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第200話記念話12 ダブルデート7

 最大定員二名。そんな、一つ一つは小さい、けれど、全部を合わせると一番大きい。


 遊園地に入る前も入ってからも。その圧倒的なサイズにより存在感を漂わせていたそれを、私達は今日の最後と決めた。


 そしてそこそこ長い列に並び、今。ようやく順番が来た。


「じゃあ俺たち、先に乗るね。行こ、有美」


「由那ちゃん、神沢君。またあとで」


 ゴウン、ゴウンッ、とゆっくり私たちの前に回ってきたそれの扉が開くと、スタッフさんの指示でゆっくりと乗り込む。


「きゃぅっ!?」


「有美!? だ、大丈夫?」


「うん、ごめん。初めての感覚だったからビックリして……」


 観覧車。私は高所恐怖症だから、乗るのはこれが初めてだ。


 ジェットコースターもフリーフォールも乗ったら最後自分がどうなってしまうか分からなかったから乗らずに、寛司とあの二人が戻ってくるのを待ったけど。どうしてもこれだけは乗りたくて。


 箱のようになっているそこにゆっくりと足を乗せて体重をかけると、固定されていない床が揺れる。思わず弱気な声をあげてしまったけれど、一度寛司に手を引かれて触ってしまえば、その恐怖が一時的なものだったのだと気付かされた。


「それではいってらっしゃいませ〜!」


 そして、カチャンッ、と扉がロックされて。私たちは手を振る由那ちゃんに見送られながら、ひと足先に上昇を始めたのである。


「う、うわぁ。これやっぱり相当高いところまで行くよね。停電とか起こったらどうしよう……」


「そんなことそうそう起こらないだろうから大丈夫だよ。怖いなら手、ちゃんと握っててね」


「ご、ごごごめん。手だけじゃ足りないかも。う、腕も借りていい?」


「どうぞ。好きなだけ抱きついていいよ」


「ありがとぉ……」


 寛司は相変わらず明確な弱点が無い。高い所も余裕なようで、私が怯えるのを見てクスクスと小さく笑っていた。


 それにしても、改めて不思議な感覚だ。


 密室に二人きり。誰にも邪魔されない場所でありながら誰からも見られる可能性がある場所。特に上に行けば行くほど、距離はあるからハッキリとは見られなくとも場内全員の視界に入り得る。そして自分がどんどん高く怖い場所に向かっていることもあり、落ち着かない。


「……」


 とりあえず何かに縋りたくて。私は、寛司の腕に身を寄せる。


 暖かく、逞しい。温もりを感じると少しだけ怖いのが無くなっている気がした。


 身体も、少し熱い。勿論季節の問題もあるけれど。やっぱり寛司と引っ付いているとすぐにポカポカと熱が上がってきて、力が抜ける。


(好きな人と乗る観覧車って、こんな感じなんだ……)


 何故乗り物としてこれがカップルに人気なのか。それは頂上に行かずともすぐに体感した。


 高い所に行くという恐怖心、それを紛らわせようとより身体が感じる隣の人の存在。さっきまでのワイワイとした雰囲気から一点、静かになり心が澄んでいく感覚と段々昂る感情。


「わっ……どうしたの?」


「……いいでしょ、別に」





 気づけば私の身体は、コイツを求めて。ズイズイと距離を詰めるだけに飽き足らず、頭を肩に乗せるようにして完全に身を委ねていた。

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