「ワクワク、ワクワクっ!」
「ふふっ、由那ちゃん楽しそう。まだ入場してないよ?」
「えへへ〜、だってみんなで遊園地だよ? しかもカップル二組で! これはもう……ダブルデートだよね!!」
「ダッ────!?」
「言われてみれば確かにそうだね。こんな甘々カップルと並んだなんてかなりハードル高いけど」
「いや、何言ってんだ。お前と中田さんも大概だろ……」
寛司はよく、俺と由那を見てやれ「甘々」だの「歩く砂糖ばら撒き機」だの、「非リア殺戮兵器」だの言ってくるが。この二人も充分同じ穴の狢なんじゃないかと俺は思う。
記憶に新しいので言えば文化祭の買い出しの時。ホームセンターに内蔵されているカフェでケーキを分け合っている姿は、それはそれはもう。見ているだけで胸焼けがしそうなほどに甘く、周りにも実害を及ぼすレベルの砂糖オーラを出していたものだ。
二人ともお互いを大好きなのは勿論のこと、中田さんの表情がズルい。普段は頼りになる姐さんって感じのちょいギャルさんなのに、寛司のことを見つめている時や二人で手を繋いでいる時なんかはもう。分かりやすく恋する乙女というか……女の子の顔をしていた。
ギャップ萌え、というやつだろうか。そんな光景を見てキャーキャー言っている女子は少なくないし、男子に関しては吐血騒ぎもチラホラ。砂糖ばら撒きや非リア殺戮なんてのは称号はいつでも譲れるくらいのパワーがあると思う。
「むっ、イチャイチャ勝負なら負けないよ! イチャイチャチャンピオンの座は絶対に譲らないもん!!」
「おいちょっと待て。俺はそんなタイトル勝ち取った覚えはないぞ」
「ん゛っ……イチャイチャなんて、別に……。で、でも私だって、寛司と……」
おいちょっと待て? なんで対抗心剥き出しなんだ中田さん。漏れてる漏れてる。明らかに隠そうとしてる胸の内が小さな言葉になって出てきてるって。
「今日は俺と有美で下剋上かな? イチャイチャチャンピオンなんて恥ずかしい名前はいらないけどさ。ちょっと負けたくないかも」
「寛司、お前もか……」
「え? 勇士は俺と有美にイチャイチャで負けちゃってもいいの?」
いや、勝つも負けるも。そもそもこれ、なんで勝負が始まろうとしてるんだ?
というかなんだ、イチャイチャの勝負って。別に俺は由那とイチャイチャできればなんでも……寛司と中田さんが俺らを超えるイチャイチャをするのは勝手というか……。
「ゆーし、私達でチャンピオンの座を死守しないと!! ほら、早くイチャイチャして!!」
「おわっ!? ちょ、いきなり抱きつくなって!!」
「……私だって、負けないもん」
「はいはい、頭なでなでだね。ハグに負けないくらいいっぱいよしよしするから」
「むむっ、有美ちゃん中々手強い……。ならこっちはキ────」
「キスなんてこんなところでできるわけないだろぉぉお!?!?」
こうして、謎に開催されてしまったイチャイチャ選手権は、勝手に試合のゴングがなりスタートしてしまったのだった。
いや、由那とイチャイチャできることに関しては全然良いというか、むしろウェルカムなんだけどな?
なんで周りに見られまくるここなんだ。普通に、いや……めちゃくちゃ恥ずかしいぞ……。