「び、ビデオ通話?」
それって、あれか。ビデオな通話か。お互いの顔を見ながらできる伝説の。
っていや、別に伝説でもなんでもないけども。ヤバい、ゴロゴロしてたから寝癖も付いてるし、服装だって緩いシャツの寝巻きだ。
『うんっ♪ ゆーしの寝巻き姿見た〜い!』
「……五分待ってくれないか?」
『あ〜っ! ダメだよ! その間に着替えるつもりでしょ!!』
ぐぬぬ、流石にバレるか。
ただ、なぁ。あまり情けない姿は見せたくないというか。普段から見せまくってるとは思うけど、情けないと分かってて開き直ってから見せるのはまた違うわけで。
自分でも何が言いたいのかよく分からないが、まあ要約すると恥ずかしいのだ。よりによって今着てるTシャツ、バナナのよく分からないキャラが描かれた変なやつだし。
確かもじゃバナナ君、だったか。前にお母さんが安売りで一目惚れして買ってきたやつだ。
なんというかこう……死ぬほど微妙なキャラデザをしている。外に着ていくには恥ずかしいから、仕方なく部屋着にしているものだ。
これを由那に見られるのは、やっぱりちょっと恥ずかしい。だから一旦下に上から羽織れるパーカーを取りに行きたかったんだが。
『そんなことして、いいのかにゃぁ。わたしもせっかく寝巻きなのになぁ。彼氏さんに見せられるよう、可愛いの着てるんだけど……』
「今すぐビデオ通話始めよう。着替えるなんてもってのほかだな! ヨシ!!」
『……ゆーしってたまにびっくりするくらい欲望に素直だよね』
こうなれば話は別だ。
由那の寝巻き。それも、俺に見られる事を想定した可愛いもの、なんて。
見なければ。見るしかない。絶対に見たい!
彼女さんの可愛い寝巻き姿を見るためならこのもじゃバナナ君、謹んで解放しよう。とくと見てくれ。それで見せてもらえるなら!!
ぽろんっ、とビデオ通話申請が届き、俺はそれを勢いよく許可する。
するとインカメで起動したカメラが俺をピンボケしながら写したので、スマホスタンドを使って机の上に固定。向こうからもよく俺のことが見えそうな画角で調整した。
『えっへへ、ゆーしぃ〜! 見えてる〜?』
そして同時に、向こうからの映像が映る。
白と水色を基調としたルームウェア。夏ということもあり生地は薄そうに見える。ひらひらと可愛いフリフリは、由那の明るい表情に良く映えていた。
そして何より────薄着になったことでより破壊力を増した、胸元のたわわ。首元には謎のピンク色の線のようなものも見える。あれは恐らく、たわわを包み込むあの布地を支える紐か。
「最高、かよ……」
『あれ? お〜い。画面固まってる〜?』
眼福。それ以外の言葉が見つからなかった。
ああ、クソ。なんで画面越しでしか会えないんだ。今すぐ抱きしめに行きたい。こんなの反則だ、可愛すぎる。
『っていうか、ぷふっ。ゆーし、その服なぁに? もじゃバナナ君って! 聞いたことないキャラだよ〜!!』
ケラケラと笑う彼女の胸元が、たゆんっ、たゆんっ、と揺れる。
背丈は小さいのに、何故ここまで立派に成長したのか。明らかに母親の遺伝だということは分かるが、ああ、なるほど。逆に胸へと栄養が行くから、身長が……。
『むぅ。ちょっとゆーし! 黙ってないで何か言ってよ〜!!』
「えっ!? あ、あぁ、ごめん。完全に見惚れてた……」
『み、見惚れ? そっか。えへへ、ゆーしが私に、見惚れて……へへっ』
世界一可愛い生き物とのビデオ通話。実物に触らないことだけが残念だが、俺にとっては最高の癒しだ。
『でもゆーしの目線、ちょっとエッチだよ? さっきからどこ見てるのさぁ』
「……き、気のせいだろ。俺は別に、胸元なんて」
『ふふっ、漏れてる漏れてる。声に出ちゃってるよ〜♪』
ああ、ダメだ思考力が奪われてうまく言葉が隠せない。
彼女さんの可愛いパワー、恐るべし。