「ぐぬぉ、おぉぉぉぉ……」
俺は一人、自室のベッドの上で悶えていた。
由那の家から出て一人で帰宅し、何も考えられないまま真顔でお風呂だけを済ませて。寝巻きに着替えてから飛び込んだのである。
「俺、なんであんなことぉぉぉ!!」
憂太に向かって吐いた、本当の気持ち。
由那のことが好きだ。一度そう自覚してしまってから、動悸が治まらない。
いつどの瞬間にアイツのことを好きになってしまったのか。ただの幼なじみから一人の異性として見るようになってしまったのか。案外再開してすぐそうなってしまった気もすれば、つい最近の出来事だった気もする。
ただ正確に言えるのは、俺は由那を好きになってしまったということ。これだけは、否定しようのない事実だ。
(告白する、なんて息巻いたけど。由那が俺のことをどう思っているのかは、結局確証が持てないままなんだよな……)
多分、由那は俺のことをある程度好きだと思ってくれているとは思う。普段の言動や行動から、何度もその片鱗は感じてきた。
だが、人のことを好きだ何だと意識したことがないもんだから由那に告白すれば百パーセント付き合ってもらえるかと言われれば、正直なところ全く自信がない。
怖い。自分の気持ちを伝えて、拒否されるのが。
(だけど、いつまでもこのままってわけにはいかない。いつかは、この関係も卒業しないと)
俺と由那の関係は、どっちつかずだ。
幼なじみにしては仲が良すぎるし、かと言って恋人というわけではない。このどっちつかずを止めるためには、告白するのが一番なのは分かってる。
分かっている、けど……
「由那と、離れたくない。多分俺はもう、由那に拒絶されたら立ち直れないところまで来てる……」
この一ヶ月半、由那の隣にいることができて本当に楽しかった。
初めは困惑から始まった関係だったとしても、段々と由那のことが愛おしくなって。終いには今こうして恋心を抱いてしまうまでに気持ちは成長した。
俺は、多分恋とか彼女とかそういうのとは無縁だと思っていたのに。昔別れた幼なじみが可愛く成長して歩み寄ってくる日常や、てっきり嫌われていたのだろうとばかり思っていた時代が勘違いであり、ただ俺と話すのが照れ臭くなっていたが故の照れ隠しであったという真実を知ったこと。
様々な要因が絡み合い、気づけば俺は由那のことを好きになっていた。
由那ともっと触れ合っていたい。離れたくない。抱きしめたい。……キスをしたい。
我ながらムカつくくらいにベタ惚れだ。少なくとも再開した時はせいぜい「可愛く成長したなぁ」くらいだったものを。生半可なアプローチじゃ俺は振り向いてくれないから、なんてアイツは言っていたけれど、積極的すぎだ。
おかげで四六時中、由那のことばかり考えてしまう。
「っう。くっそ……人を好きになるって、こんなになのか。由那も……同じ気持ちでいてくれたら、いいんだけどな」
締め付けられるような思いの胸元を服越しに手で握りながら、上半身を起こす。
「どうするんだよ、これから……」
由那の横顔を思い浮かべながら一人、呟いて。ぐうぅ、と激しく主張を始めた腹に気も止めず、脱力感だけが残った身体でもう一度ベッドに倒れ込んで。
眠れもしないまま、天井を見つめた。