というわけで。明日から俺たちの集合時間は朝の七時となった。
実は俺の場合朝の八時でも割と朝が弱いのでギリギリだったりしたのだが。外で由那を待たせてしまうなんてことがないよう、ちゃんと起きれる習慣をつけないとな。俺はせいぜい準備含めても六時半起きで充分だけど、彼女の場合はそれよりもっともっと早く起きて俺とイチャイチャするために頑張ってくれているのだから。
『えへへ、ゆーしのこと起こしてあげたいなぁ。お嫁さんみたいに隣でおはようって言ってあげたい! あとキスで起こしてあげるのもいいかも!!』
「うっ、なんだそれ。魅力的すぎないか? ますます一人で起きられなくなりそう……」
『ふふ、よいではないか。よいではないかぁ〜♪ 由那ちゃん無しじゃ起きられないゆーしでも大好きだよ? 優し〜くトントンってしたり、ぎゅ〜っていっぱいハグして最高の寝起きをサポート♡ あなた専用の由那ちゃんなんですからにゃ〜?』
くぅ、なんだその言い回し。
朝起きたら隣に由那がいて、優しくおはようを言ってくれる。そんな愛しい朝を経験できるなら、俺も喜んでしてみたいが。
なんというか、こう。男としてそこまで頼っていいのかっていう。あ、というか俺この家の合鍵がどこにあるのかも知らないしな。流石に両親に内緒で合鍵を作るというのはやっちゃいけないことだろう。
だからその夢を実現させるにはまず、許可を取らないとな。一応付き合っていることは言ってあるし、今度仕事がひと段落しそうなタイミングで由那にまた会いたいなんてことも言っていたから。その時にでもお願いしてみるか。
「なら、うちの母さんに合鍵貰えないか今度お願いしてみるか。せっかくだし一緒に、な」
『えっ!? おばさん今おうち帰ってきてるの!?』
「いや、今はいないけど。ぼちぼち仕事が片付くからしばらく暇になるんだと。由那に会いたいって言ってたぞ」
『私も! 私も会いた〜い! おばさんに会うの、本っ当に久しぶりだもん!!』
まあ合鍵の件は多分だけど許可してもらえるだろう。今までも由那のことを何度か家にあげているけれど、あれらは全て母さんの許可を取ってのことだし。
あとその条件に今の由那がどんな感じの子になったのか知りたいからと写真を要求されて一枚送ったが、その反応は中々のものだった。
とにかく「可愛い」と「早く会いたい」、そして「さっさと嫁にしてきなさい」と、肯定的なものばかり。むしろこっちから切り出さなくてもあの人からいきなり合鍵を押し付けるなんてことがあってもおかしくないくらいのテンションだったな。
『じゃあ絶対頼み込んで合鍵、ゲットしちゃお〜♡ ゆーしの寝顔をツンツンしながら堪能するの、今から楽しみだなぁ〜』
「あ、あんまり堪能はしないでほしいな。普通に起こしてくれ……」
『や〜だ! 無防備な顔して彼氏さんが寝てるんでしょ? くっふふ、彼女さんとしてはイタズラしないわけにはいかないもん!』
ま、まあ。色々と不安な部分は目立つが、とりあえず母さんに会わせることは決定だな。
ただ、あれだな。母さんの仕事が完全に落ち着きそうなのは夏休みを過ぎてからなんだけどな。
ぼちぼち、という言葉にもはや感覚のズレが生じている母さんだ。ぼちぼち仕事が片付きそうって言葉にそれってどれくらいなのか聞き返すと、数ヶ月後と言っていた。
つまり残念ながら、その夢の生活は夏休み中に実現させることは不可能なわけだ。本当に、残念だが。
だからその楽しみは取っておこう。どうせ夏休みには他にもっともっと思い出になるようなイベントが待ってる。数ヶ月なんて……案外、すぐに経ってしまいそうだしな。