「っ……にゅあぁぁぁぁぁっ!?」
部屋で一人。私は大絶叫する。
寛司がこの部屋を去ってから数分。ふと我に帰り、なんて恥ずかしいことをしてしまったのだと。後悔に駆られていた。
完全に暴走してしまっていたのだ。部屋に好きな人を呼んで、つい。甘えたいという気持ちに素直になってしまうと、気づけばあんな……
「はっず。何してんだ、私。最近どんどん変になってるって!!」
まだ彼の体温が微かに残っているベッドの上に身を投げ出し、お気に入りの枕に顔を埋めながら。私は無意識に足をバタバタとさせて恥辱に悶える。
いくらなんでも、やり過ぎた。ハグはするわ、匂いは嗅ぐわ。その上ついにガマンの効かなくなってしまった寛司に押し倒されて、何度もキスを。上から押さえつけられて、乱暴に……貪るみたいに……。
「あ、あんなので喜ぶなんて……私、えっちな子みたいになってる。なんであんなに、ドキドキしちゃったんだろ……」
紛れもなく、相手が寛司だからというのはある。
だが、ベッドに倒した挙句簡単に持ち上げられ、立場が逆転した状態で押し返されてしまうなんて。しかもそれに一切の抵抗すらできずに……いや、しようともしていなかった。簡単に受け入れてしまった。
思い返すだけで、また心臓が躍動する。唇に残る余韻を感じて、身体が火照ってしまう。
『興奮、しないわけないでしょ。部屋に招かれてこんなこと。正直、この先までちょっと期待しちゃってる自分がいるよ』
「こ、この先……キスの先、って。や、やややっぱりえっちなこと、だよね……」
寛司と付き合い始めて数ヶ月。気づけばキスをするのは日常茶飯事で、休日にはいつもデートか寛司の家でぐだぐだすることばかり。
よく考えれば、恋人としてもう″それなり″の段階に来てしまっているのではないだろうか。
男女が付き合ってからそういうことをするまでの平均的な目安は、半年くらいだと聞いたことがある。
仮にそれと私たちの初めてを合わせるとして。付き合い始めて既に四ヶ月以上が経っているということは……
「な、夏休み中には……ってこと!?」
寛司とそういう事をする。考えたことはあったけれど、まだ現実味はなかった。
……いや、多分私が怖がっているだけだ。アイツは絶対にそんな事言わないと思うけど、どうしても私は私に自信が無い。だからちゃんと満足させてあげられるのかって。胸だって、こんなだし……。
シたいのかどうかと言われれば多分、シたい。今すぐシたいのかと言われればそんなことはないし、あくまで将来的にはという現実逃避した考え方しかできないけれど。
「寛司と、えっちな……コト……」
トクンッ、と緩やかに跳ねた心臓。
私はしばらく考え、黙り込んで。身体の熱がどんどん上昇していくのを感じながら、積極的にキスを求めてきたアイツの顔を、思い浮かべていた。
もし、シたら。キスすらまともに目を見てできない私だけど、アイツとそういうことが、できたら。どれほど……
「あっ……あぁぁぁぁ!! ヤメ、考えるのヤメッッ!! 何本気でこんな事妄想してるの、私はッッッッ!!!!」
ダメだ、考えちゃ。こんなの日常的に考えるようになったら、また今日みたいに簡単に暴走してしまう。
ぶんぶんと首を横に張って思考をリセットした私は、鼻腔を微かにくすぐったアイツの残り香から離れて。飛び出すように、部屋の扉から廊下へと出る。
「……シャワー浴びよ」
明日からどんな顔をして会えばいいんだ、なんて。そんな考え方になって、目を合わせられなくなる前に。
シャワーでも浴びて、スッキリしよう。