「じゃあ次は二つ目。勇士と由那ちゃんの同棲について」
「っ……!」
「ゴクリッ」
来た、まさに本題中の本題。
由那とこの家で同棲をする。そんな事ができたらどれだけ喜ばしいか。もう合鍵をもらえて朝から由那が俺を起こしてくれるうえに手作りの朝ごはんを作ってくれるという今の状況だけでも満足だというのに。ぢその上のフェーズである「同棲」というチャンスを、俺たちは目の前にチラつかされている。
二人して息を呑み、母さんの話に耳を傾ける。また何か条件をつけられるのか。それとも案外何もなくただ同棲を認めてくれるのか。
「同棲……って言っていいのかは分かんないけど。由那ちゃんが来たい日はいつでも、何時からでも。何日でも。ここに泊まって行っていいよ〜!」
「えぇっ!? う、嘘、ほんとに!?」
「イエース。ちゃんとこっちに戻ってきてから優奈さんとも話して許可もらってきました☆」
「やった、やったやったやった!! ゆーし、お泊まりしてもいいんだって!!」
「ま、マジか。まさかそんなあっさり許してもらえるとは思ってなかった……」
「ふふっ、それだけ優奈さんは勇士のことを、私は由那ちゃんのことを信頼してるってこと。よかったねぇ息子ぉ〜。あ、でも私しばらく仕事無くなりそうだから家にいるけど。それでもいいならって条件付きだけどね。ある意味二人きりの同棲ではない……かな」
なるほどな。だからさっき少しだけ言葉を濁したのか。
いやでも、それを考慮しても最高すぎる展開だ。そりゃあ二人でいることを反対されるなんてことは無いと思ってたけど、ここまでを許してもらえるなんて。しかも母さんだけじゃなく、優奈さんまで。
「くふふふ、感謝したまえ。私が仕事で磨いた交渉術を使ったからだぞぉ? せっかくの夏休みなんだ。二人でいろんなところに行って、いろんなことをしていろんなことを見て。この家で存分にイチャイチャするもして。悔いのない夏休みを過ごしなさいな」
「う゛ぅ、ありがとうおばさん!! 大好き〜!!」
「ふへへっ、もっと好き好きしてくれていいんだぞ〜。敬い崇め奉れ〜!! ほら、勇士も!」
「い、いや……崇め奉りはしないけども。けど本当、ありがとう。素直に感謝してるよ」
「へっ、いいってことよ。可愛い息子と彼女さんのためだからな!!」
夏休み初日。そう、まだ初日だが。俺たちは最高の約束されたスタートを切ることとなったのだった。
朝から夜までずっと由那といられる。しかもこの家でお泊まりも許された。学校の無い一ヶ月半、本当の意味で俺たちはイチャイチャ祭りを開催し放題の休みを満喫できる。
「ね、ねっ! 早速今日泊まってもいい!?」
「ま〜ま〜、落ち着きなって由那ちゃん。とりあえず今日は一旦帰ってお父さんにもこのこと報告しな? 用意だってあるだろうし。だいじょ〜ぶ、別にお泊まりOKは期限付きでもなんでも無いからさ。これから先いつでも来れるよ」
「でも、でもでもっ! ゆーしと一日でも早くお泊まりしたいもん!!」
「ふふっ、可愛いなこの〜。でもだぁめ。明日から、ね?」
「ぶぅ……はぁい」
「うん。言うこと聞けて偉い偉い♪」
明日からはいつでも由那がお泊まりしに来る……か。
どうしよう、叫びたいくらい嬉しい。さっきから心臓がドックンドックン言ってて興奮が治らない。
これが
でも……それでもいい。俺はとにかく今、由那がうちに泊まることの許可が下りて心の底から嬉しくて仕方がないのだ。
「楽しい夏休みになりそうだね、ゆーしっ!」
「ああ。本当に……な」
俺たちの夏休みはまだ始まったばかり。
恋人同士になって初めての夏休みは、いったいどれだけ一緒に過ごす事ができるのだろう。俺の心は震えざわつくばかりで、恥ずかしいから表には出さなかったが。
机の下で小さなガッツポーズをしてしまうほど、喜びの感情が昂っていた。