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第200話記念話4 百合、揺らめいて4

 ドクンッ、ドックンッ、ドクンドクンドクンドクンドクンッッ。


 飛び出そうなほどに心臓が跳ねている。


「? ほら、おいで〜?」


 腕を大きく広げ、私のために太ももを用意して待ってくれている薫さん。


 抱きしめながらゲームをしたい。そう、言われた。言われてからより緊張が増して身体が動かない。


 一度座らせてもらうとは決めたものの、それは意志の話で。身体がそれについて来てくれるかどうかは、また別の話だった。


 だが、薫さんはそんな私の尻込みをいつまでも待っていてはくれない。


「ほぉ、らっ!」


「はわわっ!?」


 ぽすっ……。


「ぐへへ、ひなちゃんよぉ。ようこそ私の太ももへ。そぉれ、ぎゅーっ!!」


「ひにゃ、ふぎゃにゃぁっ!!」


 ぽよん、むにむにっ。むぎゅんっ。


 背中を、柔らかい感触が伝う。


(こ、ここここれって、もしかして!?)


 もしかしなくても。この世のものとは思えないほどに柔らかく、薫さんの服と私の服越しでも存在を主張してくるそれは、私には無いもの。そして、薫さんの女の子としての魅力を際立てている、兵器だ。


「うひょー! 女最高!! やっぱり抱きしめるなら男よりも女だよなー!! うっへへ、ひなちゃんいい匂いするなぁ。くんくんっ、くんくんくんっ」


「ひゃ、やめっ!? や、やめてくださひ……い、いい匂いなんて、しませんから……」


「えー? そんなことないぞぉ。由那ちゃんや有美は甘い匂いだけど……ふむふむ。ひなちゃんのはあまり嗅いだことのない匂いだ。ただ、なんだろ。めちゃくちゃ鼻の通りが良いっていうか。落ち着くんだよなぁ……」


 すりすり、と鼻を首元に擦りながら匂いを嗅いでくる。少しくすぐったくて、何よりも恥ずかしい。


 しかも……めちゃくちゃ薫しゃんの匂いがするッ!!


 背後からふわりと香る良い匂い。ずっと嗅いでいたいと思わせるような、そんな匂い。


 こんな匂いに包まれてたら絶対変になっちゃうよぉ。ああ、しゅき……♡


 薫さんの匂いと、たわわの感触。加えてぎゅっと抱きしめてくる腕から伝わってくる「逃がさない」という気持ちに、くんくんといつまでもうなじを擦ってくる鼻先。


 幸福の過剰摂取に思わず、意識が飛びそうになる。私、こんなに幸せでいいんだろうか。明日死んじゃうのかな……それとも、ここは夢の中なのかな……。


 ずっと憧れだった。強い芯と我の強さを持っており、それを押し通せるだけの発言力、コミュニケーション能力があって。何よりも自由で楽しそうなこの人の笑顔に、ついつい惹かれるようになっていった。


 そんな、憧れとして眺めることしかできなかった人に今。私は抱き枕のように扱われ、されるがままにされている。


 喜びと興奮が身体中から熱として発し、幸せホルモンが止まらない。これはもう、人として本当にダメになってしまうんじゃないだろうかと思うほどに。


「さて、と。ではこちらも失礼して……」


「ひゃっ!? か、薫さ、そこはっ!?」


「ふふふ、よいではないか。女同士だ、深く気にすることはないさ。それにしても……ふむ、なるほど。有美よりほんの少し大きいか? B……いや、ギリギリC……?」


「ひ、にゃっ……ぁ……」


 さすさすっ、もみっ。もみもみもみ。


 突然。胸元を弄られ、驚きのあまり身体が反射的にその場から離れようとしたが、今の私は薫さんに押さえられている状態。そう簡単に脱出できるわけもなく。というかもはや、簡単に脱力してしまった身体は意識下に戻ると、脱出しようとすらしておらず。





 口ではそう言っていても、身体は正直だね、と。そんなえっちな漫画で使われているような言い回しがお似合いな状況下に、陥ってしまっていた。

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