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第200話記念話18 モブ男たちは3

「俺、昨日在原さんに告ったんだよ。めちゃくちゃあっさりフラれたけど……」


「ふひっ、ふひひひっ。奇遇だなぁ。俺もついこの前……」


「お、お前らマジか。……俺もフラれてるけど」


 ズバリ、誰一人として相手にされていないのである。


 そしてフラれる時の言葉は全員同じ。


「ごめん、〇〇君のことはクラスメイトとしてしか見れねえや。別の子当たってくれ〜」


 と。全員が全員クラスメイトとしてしか見れないと言われ、入学してすでに数ヶ月が経った今、クラスの男子約半数が撃沈する結果となった。


 その中にはただ彼女が欲しいからと躍起になっている者、本気で彼女に惚れている者など様々だったが。彼氏を欲しいという気持ち自体はあるらしい彼女の心を動かせる者は、誰一人としていなかったのである。


「なんで、なんでだよぉ。お試しで付き合ってみるすらも無いのかぁ……?」


「なんか女子から聞いた話だと在原さん、まだ好きな人できたことないらしいぞ。あんだけ告白されてる人が、だぞ? 少なくともこのクラスの連中じゃ誰も好きにはなってもらえねえよ」


「お゛え゛ぇ……オ゛ロ゛ロ゛ロ゛ロ゛」


「ああ、最後の砦が壊されてついに何人か壊れ始めた。もうこのクラスはおしまいだな……」


「い、いやまだだ!! まだ終わりじゃない!! もう一人、もう一人いるだろう!!!」


「ふっ、バカめ。お前はあれを見てもそれが言えるのか?」


「……がっ!?」


 一人の男子生徒が指をさす。


 何人かがそちらに視線を向けると、そこには。完璧な絶望とも呼べる光景が広がっていた。


「ひ〜な〜ちゃ〜ん! おっはよー!! ぐへへ、今日も可愛いなぁ!!」


「ひゃんっ!? か、かか薫しゃ……ひにゃぁっ!!」


「よいではないか、よいではないか〜! 本なんて読んでないで私の抱き枕になりなしゃ〜い!!」


 蘭原ひな。そのクラスの学級委員長であり、今や三代美女に並ぶ勢いで男子から人気のある女子である。


 黒のおさげ髪に小柄な身体、引っ込み思案な性格。


 地味を体現した彼女だが、密かに可愛いと言い出す者が増えて、次第にファンがGのごとく増殖した。


 だが、可愛い子を見つけたのも束の間。すぐに気付かされてしまう。


「百合……だと?」


「バカなッッ!! あれは二次元においてしか確認されていない幻の生命体のはず……まさか、いるのいうのか!? 三次元にも百合少女が!?!?」


「残念ながらそういうことだ。もうこのクラスには絶望しか待っていない……」


「キェェェェェっ!! キエゥ!? キュア、キュオオオオォオ!!!」


 男子をフり続けた美少女のお気に入りは、四人目の美少女。


 彼女にその気があるのかは分からないが、すくなくとも委員長の方はもう……。


 誰が見ても分かる。あの空間に男が挟まることは許されない。古来より伝わりし百合の波動の発生源を破壊することは例え神であっても許されない。


「……やっぱり殺るか。あの二人」


「奇遇だなベストフレンド。俺も同じことを思ってた」


「ひゃひゃっ、どこに埋める? 山か……いや、近所のザリガニが湧くドブ川に沈めるのもまた一興……」


「俺たち持たざる者が復讐するには、アイツらを俺たちの世界まで引き摺り落としてやればいいんだ。ふふっ、ふふふふふっ……」




 今日も一年三組は平和である。


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