>自滅帝の飛車不成がヤバい #ライ帝聖戦
>自滅帝の飛車不成みた!? #ライ帝聖戦
>アマチュアが実戦で飛車不成してんのヤバすぎて草 #ライ帝聖戦
>飛車不成通るのえぐすぎだろ…… #ライ帝聖戦
>飛車不成バケモンすぎて草 #ライ帝聖戦
>打ち歩詰め回避まで読み切っての飛車不成、コイツ本当にアマチュア? #ライ帝聖戦
>将棋はルールしか知らないけど、二人の将棋が普通じゃないってのは伝わる #ライ帝聖戦
>こんなんもうアマチュアが指していい将棋じゃないw #ライ帝聖戦
覚醒した来崎の劇的な構想によって、打ち歩詰めという反則の牢獄に閉じ込められた真才。しかし、そんな真才は打ち歩詰め回避の飛車不成というさらにとんでもない一手を指して牢獄を瞬く間に崩壊させる。
来崎の打ち歩詰めを意図的に作る構想ですら常人の枠を超えつつあった。だが、それをさらに超えた真才の一手に界隈は絶頂。将棋民達の中では大騒ぎ状態となっていた。
『【ヤバい】自滅帝とかいう正体不明のアマ強豪www【十段おめでとう】Part42』
名無しの911
:飛車不成とかいうヤバすぎる手を指した自滅帝についてwww
名無しの912
:頭おかしい
名無しの913
:これ素人目から見ても明らかにヤバいやろww
名無しの914
:ライカ→打ち歩詰めになるようにギリギリの受け方で自滅帝の攻めを切らせる。
自滅帝→飛車不成を指して打ち歩詰めを回避。
すまん、コイツら本当にアマチュア?
名無しの915
:>>914 草
名無しの916
:>>914 俺の知ってる将棋と違う
名無しの917
:>>914 日本語でおk
名無しの918
:>>914 やべぇwww
名無しの919
:>>914 良い意味で二人とも頭のネジぶっ飛んでるだろこれ
名無しの920
:>>914 アマチュアの戦いじゃねぇww
名無しの921
:>>914 バケモンすぎる
名無しの923
:>>914 歴史に残るような名局をアマチュア同士で創り上げるな
名無しの924
:>>914 うーん、プロ!w
名無しの925
:>>914 どうしてこんな風になるまでアマチュア界に放っておいたんだ
名無しの926
:でも将棋戦争で相手ぶちのめしてる時の自滅帝はいつもこんなんだぞ。お前人間じゃねぇだろって感じの一手を容赦なく放ってくる
名無しの927
:まぁ自滅帝は今まで正体分からなかったこともあって、アマ界では都市伝説扱いされてたからな
名無しの928
:実際に現れて本気出したらそりゃこうなるわw
名無しの929
:強すぎて笑うしかない
真才の指した飛車不成によって大盛り上がりを見せるSNSや掲示板。
しかし、それを間近で見ていた者達はその比ではない衝撃を受けていた。
「……俺達は、遊ばれていたのか……」
環多流が視線を落として絶望する。
その指し手は明らかな別格。小さな奇跡から生まれ出た指運を瞬く間に粉砕する勢いで神の一手が炸裂する。
誰の読みにも一致しない極限の一手が繰り出され、それに反発するように更なる一手が返される。
覚醒した来崎とゾーンに入った真才。二人の戦いはあまりにも常軌を逸していた。
(……さすがです、真才先輩。あそこでの飛車不成は私も盲点でした。……でも、形勢はまだこちらが優勢──!)
来崎は思考を限界まで研ぎ澄ませ、圧倒的な読みの暴力で真才の攻めを受け止める。
飛車不成という桁外れの読みが入った妙手でさえ、今の来崎にとってはただの一手に相違なかった。
ギリギリの回避、寸前の躱し。しかし、詰まなければその局面は天と地ほどの差がある。
どれだけ危うくても、読み切れていれば安全なことに変わりはない。
あらゆる攻撃の手を読み切った来崎に対し、真才はためらうことなく自らの飛車を切り飛ばす。
(ここに来て無理攻め……?)
さきほどの飛車不成の影響で来崎の王様はギリギリの格好だが、それでも真才の持ち駒では完璧に詰ますことができない。
飛車を切ったことで来崎の守りはさらに削られ、ほとんど丸裸の状態となった。
だが、それでもやはり来崎を詰ますには真才の持ち駒が足りない。
──今、無理攻めを行っても来崎の読みは上回れない。
多くの者がそう考え、真才に対して怪訝な違和感を覚えるものの、もう舐めたりはしない。
この男はいつも自分達の考えを裏切る存在だ。絶対何かを狙っている。
さすがの観戦者達もそう思い始めていた。
そして、──その予想は当たる。
「……!」
真才はさきほど飛車を切ったことで得た
『【ヤバい】自滅帝とかいう正体不明のアマ強豪www【十段おめでとう】Part43』
名無しの19
:what!?
名無しの20
:あ
名無しの21
:あっ
名無しの22
:あ、やばい
名無しの23
:あっ
名無しの24
:あっ……
真才はその後も来崎の陣地を荒らしつつ駒を切り飛ばし、交換して得た金や銀といった金駒を中央に放る。
そこに王様はいない。標的もいない。ただ真っ白な空間が広がっている。
ただし、その手は完全に無意味な手というわけではなく、きちんと来崎の攻め駒を牽制している意味合いがあった。
だが、本質はそこじゃない──。
「まさ、か……」
思わず声を漏らした来崎に対し、真才は自らの王様を強く掴み、持ち上げた。
「しまっ──」
それは常に彼の手の元にあり、誰も邪魔することのできないものである。
どれだけ崩れても、どれだけ消え去っても、
優勢劣勢など関係ない、勝っているか負けているかなど些細な問題。
なぜなら──『それ』が完成したとき、勝負は決するからである。
王は戦場へ向けて旅立ち、難攻不落の天空城を築き上げる。
類を見ず、敗北を知らず、恐怖を背負って行進する。自らの命をもって、相手の命を刈り取る。そんな王の行進が始まる。
──覇の一撃。
(……させないッ!)
(無駄だ)
視界は明滅するかのように弾け、紡がれた思考は粉微塵に破壊される。
バッと顔を上げた来崎は、目の前で信じられないような一手を指してくる真才に恐怖を抱いた。
駒を捨て、評価値を捨て、王様の進軍に全ての手番を費やす。全神経をその戦術に託している。
それは、詰むか詰まないかに気を取られていた来崎の思考をあっという間に上回った瞬間だった。
読みで上回れずとも、思考で上回る。そして、それは他者の思惑を凌駕する。
飛車不成さえ、来崎の思考を誘導するための囮に過ぎない。
だって真才は初めから──『自滅流』を組むことしか考えていないのだから。
(私が、あの一手に気を取られず抑えておけば……自滅流を組ませないことだけに全神経を注いでいたら……)
全てが真才の手のひらの上。
なぜなら真才は将棋を楽しんでいるから。将棋に純粋な楽しみを見つけてしまっているから。
他者の定跡にとらわれず、他者の戦法に依存しない。自身が好きだと思う指し方を突き詰めて将棋を指している。
『
玖水棋士竜人が遺した言葉が来崎の脳裏を過ぎる。
同時に玄水は、目を見開きながら真才の背を誰かに重ねた。
「……まるで生前の玖水棋士の背を見ているようじゃ」
それは刹那であったが、玄水の眼には玖水棋士の影が映っており、かつてはその存在に抱いたであろう童心の輝きを宿していたのだった。