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第195話 彼女さんとビデオ通話3

『ゆーしってさ、おっぱい♡ 大好きだよね〜』


「ん゛んっ!? そ、そそそれは……」


『もぉ、私の彼氏さんは変態さんで困るなぁ〜。女の子ってそういう視線、結構敏感に気づいちゃうんだよ?』


「う゛っ……」


 そ、そんなことを言われても。


 こんなの、意識するなという方が無理な話だ。サイズ感が小さかったらともかく、少なくとも由那のは。高校一年生とは思えない大きさをしているし、もはやそこ一つだけ切り取れば大人と大差は無い。


 そして普段から、そんな爆弾を押し当てられているものだから余計に。その存在感や柔らかさを知ってしまうと、目が離せなくなってしまう。


「ご、ごめん。由那のはその……大きいから、な」


『ふふ〜ん、いいよぉ。ゆーしにならいくら見られても大丈夫! いつも言ってるでしょ、私の全部はもうゆーしのものなんだからね♡』


「んぐっ……それ、良くないぞ。年頃の男子には刺激が強すぎる台詞だ……」


『そんなこと言ってるうちは、まだまだ先のイチャイチャには進めそうにないですなぁ〜。大人のキスだってあれから全然できてないもんね〜』


「あ、あれはお前もできないだろ。あの後ずっとぽーっとしてて、意識朦朧だったくせに」


『ギクッ』


 先に進む覚悟が出来ていないのは、俺だけじゃない。由那もだ。


 俺たちはあの日、今の俺たちよりも一歩先に行ったけれど。その結果イチャイチャの許容量が足りずにパンクした。そして今は大人のキスそのものを封印している。


 多分由那の言う先のイチャイチャというのには大人のキス以外に″そういうこと″も意味として含んでいたのだろうけど、お互いが万全の状態でそれを迎えられるようになるのはいつなのか。正直まだ全然見当はついていなかった。


『だ、だって……大人のキスすると頭、パチパチって。ゆーし成分が直に流れ込んできて、しゅごいんだもん……。あんな気持ちいいの覚えたら、もう普通のには戻れなくなっちゃうよ?』


「そう、だな。まあ俺たち、普通のにもどっぷり浸かって凄いことになってるけど。今日何回キスしたか覚えてるか?」


『え? う〜ん、三十回……くらい?』


「改めて数字で聞くととんでもないな」


 毎朝の日課であるイチャイチャハグキスと、このテスト期間に行うことが決定した二時間のイチャイチャタイム。あああと、昼休憩の時の教室でも何度かしたっけな。


 俺たちはもう、充分その「普通には戻れない」という状態まで来ている気がする。


 だって、今も────こうやって画面越しに目を合わせて会話をしているだけで、抱きしめに行きたい。たくさんキスをして、またイチャイチャしたい。そんな邪な欲望が、際限なく湧いてくるのだから。


『ねえ、ゆーし?』


「ん? どうした?」


『……早く、会いたいね』


「……ああ。会いたいな」


 明日の朝にはまた、唇を合わせているのに。


 時間にすればあと十時間も無いくらいだ。たったそれだけ。この後寝てしまうのだから、もう体感はせいぜい一、二時間ってところだろう。


 それでも、我慢できないかもしれないと思っているから怖い。本気で今から会いに行ってしまおうかなんて考えている自分がいる。


『よぉし、決めた! ね、ゆーし! 明日からもっと早くゆーしの家、行っていーい? 朝にもイチャイチャタイム作りたい!』


「え、朝か。由那は大丈夫なのか? 二人分もお弁当作っててそんな時間無いんじゃ……」


『くっふふ、あまり由那ちゃんをナメないでもらおうか! 一時間くらいなら早く着けるよん!!』


 す、凄いなコイツ。いったい何時に起きてるんだ。


 アイツの家から俺の家まで、徒歩で十分くらい。いつもより一時間早くってことは七時に来るわけだから、六時五十分には家を出るわけで。お弁当作る時間諸々合わせたら、下手すると五時にはもう起きなきゃいけなくなるんじゃないか?


『……ダメ?』


「いや、ダメじゃない。むしろ来て欲しいけど」


『やった♪ じゃあ決まりだね!』




 コイツのイチャイチャへの執念は、相変わらずとてつもないな。

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