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第百五十七話 日本vs海外

【『WTDT杯』ワールド・ザ・ドリーム・タッグ生配信板part8】


 名無しの561

 :いまきた、WTDT杯どうなってる?


 名無しの562

 :>>561 ボッコボコ


 名無しの563

 :>>561 終わりだよ


 名無しの564

 :>>561 先手+2685


 名無しの565

 :お、やっぱ凱旋が圧勝してるんだ?


 名無しの566

 :>>565 ちげーよ


 名無しの567

 :>>565 逆


 名無しの568

 :>>565 凱旋が-2000点だよ


 名無しの569

 :>>565 凱旋道場ボコボコにボコられてる


 名無しの570

 :えっ、マジで……?


 名無しの571

 :終わりだよ凱旋


 名無しの572

 :アリスターが強すぎ定期


 名無しの573

 :うーん、レべチ過ぎるっていうか


 名無しの574

 :ここまでボコボコにされると面白味もないな……


 名無しの575

 :『評価値』ミリオス 先手+4388


 名無しの576

 :>>575 あぁ……


 名無しの577

 :>>575 終わった


 名無しの578

 :>>575 凱旋悪手指し過ぎ


 名無しの579

 :>>575 なんでこんなボコボコにされてんねん


 名無しの580

 :>>575 ミリオスやりたい放題じゃん


 名無しの581

 :>>575 これでもまだ耐えてる方、アリスターの番に回った瞬間終わる


 名無しの583

 :今カインだよね。あと何手でアリスターに交代になるの?


 名無しの584

 :>>583 2手


 名無しの585

 :>>583 2手や


 名無しの586

 :あ、交代になった


 名無しの587

 :はい終わり


 名無しの588

 :アリスターTUEEEEEE


 名無しの589

 :赤利ちゃん……


 名無しの590

 :青薔薇ボッコボコで草


 名無しの591

 :もう終わりだよこのチーム


 名無しの592

 :『評価値』ミリオス 先手+5019


 名無しの593

 :終わったね


 名無しの594

 :これはもうムリ


 名無しの595

 :どうしてこうなった


 名無しの596

 :あのさぁ……隆明さぁ……


 名無しの597

 :凱旋道場がチームとしてバラバラすぎる


 名無しの598

 :日本負けちゃう


 名無しの599

 :もう負けだよ


 名無しの600

 :ここまで惨敗する青薔薇見たことないかも


 名無しの601

 :やっぱ凱旋じゃ無理だって


 名無しの602

 :アリスターって前にもWTDT杯出てたよね?その時は負けてなかった?


 名無しの603

 :>>602 あの時の凱旋道場には愛染と瑞樹がいたからね


 名無しの604

 :>>603 その二人呼べばいいじゃん


 名無しの605

 :>>604 いや、その二人はもう既にプロ棋士なんすよ……


 名無しの606

 :逆に言えばプロ棋士になれるレベルじゃないと今の海外支部は倒せないのか


 名無しの607

 :アリスターに関してはもうプロだろこれ


 名無しの608

 :アリスターは運悪く昔の最強だった頃の凱旋と当たったからね、あの時勝ってれば間違いなくプロになってた


 名無しの609

 :カインもジャックも強すぎてお手上げ状態なのに、20手後にはアリスターの番回ってくるの悪夢だろこれ


 名無しの610

 :どうやって勝てばええねん


 名無しの611

 :このレベルの連中をプロ棋士に昇格しなかった将棋界が問題


 名無しの612

 :海外だとどうしてもプロ棋士になるまで大変だからね、わざわざ日本に来ないといけないし


 名無しの613

 :WTDT初めて見るけど、アリスターって誰やねん

  こんな粗暴そうな男が将棋強いんか?


 名無しの614

 :>>613 昨日奨励会員とVSブイエスして勝ってたよ


 名無しの615

 :>>613 遊びで現役の奨励会員倒すレベル


 名無しの616

 :アリスターは日本のアマチュアと比べちゃいかん


 名無しの617

 :奨励会員に勝ってるのかよ……そりゃ強いわ


 名無しの618

 :>>617 しかもその時の相手は奨励会三段な


 名無しの619

 :>>618 バケモノやん


 名無しの620

 :>>618 それもうプロ定期


 名無しの621

 :はぁ、来週のWTDT杯本戦も凱旋道場が負けてミリオスが勝つのかな


 名無しの622

 :日本応援したいけどこの実力差はさすがに厳しいよね




 黄龍戦の敗北を経て1からのスタートとなった凱旋道場。


 アマチュアにおける最大の壁、プロへの登竜門とされるその道場の敷居は、一人の男の手によって呆気なく崩れた。


 青薔薇赤利という天才児を酷使し続けてきた結果だ。その背中は期待を乗せるには小さく、重荷を背負わせるには軽かった。


 見誤ったことは認めなければならない。言い訳をしてはならない。


 たった1敗、されど大きな1敗だ。それだけでボロボロになった凱旋は、再び立ち上がることを強いられる。


 敗北の傷がつこうとも、名が廃れようとも、時が動く以上は次の戦いがやってくる。



 ──酩酊。沢谷由香里の視界がぐらついた。



 中央地区の大きな会場で毎年開催される将棋大会──『ワールド・ザ・ドリーム・タッグ』。


 これは日本陣営に対し海外陣営が挑戦状を叩きつけるという、年に1回だけしか行われない特別な将棋大会である。


 海外陣営は『海外支部』を中心とした各国の代表者を選抜し日本に挑む。という形式になっている。しかし、まだ将棋そのものが世界に普及してそれほど時が経っていないこともあり、海外陣営の実力は本国である日本のプロ棋士にはまだ遠く及ばない。


 そこで、日本陣営はアマチュアから代表者を選抜することにした。


 選抜はアマチュア界のトップ層に名を連ねる凱旋道場の師範、沢谷由香里が出場選手の選抜権利を持ち、実力のあるアマチュアを計三名選抜することで既定の大会への出場が認められる。


 当然、選ばれるメンバーは自身の運営する凱旋道場の面々というのがお決まりである。どこの馬の骨とも知らない他支部の人間を主役にするメリットがない。


 ──そうして今年もまた、その時がやってきた。


 【WTDT】──ワールド・ザ・ドリーム・タッグ杯。


 海外陣営のトップメンバーである『ミリオス』支部の面々が姿を現す。


 たった三名の来日。しかし、その体格や風格はその辺の者とは一線を画すものであり、見るだけで彼らの強者感が身を震わせた。


 対抗するは凱旋道場の代表者三名。青薔薇赤利を軸に上から組んだ最強の面々である。


 準備は万端。いや、いつも通りだ。


「……赤利」


 凱旋は無敗道場として名が知られている。


 それは、どんな大会でも優勝を刻みつけていた歴史があるからだ。


 前年度も、前々年度も、凱旋道場は日本を代表して海外陣営を打ち破ってきた。


 だから、今年も勝てるだろう。


 否、勝てない理由など無い。勝たなければならない。絶対に。


 慢心を抱くほどの余裕は今の凱旋には無い。ただ勝ち続けて復活する兆しを取り戻すため、誰もが必死になって戦いに挑んでいた。


 ──その結果が、これだ。


「……負けました」


 青薔薇赤利の投了によって、WTDT杯の練習試合は幕を閉じる。


 初めて日本陣営が海外選手に敗北した瞬間だった。



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