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第77話 近づく旅の終わり

「あーっ! おーい有美ちゃーん!」


「寛司の、バカ。なんであんなこと、して……ここ、みんないる……のにぃ……」


「? 有美ちゃん?」


「ほわぁあっ!? ゆ、ゆゆゆ由那ちゃん!?」


 それから数十分後。


 充分に温泉には満足し、そろそろ時間も経過してきたから一旦渡辺達の様子を見に行こうかと。そうやって二人を探していると、一人で何やらブツブツと呟きながら冷水機で水を飲んでいる中田さんと出会った。


 彼女曰く、渡辺は今サウナにいるそうな。最初は二人で入ったそうなのだが、中田さんは暑いのが我慢できなくなって先に飛び出してきてしまったらしい。


「有美ー? マット片付けてきたよ……って、あれ? 江口さん?」


「あ、渡辺君!」


 こうして、五人中四人が集結したわけである。


 中田さんの明らかにサウナだけでそうなったとは思えない赤面っぷりに、二人でいる間何をしていたのか聞いてみたいところではあるが。それをするのは野暮というものだろう。


「二人ともどうしたの? あ、もしかして二人もサウナ?」


「いや、違う。結構時間も経ったし、二人はどうしてるかと思って。こっちは若干のぼせ気味だからさ」


「そっかそっか。うん、俺達もある程度お風呂は巡ったし、有美もさっきからずっと顔が赤いんだよね。そろそろあがる?」


「そうするか。あとは在原さん次第だけど……」


「呼んだか?」


「っお!?」


 ぬるんっ、と背後から突如現れたその声に思わず身体をビクつかせて振り返ると、そこには在原さんが。


 サウナにいたからだろうか。妙に肌艶がいい。


「ふふっ、とぅるっとぅるだろう!」


「すごーい! 薫ちゃんとぅるっとぅるだぁ!!」


「とぅるとぅるて……」


 まあ、そんなこんなで。在原さんも思ったより早くエステが終わってさっきまで温泉を堪能していたところらしく。ここが最後というわけでもないので、全員であがることとなった。


 ここで最後ではない、というのは、実はまだあと一箇所、最後に行こうと言っている温泉があるからだ。朝イチに入って昼にはここ、そして夜にはそこと。一日に三箇所も温泉に入浴することとなるわけだが。まあ温泉旅行だし、そんなもんだろう。


 更衣室にて元の浴衣に着替え、女子組とは入り口前で待ち合わせた。ものの数分で再集結すると、再び温泉街を進む。


 そろそろ昼の二時に差し掛かろうかという頃。朝から来ているのに時間の流れは早いなぁと感じつつ、家族へのお土産なんかを選ぶ。


 ここからは本当にみっちりとしたスケジュールはなくて。ただ気ままに、みんなでお店を物色する旅だ。


「あ、この猫ちゃん……可愛い」


「ふふっ、相変わらず可愛いの好きだね。有美は」


「う、うるさいな。いいでしょ別に!」


「勿論だよ。せっかくだしお揃いで買おっか」


「お揃……っ。う、うん。そう、ね」


 相変わらず、あの二人は本当に仲がいいな。


 いやまあ、恋人同士だし当然といえば当然なのだが。


「ねぇゆーし、こっちこっち! 見てー!!」


「おーう。ちょっと待ってろー」





 恋人同士、か。

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