【『WTDT』ワールド・ザ・ドリーム・タッグ生配信板part9】
名無しの87
:青薔薇が負けてんの草でしかない
名無しの88
:メアリーがしくったせいだろ
名無しの89
:プロ棋士じゃないとはいえ仮にも日本代表でこれかよ
名無しの90
:弱すぎだろ
名無しの91
:凱旋道場も落ちたな
名無しの92
:天外がどれだけキーパーソンになっていたか知ったわ
名無しの93
:これ日本初敗北?
名無しの94
:>>93 来週が本戦
名無しの95
:>>93 今日は試合形式の確認のための練習対局で本戦は来週
名無しの96
:練習ならまだワンチャンあるやん
名無しの97
:>>96 凱旋にとって練習でも敗北はアウトだから全員本気で戦ってる、それで負けた
名無しの98
:>>96 全力で戦って大敗してんのよ
名無しの99
:>>97-98 マジで?じゃあ終わりじゃん!
名無しの100
:日本舐められて終わるわ
名無しの101
:ミリオスからしてみればカモだったんだろうな
それくらい大敗で凱旋が負けた
名無しの102
:青薔薇もメアリーも弱いわけじゃない。ただ息が合ってなかっただけ
名無しの103
:今までは天外が二人の指し手をコントロールしてたんだろうな
名無しの104
:そう考えたら天外ヤバくね?
名無しの105
:天外戻ってきてくれ、頼む……
名無しの106
:今帰省中だろ、そっとしておいてやれ
名無しの107
:つっても他にマシなメンバーいるか?
名無しの108
:別に日本のアマチュアであれば誰でもいいんだけどな、規定上は
名無しの109
:そうなの?じゃあ全国大会優勝した奴らで組ませればいいじゃん
名無しの110
:>>109 そんな簡単な話じゃない
名無しの111
:>>109 理想はそうかもしれんが、凱旋は孤高の道場で他との繋がりはないし、この大会は顔出しで配信までされるからそういうのがイヤだと厳しい
名無しの112
:>>109 全国大会優勝してるの銀譱門下が多いけど、あそこは凱旋とは仲悪いんじゃなかったっけ
名無しの113
:ほーん、簡単にチーム組めるわけじゃないんやな
名無しの114
:元々はプロ棋士に戦わせるつもりだったけど、プロ棋戦と別扱いでは難しいってことでトップアマ道場の凱旋に一任してるわけだしな
名無しの115
:『速報』WTDT 日本陣営、本戦に向けてメンバー変更
名無しの116
:>>115 妥当
名無しの117
:>>115 知ってた
名無しの118
:>>115 これはしゃーない
名無しの119
:>>115 とはいえ、他にいるか?
名無しの120
:>>115 取り敢えず青薔薇は固定やろうな、残り2人どうするか
名無しの121
:>>120 もう1人は引き続きメアリーやろ
名無しの122
:>>121 メアリーは厳しいと思う
名無しの123
:>>121 メアリー実力はあるけど最善に固執しすぎてるから、我が強すぎる青薔薇とは相性悪い
名無しの124
:うーん、誰と組んでも青薔薇の指し方を邪魔することになると思う……
名無しの125
:青薔薇単体の実力はミリオスより上のはずなんだけどな、力が強すぎて仲間がついてこれないという
名無しの126
:どうしたもんかね……
WTDTの練習試合が終了し、それを配信として見ていた者達は日本陣営の敗北に落胆の感情を抱いていた。
練習対局とはいえ、その差はあまりにも歴然。勝機への光明がひとかけらもないほどの大敗に、本番で勝てる要素が全く見つからない。
普段からアマチュアの対局を観戦しているマニアックな『
あの凱旋道場が簡単に破れるという衝撃の事実。今まで勝てていたのは単純な棋力の差が大きかっただけで、互角の相手には個々の特性が主張しすぎている凱旋道場の面々では太刀打ちできないと理解させられてしまった。
将棋は一人で戦う競技であり、誰かの協力を得ることはない。今回の戦いではかえってそれが弱点となっている。
どうするべきか。いや、どうしようもないんじゃないか?
そんな不安を募らせる者達がいる中、赤利はその後、天竜一輝の自宅に訪問していた。
「頼む! このとーりっ! オマエの力を貸して欲しいんだっ!」
赤利は両手を合わせて天竜にWTDT杯への出場を願い出る。
しかし──。
「……悪いけど遠慮させてもらうよ」
「どうしてだ!?」
「どうしてって……出る意味あるのか? その大会」
「それは……」
天竜の言葉に赤利は言い淀んでしまう。
「俺だって暇じゃない。それに、もうすぐアマ名人戦だって控えてるんだ。自ら手の内をばらすようなことをするつもりはない」
ぐぬぬ……と赤利は歯を見せる。
「……真才は手の内をばらしたぞ」
「俺の倒すべき相手はその渡辺真才だ。今後彼と戦う場合、今ここで俺の実力を見せるのは悪手に繋がる」
「他は見ていないのか?」
「ああ、渡辺真才の他に強敵はいないよ。一人を除いてな」
その一人が誰なのか聞きたくもあったが、それが自分でないことを悟った赤利は視線を落とした。
「……そうか、分かったのだ。じゃあまた明日来るのだー!」
「話聞いてた?」
天竜が問いただす間もなく、赤利は玄関から飛び出すように去っていった。
天竜はそれを眺めながらため息をつく。
「やれやれ、頑固なところだけは年相応だな」
そんな天竜の後ろから麗奈が声を掛ける。
「いいんじゃない? 出場したって」
「ダメだ。今は潜伏期間なんだから。ここで変に実力を見せたら、それを上手く利用した彼に負ける姿が想像できる」
「弱気ね」
「強気だよ。勝つつもりでいるんだから」
「でも凱旋と組める機会なんて
麗奈の言葉に天竜は首肯する。
そこを否定するつもりはない。凱旋道場の面々と戦うことなく手を組む。それは非常に珍しい機会であり、楽しそうな展開でもある。
「仮に俺が入ったとして、青薔薇赤利、天竜一輝、そしてメアリー・シャロンか」
「いいメンバーじゃない」
「……負けるな、確実に」
「そうね」
麗奈は驚くこともなく天竜の言葉に同意する。
「負ける可能性のある戦いに挑むことは成長には繋がるが、負ける要因が分かっている戦いに挑むことは無駄でしかない」
「メアリーは結構強いわよ? あの渡辺真才に勝った来崎夏を追い詰めたんだから」
「俺に勝ちうるくらいには成長したか?」
「それは無理ね。今の師匠に勝てるのはそれこそ香坂賢人くらいよ」
「なら結果は変わらない。俺は辞退する。──最も、俺に相応しいメンバーを寄こすのなら話は別だがな?」
そこまで口にした天竜は、はっとして自分の中にひとつの可能性を生み出す。
そして、晴れた空を見上げて苦笑した。
「…………いや、さすがにないよな……」