「ねーねー、由那ちゃん! 神沢君とは付き合ってるの!?」
「ずっとラブラブだもんね〜。付き合ってないって方がおかしいくらいだよぉ〜」
「ふえっ!? な、何……?」
一限、二限、三限と授業を終えて、四限。体育で泣く泣く男女別の更衣室へと入りゆーしと別れた私は、体操服に着替えようと荷物を棚に置いた瞬間。二人のクラスメイトに囲まれた。
名前は……残念ながら覚えていない。話したのはこれが初めてだし、自己紹介も全員のを聞き流してたから。
「あ、顔赤くなった! 由那ちゃんマジで可愛いよねぇ! なんか甘やかしたくなる可愛さ!!」
「私なんて、全然……だよ。ゆーしとも、その。付き合ってないし……」
「「付き合ってないの!?!?」」
「う、うん。ゆーしとは幼なじみで……」
二人のあまりの勢いに、私は萎縮して縮こまる。
ゆーし以外の人は、あまり得意じゃない。小さい頃からゆーしとずっと一緒にいたせいで男女共にコミュニケーションを取るのが少し苦手で、あまり友達も多くない。そんな私がガツガツ来られて、怖くないはずがなかった。
「え、え? じゃあもしかして、由那ちゃんってさ。……片想い中?」
「あ、ぅあ……えっと……うん。そう、なるのかな」
「まぁじかぁ。由那ちゃん、あんなに好意剥き出しなのにねぇ。神沢君鈍感なの?」
「あは、は。私も結構、頑張ってるんだけどね。幼なじみ相手だと、あまり女の子として意識してくれないのかも……」
「神沢勇士。中々罪な男よのぉ。っと、そういえば私たち喋るの初めてじゃん。ちゃんと自己紹介しなきゃ」
まずは一人目。私がゆーしに片想い中だと見抜いた方。黒く長いロングの髪を背中まで垂らす、ザ清楚って感じの女の子、中田有美ちゃん。清楚で慎ましい感じの見た目とは逆に、テンションはとても高くて所謂「ギャル」に近い存在だった。
二人目は、ゆるふわ茶髪パーマの在原薫ちゃん。こっちは分かりやすくて、見た目通りのギャルちゃん。すごくおしゃれさんで、取り出して棚に置いたスマホは可愛くデコレーションされていた。少し垂れ目でおっとりとした印象がある。
そんな二人に自己紹介をされて、私のことはどうやらもう覚えてくれていたらしいのでこっちは割愛。久しぶりにゆーし以外の同学年の子と喋って、私は二人とすぐに友達になった。
「ね、ね! 神沢君のどこを好きになったの!? 教えてよぉ〜!」
「えぇ……。うーん、そうだなぁ。かっこよくて、でも優しくて。手を繋ぐとドキドキさせてくれるところ……かな」
「めちゃくちゃ乙女だぁ! よしよぉし……」
「あ、頭撫でないでよぉ」
「ふっふっふ。撫でてもらうのは神沢君にだけがいいってことかい?」
「っっえ!? そ、そういう、わけじゃ……」
「でも今日、撫でてもらってたよね? 家の前で」
「見てたの!?」
下着姿になり、半袖半ズボンの体操服に着替えながら。私は有美ちゃんに頭をなでなでに加えて薫ちゃんの衝撃発言に顔を赤く染める。
まさか、クラスメイトに見られていたなんて。恥ずかしい。全然後悔はしてないけど、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。
「これはもっと問い詰める必要があるなぁ? うりうり、もっと乙女エピソード聞かせろぉ!」
「ひゃんっ!? 有美ちゃ、ちょっ────!?」
「おっほぉ。これは中々ダイナマイトな。一目見た時から思ってたけど、やっぱり素晴らしいモノをお持ちで……」
むにむに。背後をとってきた有美ちゃんに、おっぱいを後ろから揉みしだかれる。
おじさんみたいな台詞を吐きながら揉んでくる彼女の手腕に思わず変な声を出しそうになりながらも、やがてそんな私を見かねてチョップで薫ちゃんが助け出してくれて、その後ろにそっと隠れた。
「バカ有美。いい加減そのパイ揉み癖やめな。自分にまともなのがついてないからって」
「は、はぁ!? 薫アンタ、今言っちゃいけないこと言ったな!? ちょっとでかいのぶら下げてるからって調子乗んなよぉぉ!?」
「……有美ちゃん、ちっちゃい」
「ムキィィィ!! 由那ちゃんまでぇぇぇぇ!!!」
そういえば、ゆーしが言ってたっけ。ゆーし以外にも、女の子の友達を作った方がいいって。
言われた通りだった。たまにはこうして、女の子同士で仲良くおしゃべりするのも……いいかもしれない。
(ゆーしは友達、できたかな?)
ちっぱい弄りをされて激怒する有美ちゃんの猛攻を、薫ちゃんを盾にすることで防ぎながら。ゆーしも楽しんでるといいなぁ、と。思った。