「……で、当たっちゃったと」
「そーなんだよー! ね、みんなでここ行こうよ! チケット足りない分のお金はみんなで分け分けしてさ〜!!」
突然の展開に、寛司は困惑している様子だった。
俺だってそうだ。まさか本当に当ててしまうなんて思わないじゃないか。
一等賞、遊園地のワンデイパス四枚。
なぜ一枚や二枚ではなく四枚? と疑問に思ったが、どうやらこのチケットには期限があるらしい。しかも二週間。中々に難易度が高い。
二週間となるとちょうど夏休み前の期末テスト週間寸前までか。普通に学校があるので俺たちがいこうと思うと土日しかないわけで。要するに、行けるチャンスは今週末か来週末のみ。
というわけで、ひとまず急いで中田さん達を誘いに来たのである。中田さん、寛司、俺と由那に蘭原さんと在原さん。六人で行くとなると二人溢れるが、そこは全員で二人分を出し合えばいい。実質普通に行くよりも三分の一の値段で済むわけだがら、一日カラオケに行くくらいのもので収まるだろう。
「お、いいじゃん遊園地! 予定全然空いてるし、みんなで行こ!」
「まあ、そうだね。せっかくだし」
「私も行くぞー! 遊園地なんてクッソ熱いじゃねえか!!」
「じゃ、じゃあ私も……行きたい、です」
「やった! じゃあ決まりだね!!」
そして、いとも簡単に日帰りで遊園地に遊びに行くことが決定したのだった。
由那と二人きりでなんていつでも行くことができるが、この六人で予定を合わせようと思うと必ず都合の合わない時がでてくる。
行ける時には行っておくべきだ。仲良しグループ、なんて恥ずかしい名前で呼称されているこの集まりに新メンバーも増えたことだし。
「やったね、ゆーし! みんなでまたお出かけ〜!!」
ぴょんぴょんっ、と由那が跳ねる。大きいものも跳ねまくってるからやめなさい。クラスの男子からの視線が集まってきてるぞ。
そんな彼女を視線から守るようにスッと俺が間に身体を入れると、明らかに大きな舌打ちが何箇所からか聞こえてきてちょっと怖かったが。由那は俺の彼女さんだ。こういうのはあまり人に見せたくない。
とまあ、なんやかんやありながらも。今週末の土曜日に行くことが決定し、安泰だったのだが────
『う゛ぅ、油断したぁ。体調なんてここ数年一回も崩したこと……へぶしっ!』
『わわっ、寝ててください薫さん! 熱高いんですから!!』
「ありゃりゃ……」
いざ当日。集合時間五分前となりあとは在原さんと蘭原さんのみが来ていないという状況で。蘭原さんのスマホからビデオ通話がかかってきたのだった。
内容は、そこに映っている在原さんの姿を見ればすぐに分かった。どうやら夏風邪にかかってしまったらしい。
『わ、私は薫さんの看病で残りますね。みなさんで楽しんできてください』
『う〜、喉痛いよぉ……』
『もお、いきなり起きて喋るからですよ? 安静にしててくださいっ』
どうやら蘭原さんは元気なようだが、こちらには来ないようだ。まああの子なら……な。多分俺達と遊園地に行くよりも薫さんを付きっきりで看病する方が楽しいはずだ。どの道俺たちも在原さんを一人で残して行くのは気が引けていたし。彼女が隣で見ていてくれるというのなら安心していいだろう。
「むぅ、薫ちゃんも来て欲しかったけど、仕方ないかぁ……」
「由那ちゃん、そう気を落とさないでよ。薫の分まで私たちで楽しも?」
「うん……」
そうか、四人かぁ。
俺と由那。寛司と中田さん。……ん?
これって、ダブルデートじゃね……?