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第223話 彼女が遊びに来る理由1

 まずい、非常にまずいぞ。


「ど、どうですかね? 私、ちゃんと薫さんの相手、できてますか……?」


「おう、おうともよ! いやぁ強くなったなひなちゃん! よぉしよしよし!!」


「え、えへへ……なでなで、もっとしてくだしゃい……」


 夏休み早々、事件が発生した。


 最近ひなちゃんと遊ぶことが多く、今日もこうして私の部屋に呼んで一緒にスマファザ対戦をしていたのだが。


 ついこの間までゲームすらしたことのないドの付く初心者だったひなちゃんが、毎日何時間もプレイしている私に追いつきつつある。


 え、なんでだ。いや確かに一緒にプレイする上で操作方法とかどうやったら戦っていけるかみたいなことは結構教えた。対戦回数も中々のものになってきているし、上達するのは分かるんだけども。


 それにしても流石に早過ぎる。こんなのここでプレイしているだけで上手くなるスピードじゃない。


 はっ、さては────


「もしかしてひなちゃん、さ。裏で何か練習的なことしてたりするか?」


「や、やっぱりバレちゃいますか? 実は薫さんと初めてここでゲームしたあの日の帰り、近所の電気屋さんでSmitch本体とスマファザのソフト買っちゃいまして……」


「早い、いくらなんでも行動が早過ぎるぞひなちゃん!?」


 マジか、実はこっそり裏で買って練習してるんじゃないかってこと自体は予想できてたけど、まさか既にあの日の帰り購入していたなんて。


 よっぽど私に負けたのが悔しかったのか。それともスマファザが楽しくていてもたってもいられなくなったのか。それにしてもその日中に本体代も合わせれば数万円の買い物を即決できるなんて、改めてとんでもない。


「よくそんなお金あったな。まあ普段から浪費するタイプには見えないけども。私と違って」


「そ、それは……はい。昔からこう、目立った趣味とかがなかったので。お、お年玉が毎年どんどん貯まっていってまして……」


「ああ、それでか」


 なんって羨ましい。私なんてあれだぞ。今年のお年玉はもう貰った次の日にはゲームソフトやらコントローラーやら買って消滅したんだぞ。


 元々有美とかと色んなところに遊びに行ったり一人でも買い食いとかで日頃から浪費を繰り返すもんだから。それはそれはもう万年金欠だというのに。この子はそんな私と違ってちゃんとお年玉を貯めていたというのか。「お年玉を使わず置いておくなんてくれたおじいちゃんに失礼だるぉ!? 何か形に残るものを買うのに使うのがマナーじゃい!!」とか、恥ずかしげもなく親の前で宣言していたどっかの誰かさんを引っ叩いてやりたい。相変わらずひなちゃんといると自分のクズさが浮き彫りになる。


「で、でもこんなに大きい買い物したの、生まれて初めてで。凄く緊張しちゃいました」


「Smitch本体だもんなぁ。私は受験合格祝いで買ってもらったから実費じゃないけど、そりゃ自分の金で買うとなったら勇気のいる値段だわな」


 というか、ちょっと待てよ。


 毎日のようにこんな暑い中自転車を走らせてこんな小さい部屋まで来てもらってる訳だけども。ひなちゃんもSmitch本体持ってるんだよな? じゃあ……





「っていうか、さ。それならわざわざ直接ここに来て対戦しなくても……オンラインで通信すればいいんじゃないか?」

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