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第193話 彼女さんとビデオ通話1

 プルルルル、プルルルルルルルッ。


 ついさっきまで休憩で軽くゲームをしていたので、消音モードにしていなかったスマホから大音量で着信がかかる。


「んぇっ!? びっくりした……」


 電話をかけてきた相手は、もはや予想がついていたが。俺に電話をかけてくる奴なんて両親かコイツくらいなものだろうし。


「もしもし。どうした、由那?」


『えへへ〜、ごめんね、夜遅くに。ちょっと声聞きたくなっちゃった♪』


 あの後。俺たちは二時間のイチャイチャタイムを経て解散した。


 そして今は夜の十時半。由那と別れてから、作ってもらったご飯を食べ、一時間半ほど勉強して軽く休憩を挟んでいたところだ。勉強中ではなかったし、多少夜は遅いが怒ることでもない。むしろ、声を聞きたいという理由で彼女さんが電話をかけてきてくれるというのは、俺としてはとても嬉しいことだ。


「全然いいぞ。どうだ? 勉強の方は」


『今歴史のまとめノートある程度作り終わったところ〜!』


「へぇ、まとめノートか。あんまりやったことない勉強法だな」


『まとめた方が年代順な覚え方もできるし、頭にも残りやすいよ〜。重要なとこは赤ペンで書いておけば赤シートで隠して暗記もできるし!』


 前のテスト期間の時も基本二人で勉強している時は暗記ものを避けていたし、そんな勉強方法をしているとは知らなかった。


 俺の場合はいつも教科書や授業プリントの重要そうなところに緑のマーカーペンを引いて赤シートで隠し、何回も書くという方法で勉強していたが、由那のやり方のほうが頭への残り方は強そうだし、真似してみるのもいいかもしれないな。


 歴史は語句の暗記ではなく、流れを覚えるもの。歴史の先生が、そんな事を言っていた気もする。一つ一つの語句だけを覚えるのではなくて、例えば〇〇の変とかならそこに至るまでに何があったのか。その過程や関係した人物など、一通りの流れがと覚えてしまう方が勉強としては良いのだという。


 語句のみの暗記は定期テストのみの対策としては手っ取り早いし楽だが、受験の時の勉強を考えればやはり流れの暗記は大事なんだそうな。


『なんなら私のまとめノート、見せてあげようか? ほら、人に教えたら頭に入るって言うし! 暗記ものってだけで二人の時間に勉強するのはやめてたけど、もしかしたら二人でこそやった方がいいかも!』


「そうだな。そうしてもらえると助かるかも。じゃあ俺も由那に教えられるよう、別の教科をもっと頑張っとくか」


『やったぁ! えっへへ、私の苦手教科全部、ゆーしに頼っちゃお〜♪』


「ちょ、待て。お前の苦手教科ってほぼ全部理数系だよな? 俺も文系だからそれ、俺の方が負担デカくないか……?」


『……てへっ♡』


 こんの野郎、可愛いなオイ。


 というか、思っていたよりちゃんと勉強をしていたようで何よりだ。授業中には寝ていることがよく目立つ彼女は、もしかしたら一人きりになったら俺との勉強時間での疲れでそのまま寝てしまうのでは……なんて心配は無用だったらしい。


「まあ、とりあえず勉強はしててくれたみたいで何よりだ。その調子でテスト当日まで頼むぞ」


『もっちろん! 夏休みに補修なんて、絶対に嫌だもん! 本気の由那ちゃんパワー見せてあげる!!』


「ん。楽しみにしてる。って、ずっと電話してて大丈夫か? 俺は今ちょうど休憩してたからあれだけど」


『うん、大丈夫だよぉ。今日の分の勉強はもうおしまい! 寝ちゃう前にゆーしの声、聞きたかったんだぁ』


「そっか。じゃあ彼女さんが満足してくれるまで電話は切らないでおくか。俺ももう今日はそんなに根詰めるつもりはなかったし」


『えへへ〜、優しい彼氏さん好きぃ。じゃあもう一つ、お願いしてもい〜い?』


 お願い? 何か教えて欲しいところがある、とかだろうか。


『……ゆーしの声聞いてたら、顔も見たくなっちゃった♡ ビデオ通話、しよっ?』




 ……へ?

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