「ふにゃぁ、気持ちいぃ……」
「だね〜。……ちょっと精神的にクるものがあるけど」
「おぉ? どうしたどうしたぁ。元気出してこうぜ有美ぃ!」
ぶるるんっ、ぽよんっ、ぺたんっ。
三者三様の美少女達が、ほぼ貸切状態の温泉で密着する。
大きなバスタオルを身体に巻いて、女性同士とはいえ見せるのが恥ずかしい恥部を隠す由那と有美に、何も気にしていないと言った様子で全てを曝け出す薫。男子がいれば絶叫するであろう程のユートピアが完成していた。
「……ねえ、アンタ達本当に高校一年生なんだよね? その、受験に失敗して三浪くらいしてないよね?」
「ほえ? どうしたの有美ちゃん? なんかさっきから元気ないよ……?」
ぶるるんっ。
「もしかして寝ぼけてるのかぁ? 全く、私より早く集合してたくせに実は寝起きだったのかよ〜」
ぽよんっ。
「はは、はははははは。涙出そう……」
ぺたんっ。
有美が涙目でぷるぷると身体を震わせている理由は言わずもがな。
自分の挟む二代巨頭……いや、一人二つだから四代巨頭というべきか。それらが自分にはない存在感を際立たせ、精神をゴリゴリと削っているからである。
まだ高校一年生。成長期真っ只中で、これから伸び代はある。自分に何度そう言い聞かせても、左右の二人とはあまりにも大きさが違いすぎて。自分がここまでになれる姿がこれっぽっちも想像できなかった。
「って、あれ由那ちゃん? なんか初めて会ったときよりおっぱい大きくなった〜? 最近あまり触らせてくれないから気づかなかったけど、なんか前よりも存在感ある!」
「へっ!? あ、あぅ……えっと……うん。最近、使ってる下着がちょっと苦しい……かも」
「やっぱりか〜! いやぁ、私も最近下着入らなくなって買い替えたんだよねぇ。ほんと、成長期って大変だよぉ〜」
「あは、あはっ。あはあはあはっ」
頬をヒクつかせ、有美は改めて自分の貧相なものを見つめる。
(生、長期? 何それ……私、知らないなぁ……)
身長は、少し伸びた。両隣の二人より背は高く、つい最近百六十に到達したところだ。
だけど、欲しいのは身長じゃない。胸だ。おっぱいだ。どれだけサイトで調べて発育にいい食べ物を取るようにしても、自分で大きくなるというマッサージをしてみても。効果は一向に現れなかった。
だというのに……
「それに比べてぇ。あっれぇ? ぷぷぷ。有美は相変わらず可愛らしいままだねぇ。私の、少し分てあげよっかぁ?」
「……」
「ちょ、薫ちゃん! ゆ、有美ちゃん? 大丈夫だよ。まだ高校一年生だもん! 有美ちゃんだってこれから嫌でも大きくなるよ!! それに、仮に大きくならなくても渡辺君はそんなこと気にしたりなんて────」
「ぅ、あ」
「へ?」
「う゛わあ゛ぁぁぁぁっっっ!! テメェら、そのふざけた肉寄越せェェェェェッッッッ!!!!」
さも自分は望んでいないのに大きくなってしまったとでも言いたげな薫の煽りと、優しさからだろうと分かっていてもグサグサと心臓を突き刺してくる由那の励まし。その二つが純情な乙女の感情を、いとも簡単に崩壊させた。
「痛っ、いだだだだだ!? やめ、ヤメロッ!! 千切れるぅぅぅ!!!」
「うるせぇ、何がおっぱいだ! 何が巨乳だァァ!! 平等に分け与えろやァァァァァ!!!」
「ひっ!? ゆ、有美ちゃん、なんでこっち見────ひにゃぁんっ!?」
「ふへっ、ふへへっ。こんなもの……こんなものォォ!!」
有美の叫び声と、揉まれ引っ張られる二人の悲鳴がこだまする。
周りに人はいない。だがそれ故に、大切なことを忘れて。有美は癇癪を起こして大暴れしていた。
「……なあ、お前の彼女の声、こっちまで来てるぞ」
「あ、あはは。面目ない……」
大理石の壁一枚を隔てた先で湯船に浸かるメンズ二人は、そんな女子の戯れを聞かされながら。大きなため息を吐いていた。
「おっぱいなんて、大っ嫌いだァァァァァ!!!」