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第222話 堕落した二人

 朝ごはんを食べ終え、しばらく。


 母さんはお腹いっぱいな状態で自室へと戻り二度寝。俺も後を追おうかとも思ったのだが、結局目が覚めてしまったからそういう気分にもなれず。とりあえず由那の手伝いをして食べ終わった皿など諸々を片付け終えてから、ソファーでぼーっとテレビを眺めていた。


 つけているチャンネルで流れているのは、他愛もないニュース番組。ソファーで由那とくっつきながらそれを眺めているだけで、気づけば小一時間が経過していた。


 まあ要するにダラダラしているのだ。二度寝しようにも変に目が覚めて寝るに寝れず。ただくっついてごろごろしているだけ。


「……どこか出掛けるか」


「ほんと? わーい!」


「行きたいところ、あるか?」


「ゆーしとならどこでもっ♡」


「うぅむ。嬉しいけど一番困る回答だな……」


 何を隠そう俺も、同じことを考えていた。


 お互いどこに行っても楽しいというのはとても良いことだが、いかんせんそれでは話が進まない。候補が無いのも困りものだが、多過ぎるのは多過ぎるので中々に困ってしまう。どうやって絞ったものか。


 まあ強いて言うなら近場、か。遠出するならやっぱり事前に計画を立てておきたいし、向こうに行くだけ行ってあれができなかったこれができなかったではどうしても損をしたような気分になる。


 あとできればお金のかからないところがいい。まだこの先夏休みは長いし、お小遣いには限界がある。まあ高校生になったんだしバイトをするというのも考えてみたりはしたのだが。


(由那といられる時間が減るのだけは嫌だしなぁ……)


「えっへへぇ。ゆーしとデートだぁ。楽しみだにゃ〜」


「って言われてもなぁ。マジで案が浮かばないぞ。いや、まあ正確には浮かんでるんだけども。浮かび過ぎててどれにしたもんか」


「んにゅ〜、じゃあ私からも案出しちゃお。涼しくてずっと引っ付いていられて、近い場所がいいで〜す!」


「……それ、この家か由那の家しか無くないか?」


「ふふっ、言われてみればそうかも。じゃあやっぱりお出掛けやめて、今日はごろごろイチャイチャする? 一日中ぴっとりなお家デートも楽しいよぉ〜」


 チラッ、と。窓の外に目をやる。


 きっとなんやかんやで外に出れば楽しいデートプランは山ほどあるのだろうが。ギラギラと照っている日差しが足を重くする。最近どんどん夏が本格化してきて外の暑さも馬鹿にできなくなってきた。


 それならやっぱり冷房がきいていて涼しいこの家でイチャついている方が……か。


 どの道夏休みは長い。近々中田さんや在原さんたちと遊びに行く予定もあるし。とりあえず今日のところはごろごろしておくとしよう。


「じゃあそれで。外は暑いしな」


「えへへぇ。あ、ゲームしよ〜よ〜。久しぶりにスマファザしたい〜」


「ほいほい。んじゃ部屋戻るか」


「お〜ん〜ぶ〜。動くの面倒くしゃぁい」


「お、おまっ。堕落してるぞ」


「ゆーしに言われたくないにゃ?」


「ぐぬぬぬぬ……」


 確かにまあ、ちょっとそれを言われると反論できないけども。由那がここにお泊まりするってなったら堕落度も上がるだろうし。


「ほら、彼女さんがおんぶをご所望だよ? ゆーしのかっこいいところ、見ってみったい〜!」


「そんな煽りどこで覚えたんだ……ったく、仕方ないな」


 そういえばみんなはどうしているのだろうか。


 俺と由那みたいに、こんなぐだぐだな日々を過ごしているのか。それとも、案外意識の高い生活を送ってるのか。……いや、案外全員簡単に想像つくけど。


(少なくともここまで堕落しきってはなさそうだよなぁ……)


 そんなことを考えながら、由那を背に乗せて。自室への唯一の障害である階段を見つめる。


「ふぁ〜いとっ♡」





 くだらないことを考えてないで、まず目の前の問題をなんとかしないとな。

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