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第202話 夏休みはイチャイチャから1

 ピンポーン。


「……」


 ピンポーン、ピンポーン。


「……うぇっ!?」


 鳴り響くインターホンの音で薄らと目が開いた俺は、手元のスマホで時間を確認して飛び起きる。


 寝癖の酷い髪の毛もそのままに、ドタドタと階段を駆け降りて。廊下を走って玄関まで行くと、ドアのチェーンロックを外してから鍵を開け、ドアノブに手をかけた。


「ご、ごめん! 完全に寝てた!!」


「ふふっ、いいよぉ〜。彼氏さんを起こすのが私の役目だもんっ。……って、寝癖凄いよ?」


「仕方ないだろ? 飛び起きてすぐに降りてきたんだから」


「にへへっ、そんなに早く私に会いたかったの?」


「……そりゃまあ、な」


 今日は夏休み初日。にも関わらず、俺たちのイチャイチャに休暇日など存在しない。


 毎日会いたい。そう由那に言われ、俺は簡単にそれを承諾した。しかし意外とキツかったかもしれない。


 何故なら集合が学校に行っていた時と変わらず早朝だからだ。それもテスト期間で朝七時から集まることを覚えてしまったので、今日もその時間。


 おかげでテスト期間の疲れもあってか、初日からこのザマである。相変わらずイチャイチャするためなら余裕綽々で時間通りにやってくる由那を見習わなきゃな。


 この生活を続ければついでに朝が弱いのも克服できるんじゃないかなんて考えは甘かったようだ。この調子だとまだまだそれには程遠い。


「ま、とりあえず入ってくれ。今日何するかなんて決まってないと思うけどとりあえず諸々の準備はするから」


「は〜い。お邪魔しま〜す♪」


 由那を招き入れひとまず落ち着くと、あくびが襲ってくる。


 やはりまだ眠い。一度寝癖を直すついでに顔を洗って目を覚ますか。


 なんて、そんなことを考えながら洗面所に向かう。


「……で、由那さん? なんでついてきてるの?」


「ふっふっふ、ゆーし! ちょっと待って! 今日やりたいこと第一号が決まったから!」


「へ? もう、か?」


 てっきりどこか遊びに行くとかそういう系をご所望だと思っていたので、行き先の決定には時間がかかると余っていたのだが。どうやら由那先生は既にそれを決めていたらしい。


「ゆーし、顔洗わなくていいよぉ。寝癖も、そのままでいいから。先に自分の部屋に行ってて?」


「えぇ。一応由那の前ではちょっとくらい格好つけたいんだけどな……」


「いーの! 彼氏さんのだらしない姿を見るのは彼女さんの特権だから!! ほら、行って行って! 私も用意したらすぐに行くから!!」


「うーん……分かったよ……」


「ふふふっ、聞き分けが良くてよろしい〜」


 ぐりぐりぐり、と背中に頭を押しつけられて洗面所から離されると、俺は抵抗するのを諦めて。由那に見送られながらさっき駆け降りた階段を今度はゆっくりと上がっていく。


 チラッ。一度振り返ってみると、由那が笑顔で手をふりふりしてくれていた。……可愛い。


(それにしても一体何するつもりなんだ?)





 できればあまり疲れないものがいいな、なんて思いつつ。また襲ってきたあくびで涙を浮かべながら、自室へと戻った。

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