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第42話 私のお家に

「えー……今日から中間テスト一週間前だ。たくさん勉強していい点数取ってくれなー。じゃないと先生怒られるから」


 先生の緩い言葉と共に、帰りのホームルームが終了する。


 もう五月。テストがあることは分かっていたけれど、やっぱり憂鬱だな。


「ゆーしっ! 一緒に帰ろー!!」


「おお……由那は相変わらず元気だな」


「ほよ? あ、もしかしてゆーし、テストって聞いてテンション下がってる?」


「まあ、そんなとこだな」


 抱きついてくる由那の頭を撫でつつそう返すと、教室の扉から中田さんと渡辺が出ていくのが見えた。


 あの二人も相変わらずなようで、人目があるからなのか手を繋ぎ辛く、渡辺の手に左手を伸ばしては引っ込め、伸ばしては引っ込めを繰り返している。


 ちなみに在原さんは、机の上で「お゛お゛お゛お゛お゛ん゛っっ」と奇声を上げながら頭を抱えていた。


 でも、頭を抱えたくなる気持ちはよく分かる。俺も勉強が好きか嫌いかと言われればやはり嫌いだし、テストなんて受けなくていいなら絶対受けたくない。


 が、由那は何故か普段よりも楽しそうだ。テスト週間に入ったと告げられてここまで明るいのも珍しい。まさか、勉強が好きなのだろうか。


「ね、ねっ! ゆーしテスト期間はどうするの?」


「どうする……って。普通に家で勉強だろ。流石に遊びにいくわけにもいかないしなぁ」


「うんうん、そうだよねぇ。テスト週間は勉強する期間だもんねぇ」


「? それで、こんなこと聞いてどうするんだ?」


 どうやら由那は俺のテスト期間中の予定が知りたかったようだが。まさか遊びに行こうとか言い出さないよな、と不安になりつつも、問いかける。


 コイツなら「七日もあるから一日くらい!!」とかすっげぇ言いそうだもんな。


「よく聞いてくれました! テスト期間中、お家で悲しく一人勉強しようとしているゆーしさんに、朗報です!!」


 どどんっ、と漫画によくあるあれが付きそうな迫力を出しながら、由那は言う。


「このテスト期間一週間とテスト当日の合計十日間! 私の部屋を勉強部屋として使うことをお母さんに許してもらったのです!!」


「……へ?」


 由那の部屋を、勉強部屋に? それってどういう────


「私の部屋で一緒に勉強しよ! ゆーしっ!!」


「……はあぁぁぁ!?」


 そ、それはつまりあれか。俺が由那の家に上がるどころか由那の部屋にまで入って、放課後から夜までずっと一緒にいるってことか!?


 そんなの嬉しいに決まって────じゃない! 集中して勉強なんてできるわけがないんだ、そんなことをしたら!!


「ねーぇ、いいでしょぉ?」


「だ、ダメに決まってるだろ。集中できる気がしない」


「むむ……ならとりあえず、今日だけでも家に来てよぉ! それで集中できなかったら図書館でいいからぁ!!」


 あ、一緒に勉強するのは確定なのか。


 ま、まあ? せっかく由那がお母さんに許可を取ってくれたわけだし? そうだ、一日だけだ。今日だけ行こう。行かなかったら失礼だしな。……うん。


「分かった。一日だけだぞ」


「ほんと!? やったぁ!!!」





 はぁ。俺ってとことん自分に甘いな……。

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