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フィジー 1回目 後編

 装置も無事に立ち上がり、運転確認の段階です。

 みぱぱもアユビさんも一安心です。


「みぱぱさん、ちょっとコーヒーでも飲みましょうか?」

「良いですね。でも、私はコーヒーは飲めないので紅茶でお願いします」


 みぱぱとアユビさんはレストランに行きます。

 すでにランチタイムは終わっているので、お客はほとんどいません。

 アユビさんの後ろについて、カウンターの内側に行くと、でっぷり太った、いや、ふくよかなフィジー女性がいました。


「どうしたんだい」

「ちょっと、一休みですよ。僕にコーヒーとみぱぱさんに紅茶を貰えますか?」

「オッケー。ところで、紅茶にはフレッシュミルクは入れるか?」


 みぱぱさん、基本的にストレートティー、レモンティー、ミルクティーのどれも好きです。

 せっかくなんでミルクティーを貰おうと思いました。


「お願いします」


 みぱぱの言葉を聞いた女性とアユビさんは笑い出しました。


「みぱぱさん、フレッシュミルクってこれですよ」


 女性は自分の乳を絞るポーズをしました。

 フレッシュミルク:新鮮なミルク:母乳。


「ええー、のーさんきゅーです」


 冗談好きなフィジーの皆さん。

 そうそう、フィジーの皆さんといえば、フィジーでは歓迎の宴があります。

 到着した次の日の夜、食事が終わったみぱぱは、アユビさんに連れられてあるところに連れて行かれました。

 簡単に言うと集会場。

 そこには現地のスタッフが十人ほど集まっています。

 雰囲気からしたら、これから酒盛りが始まるのか? とちょっとウキウキする酒好きのみぱぱ。

 しかし出された物はカバ。ああ、これは動物でした。正確にはカヴァ。

 リーダーらしい人がいてその左右に向かい合わせになるように数人座っています。

 みぱぱは客人なのでそのリーダーのすぐ側に座らされました。

 さて、リーダーがカヴァを作り始めます。

 木で出来た大きな器。力士が優勝した後に日本酒を飲む器のような物に水を入れます。

 そこのにカヴァの元が入った袋を入れてリーダーがその袋をぐにゅぐにゅとするとどんどん茶色になってきます。

 見た目はただの泥水です。

 みぱぱはコーヒーが嫌いなのでコーヒーのことを真っ黒な泥水と言いますが、カヴァの見た目は本当に泥水です。

 それを椰子の実で作ったコップですくって、リーダーが味見をします。

 何度か味見をして納得がいったのか、リーダーはそのコップをみぱぱに渡してくれます。

 どう考えてもこの泥水を飲めと言うことです。

 まあ、お腹は壊さないだろう。

 みぱぱは思い切って一口飲んでみます。

 不味い。

 なんとも言えない、漢方のような味。何よりも舌がピリピリします。

 アユビさんに言われて、そのコップを次の人に回します。

 次の人も一口飲んで、次の人へ。コップになくなったら、先ほどの大きな器からすくい取って次々と回し飲みします。

 一通り、飲み終わったら、みんな世間話を始めました。

 その間も、カヴァは二週目、三週目と回ってきます。

 特に食べ物も無く、おしゃべりとカヴァの回し飲み。


「みぱぱさん、カヴァの飲み過ぎに気をつけてくださいね」

「え!? もしかして感じないだけでアルコールが入っているんですか?」

「アルコールは入っていませんよ。逆ですよ、カヴァは鎮静効果があるので、飲み過ぎると男性の物が起たなくなりますよ」


 フィジーでは伝統的に酒の代わりにカヴァを飲んで集会をするみたいです。

 なんでお酒を飲まないのか?

 フィジーは元々食人人種やラグビーで知られるように気性荒い種族です。普段は大丈夫ですが、お酒を飲むと興奮して喧嘩を始めてしまうため、鎮静効果のあるカヴァを飲むらしいです。

 飲み慣れると舌のシピレが楽しめますが、決して美味しい物ではありません。


「そういえば、カヴァって何で出来ているのですか?」

「木の根っ、あ、間違えました根っ子ですよ。お土産でも売ってますよ」

「あれって植物の汁だったんですか?」

「そうです。コショウ科の木の根っ子を粉状にした物ですよ」


 コショウ科だからなのか、カヴァを飲むと舌がピリッとします。

 しかし、フィジーらしいお土産と言えばそうなのかといえばそうなんだろうけど、喜ばれるお土産ではないだろう。

 歓迎のカヴァの儀式も終わり、部屋に戻ろうとするみぱぱは、ふと思い出しました。


「超時空騎団サザンクロス!」


 みぱぱが夜空を見上げると満天の星空。田舎育ちのみぱぱも見たことが無いような星の数。


「どれが南十字星?」


 あまりに多い星にどれが何の星かさっぱりわからないみぱぱでした。


「うん、どれかが南十字星だな。まあ、このうちのどれかだな」


 みぱぱは探すのを諦めました。


 さて、装置の立ち上げが終わったみぱぱは日本に帰ることになりました。

 装置のある島からフィジー本島に戻り、空港近くのホテルに一泊して朝一の飛行機で帰ります。


「みぱぱさん、空港近くのホテルで一泊するのなら、妹に会ってみないか?」

「のーさんきゅーです」


 最後までみぱぱに妹を会わせようとするアユビさんでした。


 さて、恒例の上司報告会。


「初めてのフィジーはどうだった?」

「海はモルジブの方が綺麗ですが、食べ物はフィジーの方が美味しかったですね」

「そう言えばサザンクロスは見れたか?」

「いや~やっぱり私はマクロスとオーガスだけで大丈夫です」


 そして、みぱぱは買ったことも無い、女性用ファッション誌、日本語の童話と日本語の辞書を買ってアユビに送ったのでした。

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