オーストラリア
南半球の国の大陸。
サンタクロースがサーフボードに乗ってやってくる国。
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「結婚、おめでとう! それで、新婚旅行はどこに行くんだ?」
結婚式で上司が、新郎であるみぱぱに話しかけます。
そう、ついにみぱぱは結婚しました。結婚相手は、びままさんです。びままさん、漢字で書くと美ママです。
「オーストラリアです。本当はヨーロッパとかカナダとかも候補に挙がっていたのですが、びままが海外初めてなので時差の少ない方が良いかと思いまして」
みぱぱが生まれて初めて完全プライベートで行く国はオーストラリアです。そのため、今回は(番外編)となっております。
「そうか、じゃあ、グリーンアイランドに行くだろう。ちょっと営業してきてくれ」
「オーストラリアに行くので、ゲームはしませんよ。だいたい、念能力者じゃないのでプレイできませんよ」
「誰がグリードアイランドの話をしているんだ。だいたい58億ジェニーなんて持っていないだろう。グリーンアイランド。ケアンズの近くの」
「ああ、今回のツアーで予定に入っているので、気が向いたら聞いてみます」
結婚式と新婚旅行と引っ越しのために、十日ほど休みを取ります。そのために、結婚式直前まで頑張って仕事をして、引き継ぎをしました。
成田空港からケアンズへ到着。
オーストラリアの動物と言えばコアラ。
シドニーやメルボルンでは抱っこ禁止のコアラですが、ケアンズではオッケーです。その上、写真まで撮ってくれます。
まずはみぱぱが抱っこさせて貰います。インストラクターさんの指示で腕の形をつくり、その上に乗せてくれます。そうすると、コアラが爪を立てて、ぎゅっと抱きついてくれます。即座にカメラマンが写真を撮ってくれます。
次はびままさんです。同じようにしてコアラを抱っこして、写真を撮ろうとして、カメラマンが何かに気が付きました。
「あれ? うんちしてる」
「いえ、ミまでは出てませんよ。ガスだけです」
びままさんがいるのに、間違えられては困ると思ったみぱぱはすぐ答えました。
「いえいえ、あなたじゃなくて、コアラですよ」
そうです。みぱぱではなく、びままさんが抱っこしているコアラがうんちをしていたのです。
小さな黒い物質がぽろぽろと落ちました。
慌てるガイドさんでしたが、ころころしているため、びままさんの服にはほとんどダメージはありませんでした。
「いや~オーストラリアで初めのアクティビティでうんちがつくなんて、運がついてますよ」
ガイドさんはそう言って笑いました。
コアラの次は羊です。
牧羊犬のショー。
もふもふの羊を追いかけるモフモフの犬。
その姿を見てびままさんが言います。
「牧羊犬って賢いね」
「いやいや、ボクの方が賢いよ。エッヘン」
なぜか新婚旅行で犬に対抗意識を発揮するみぱぱを、あきれ顔で笑うびままさん。
牧羊犬のショーが終わると、羊の毛刈りショーです。
薄暗い建物の中は椅子がおかれて、正面は一段高くなっており、そのステージで羊の毛が刈られるショーです。
連れてこられた羊は、カウボーイ姿のガタイの良いお兄さんにバリカンで手際よく刈られていきます。
「触りたい人はステージに上がってください」
みぱぱは手を上げてステージに上がるとカウボーイのお兄さんの大胸筋を触ります。
「すみません、触るのは羊と羊毛の方です」
「ああ、すみません。つい……」
羊毛はまだ、羊のぬくもりが残ってほんのり暖かく、そして思ったよりもずっと油っぽかった。
さて、一言で羊と言っても色々な種類がいます。各種の羊の剥製がステージの隣に置かれています。
「じゃあ、記念写真を撮りますよ。この剥製に乗っていただいて、写真を撮りますよ~」
「びままさん、写真撮って貰いましょう」
みぱぱはびままさんの手を引いてステージに向かいます。
カウボーイハットをかぶって羊の剥製に乗ると、嬉しいことに牧羊犬も同じように乗ってくれました。
さて次の日、ケアンズの大きな目的の一つは、上司も言ったグリーンアイランド。世界遺産のグレートバリアリーフ。世界最大の珊瑚礁地域。
水着を着込んで船に乗って一時間ほどすると、目的地に到着です。
「それでは、ここでシュノーケリングを楽しんでいただきますが、珊瑚礁や魚などに無闇に触れることはしないようにしてください。それでも触りたくなったときは、パートナーの肌を触ってください。さあ、さっさと私の視界から消えてください。幸せな連中め」
幸せカップルばかりのツアーをしているガイドさんは苦々しく注意事項を教えてくれました。
船尾から、海に入るみぱぱ。
海の側で生まれ育ったみぱぱは、足がつかない深い海に何にも抵抗はありません。
でも、びままさんは海で泳ぎ慣れていません。
恐る恐る海に入るびままさんの手を取って、びままさんが落ち着くのを待ちます。
「大丈夫?」
「たぶん」
「落ち着いたら、ちょっとそのまま海の中見てみたら」
二人はぷかぷか浮いたまま、顔だけを水面につけて、海中を見てみる。
透明度の高い海。水面からでも結構な距離見えます。
色とりどりの珊瑚礁に魚があちらこちらに泳いでいます。
みぱぱは潜って、近くて見たくてうずうずしますが、びままさんが落ち着くのを待ちます。
「もう大丈夫です。潜りましょうか」
びままさんも落ち着いたようです。カナヅチでないびままさんは、落ち着いたら全く問題ありません。
二人で竜宮城へ向かいます。
グレートバリアリーフの海のお目当てと言えば、ナポレオンフィッシュ。
しかし、相手は自然です。見えるかどうかは運次第。
色とりどりの魚たちのあいだに優雅に泳ぐ大きめのカメ。そう、ウミガメが泳いでいます。
みぱぱはウミガメに近づいて聞いてみます。
「ケアンズでオススメの店はあるかい?」
「兄ちゃん、聞く相手を間違ってないか?」
「いや、間違って無いよ。ウミガメに質問すると楽しい答えが返ってくるって聞いて来たのだけど」
「ああ、そいつはニューヨークにいる奴だな。あいつのせいで、ウミガメがみんなおしゃべりな奴だと間違えられるんだよ。もともとウミガメって言うのは無口な奴が多いんだぜ。ああ、オススメの店だったな。この店に行ってみな。じゃあ、奥さんと楽しんでくれよな」
「ああ、ありがとう。君はクラッシュじゃなかったんだな。間違ってごめんよ」
優しいウミガメに店を聞いたみぱぱたちはグリーンアイランドに移動して着替えます。
「あれ?」
みぱぱはグリーンアイランドを見て、驚きました。それは、そこでカードの奪い合いが繰り広げていなかったからではありません。あのグレートバリアリーフの美しい自然を見たあとなので、グリーンアイランドも美しいと思っていたのです。自然豊かで美しいのですが、手入れをされていないというか、落ち葉が多いのです。
そして、上司の言葉を思い出したみぱぱは、ガイドに尋ねました。
「この島の水ってどうしているんですか? 井戸水なのですか? それとも海水淡水化装置を使っているのですか?」
「この島は世界遺産ですから、自然保全の観点から水は全て、本土から運んでします。ですから、この島から葉っぱ一枚、持ち出してはダメですよ」
自然を自然のままにするため、落ち葉もそのままにしているようです。
そんな自然豊かなグリーンアイランドをあとにしたみぱぱとびままさんは、ウミガメに教えて貰った店にディナーに向かいます。
オーストラリアと言えば、オージービーフ!
ふだん、ステーキなど食べないみぱぱですが、せっかくなのでがっつりと頼みます。そしてビール。びままさんも同じようにステーキを頼みますが、控えめの量です。
ふたりは楽しみに待っているとやってきました。
「え!?」
「これは……」
ふたりは顔を見合わせます。
3~4センチはありそうな厚み、手の平サイズの大きさのステーキ。
びままさんのステーキは三分の二くらいです。
もう見るだけでお腹いっぱいになりそうです。
「流石、オーストラリアは国土もデカいが、ステーキもデカい」
ビールも美味い、ステーキも美味い。量も多くて最高!
すみません。食べきれませんでした。