身もふたもないことを言うのなら」
「いうの、なら……?」
首を垂れながら上目遣いで見つめてくる赤利。
そんな赤利に、真才は両手の人差し指を頬にあてると、少しだけつり上げて笑顔を作った。
「────にっ」
不器用な笑顔が、赤利の前に作られる。
赤利は瞠目して何も言えずに硬直していると、やがてその"笑顔"の意味を理解した。
──あの時みたいに、
「……ふ、ふふ、ふふふっ……笑わせるな。なのだ」
赤利は泣きそうな声で口角を上げると、立ち上がって目元を拭った。
その時、交代を知らせるブザーが鳴る。
「──行ってくる」
「うん、頑張って」
いつものように軽快な足取りで出ていく赤利に、真才は香坂賢人の面影を感じ取る。
──その後ろ姿に、凱旋の覇気が纏い始めていた。
※
他力本願の成就。空っぽの器に入る夢。自動で進んでくれるレールの上から降りた景色は、何もかもが止まって見えた。
将棋における最強の駒である『飛車』を捨てる。その衝撃は、見ている者全員が口を開けてしまうほどに衝撃だった。
【『WTDT』ワールド・ザ・ドリーム・タッグ生配信板part17】
名無しの66
:えっ?
名無しの67
:え、捨てた……?
名無しの68
:え
名無しの69
:飛車捨て……?
名無しの70
:ん? これなんの飛車捨てだ……?
名無しの71
:???
名無しの72
:え、もしかして秒読みに追われて本当に飛車捨てちゃった?
名無しの73
:??????????????
名無しの74
:……秒数0になってるんだけど、これラグ?
名無しの75
:さすがに棋譜ミスやろ……
名無しの76
:いや、捨ててるで
名無しの77
:解説陣固まっとるww
名無しの78
:棋譜ミスだと思いたい
名無しの79
:ごめん、俺にはこのタダ捨ての凄さが分からない
名無しの80
:え? なに? これガチミス?
名無しの81
:やっばwwwww
名無しの82
:え、ガチで飛車捨てたの!?
名無しの83
:やらかしたああああああああああああああああああああああああああ
名無しの84
:うわああああああああああああん!!
名無しの85
:( ;∀;)
名無しの86
:なに? え? どうなってるのこれ? 何この飛車捨て
名無しの87
:三岳六段が解説してるぞ
名無しの88
:あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
名無しの89
:解説聞く限りガチでミスしたっぽいな
名無しの90
:棋譜じゃなくて生配信の方を見れば分かる
青薔薇が秒読みギリギリで着手したのもあって間違えて飛車捨てを選んだっぽい
名無しの91
:三岳六段の解説によると時間ギリギリでミスったらしい
名無しの92
:秒読みに追われて飛車捨てちゃったっぽいな
名無しの93
:マジで……?
名無しの94
:そんなことあるのか……
名無しの95
:赤利ちゃん頭真っ白になっちゃって飛車捨てちゃったってこと?
名無しの96
:うわまじかよ……でもなんでよりによって飛車なんか……
名無しの97
:はぁぁぁあ!? 仮に間に合わなかったとしても飛車捨てはねーだろw
名無しの98
:>>96-97 飛車で王手したかったんだと思う
名無しの99
:>>96-97 飛車打ちで王手するつもりだったんやで
名無しの100
:映像見る感じ口で申告する間もなかったっぽいなこれ、対局時計が残り1秒って表示されてからほぼ1秒以上経ってるし、完全に0秒コンマの状態で押したっぽい
名無しの101
:一応対局規定では指で位置を示すなり口頭で棋譜を告げるなりすれば着手として認められてるが、ボタン叩くのに必死でそれすらできなかったんやろな
名無しの102
:うわぁ……終わりだよ……今評価値何点ですか?
名無しの103
:『評価値』先手+6・互角
名無しの104
:>>103 オワタ
名無しの105
:>>103 天竜が得た2500点一瞬で吹っ飛んでて草
名無しの106
:>>103 はぁぁぁぁ…………
名無しの107
:>>103 これはアカン
名無しの108
:>>103 この互角は精神的にヤバい互角、赤利ちゃん今頃ショックで何も考えられてなさそう
名無しの109
:>>103 これはヤバいだろ……
青薔薇ってまだ学生だったはずだし、カイン以上にショック受けてそうやな……
名無しの103
:うーん、これはまずいよ赤利ちゃん……
※
「──────────はっ!?」
ハッとしてジャックは次の手を急いで指し、対局時計のボタンを押す。
あまりの衝撃に秒読みの時間を全く体感できず、一瞬で過ぎ去ったその時間で本来得られるはずだった先読みをし忘れてしまう。
(クソ! なんなんだ今の!?)
そう思っている間にも赤利は平然とした様子で王様を逃がし、ジャックが仕留めるはずだった攻めの起点を逸らされてしまう。
そして軽くボタンが押され、再びジャックの手番になる。
(はぁ!? な、何? なんでそんな平然としてんだ? 飛車捨てたんだぞお前!? なんだ? 俺が間違ってるのか? 俺が何か見逃してるのか? 今の飛車捨ては取って正解だったのか? それともわざとなのか? ミスなのか? ミスならなんで動揺してねぇんだ!? ポーカーフェイスのつもりか? 俺の油断を誘ってるのか? それともやっぱり今の一手に何か意味があるのか!? 相手は青薔薇赤利、神童だと呼ばれながらも定跡をよく指す堅実な棋譜が多かった。そんな奴がこんな意味もない飛車捨てをやるような狂人じゃねえ! 絶対何か狙いがあるはずだ、なら狙いはなんだ? 今の飛車捨てにどんな手品が混ざってんだ? それとも交代か? 交代した後の局面を見越した手なのか? 十数手後に何かが起こる起爆剤なのか? それともやっぱりただのミスなのか!? さっきの『要らない』ってなんなんだよ! どういう意味だよ! 何か深い意図があるのか? やっぱり俺が何か見落としてるのか? 考えすぎなのか? どうなってんだ、なぁ一体どうなってんだよ!?)
「フーッ、フーッ……!?」
加速された脳内の処理速度が超過し、ジャックの思考がミキサーにかけられたかのようにかき乱される。
この土壇場で飛車をタダ捨てした上、それを悔いることもしない赤利の目的が全く理解できない。
これを見ている者は一体どんな反応を浮かべているのだろうか? 日本中の視聴者、会場の観戦者、解説者の反応。一体何がどうなっているのか、彼らはこのあまりにも衝撃過ぎる手を見てどんな反応を浮かべているのか。
分からない、ジャックは何も分からずにいた。
この張り詰めた状態で、絶対にミスできない状況で、さらには自分の形勢が必勝態勢という状況である。
これは世界の戦いなのだ。WTDT杯という世界を股にかける、アマチュア同士の頂上決戦にも等しい戦い。
それはプロの域に最も近いとされる戦いで、どんなに修羅場を体験したものでも緊張を余儀なくされる大注目の戦いである。
そんな状況で単に飛車を捨てるなど、時間がないからと宙に飛車を放り投げて運命を託すなど。
──人間が指せるはずがない。
(クソ! 考えてたこと全部吹っ飛んじまったッ!!)
まさか飛車を捨ててくるなど想定しているわけもなく、ジャックは手順に飛車を取ったせいで形がやや崩れ、それによってこれから繰り出そうとしていた攻めの形が形成できなくなり、1から考え直すことを余儀なくされる。
しかし、秒読みとなった状態でそんな悠長に考えている時間があるはずもなく。
「
また残り時間ギリギリのところで手を指し、対局時計のボタンを押す。
しかしその手は中途半端に考え付いた手で、ジャックは再び最善からその思考を遠のかせてしまう。
結果、赤利から見てジャックの指し手は凡手に落ち、その思考の先を誰よりも早く読み切ることができる。
……赤利は、笑っていた。
(自由に、楽しく──)
天竜の築いた勝勢を軽々と捨て、それによってジャックが展開していた流れを完全に自分のものにする。形勢は元に戻ってしまったが、失った形勢は取り戻せばいい。
──そう、取り戻せばいいのだ。
「あははははっ!」
どんなに過程が悪くとも、どんなに過程が非難されようとも。
──最終的に勝てばいい。
(天竜には悪いけど、この土台は不要だ。だって、こんなにも鮮明に
枷は外れた。激情が解き放たれた。
なんて奔放で、なんて自由気ままで、なんて自己中心的な思想か。
効率の欠片もない。積み重ねることの大切さが微塵もない。
しかし、その純真こそが青薔薇赤利の真骨頂──"天真爛漫"たる所以。
天才が振るう戦斧に、凡人の手ほどきなど余計でしかない。
天竜が最善に特化するのであれば、赤利は自由に特化する。天才にしか許されない理不尽極まりない感性の波。それが今、赤利の心から湧き上がる。
「手が……読めねぇ……ッ!?」
これまでずっと正道を歩み続けてきた"青薔薇赤利"という人間を完全に壊す、めちゃくちゃな指し回し。
悪手なんて生温いものじゃない。それが本当に悪手なのか、はたまた妙手なのか、それとも最善手なのか。分かることはただひとつ。──青薔薇赤利の指す手に対する読みがあまりにも常識と噛み合わない。
(なんだろう、この感覚……すごい頭がスッキリする。手が浮かぶ。加速する。読みが止まらなくなる……!)
自滅流という邪道の一端に触れて、既にその枷には傷が入っていた。だから後はもう、自ら壊して外すだけだった。
正しいことは正義であり、正しい手を指すことは勝利において最も重要な考え方である。
──そんな鉄格子に追いやられて、どうして天才の全力が発揮できようか。
青薔薇赤利の本質は、その強烈極まりない自我の本流である。自己中心を貫いた先にある忘我の果てである。
正道という『型』に嵌められ閉じ込められていた気持ちが、この絶対に負けられない局面で『飛車を捨てる』という行為によって爆発した。
もはや止める者など誰もいない。止まることもない。生まれてこの方ずっと溜め込んできた『自由』という怪物が赤利の指し手から解放されていく。
もう、止まらないのである。
これには、三岳六段もあまりの驚愕に素の声を出さざるを得ず、その様子をリアルタイムで観戦していた沢谷由香里は赤利の飛車捨てにお茶を噴き出し、青薔薇翠にいたっては──。
「う"、そ…………?」
と、口から聞いたこともない声を漏らしてしまうのだった。