ハワイ
アメリカ州の一つで唯一島だけで構成されている州。カメハメハ大王でも有名。
~*~*~
会議室に集められた社員。
『Sound Only』
どこかで見た風景です。
「ハワイに行きたいか~!」
社長の声が会議室に響きます。
いきなりのド直球!
「お~!!!」
みぱぱは、このビックウェーブに乗るしかないと、右腕を突き上げて答えます。
「え~今回は、社員旅行兼研修旅行です。ハワイ各地で出されるクエストクリアしないと即帰国です」
山下さんの冷静な声がこの旅行の厳しさを伝えます。
もしかしてタイ旅行でいろいろ誘わなかったのが響いているのでしょうか?
さて、今回のハワイ旅行は納入した装置の視察及び、他社の装置の見学も兼ねた研修旅行です。
会社的にそうした方が、研究開発費で落とせるのでしょう。
節税大切。社員に還元大切。給料上げろ!
「みぱぱさん、どういうことなんですか?」
去年入社の嶋さんが不安そうにみぱぱに聞いてきます。
「この前、ハワイに送った装置の試運転と他社の装置を見学と言う名目で社員旅行に行くみたいだね。浮かれ過ぎずに、英語の勉強と他社の装置の勉強をしとけって言うことだよ」
「納得しました」
「納得の……」
「な!」
真面目な林原さんとは違い、ノリの良い嶋さんです。
さて、ハワイについたみぱぱ達は相変わらずの夜フライトで、夜にホテルにチェックインします。
林原さんと同室のみぱぱは部屋に入ろうとドアの前に立ちます。
「みぱぱさん、これって、カードを入れて引き抜くとロックが解除されるんですよね」
「そう、みたいですね。ちょっとやってみますね」
この頃はまだ、日本ではあまり使われていなかった引き抜き式のカードキー。
ドキドキしながらカードキーを引き抜きます。
ピー
赤いランプが付きます。
失敗です。
「もう一回やってみますね。今度はちょっとゆっくり引いてみます」
もう一度カードキーをゆっくり引き抜きます。
ピッ
青いランプが付きます。
成功です。
「今のスピードですね。結構、スピードがシビアかも知れませんね」
「まあ、駄目だったら何回もすれば良いだけですもんね」
そう言って部屋に荷物を置いて、ホテルを探索しようとみぱぱは部屋を出ました。
「あれ? なんで? なんで開かないの?」
隣の部屋の前で大きな鞄を持ったまま、鍵が開かずに四苦八苦している影がひとつあります。
「アレ? 山下さん。何をしてるんですか?」
「ああ、みぱぱさん、ちょうどよかった。何度やっても鍵が開かないのよ」
山下さんは何回も鍵を抜き差ししていますが、エラーしか出ません。
様子を見ると、せっかちな山下さんは抜く速度が速いのです。
「ちょっとカードを貸してみてください」
みぱぱがゆっくりと抜くと一発で鍵が開きました。
「え!? なんで?」
「カードは抜くときに反応するのですが、抜く速さが速いんですよ。ゆっくりと抜いてください」
山下さんがもう一度引くと今度は開きました。
便利なようで不便です。
さて、次の日の朝、オアフ島から国内線で移動します。
短い飛行機時間で到着します。
ピー!
手荷物検査場で警報が鳴ります。
それもそのはず、嶋さんの手荷物に工具が入っていたのです。
「こ、これは……」
なんとか英語で説明しようとする嶋さん。しかし、海外慣れしていなく英語も片言の嶋さんは係の人になんとか説明しようとしますが、言葉がなかなか出てきません。
これも、嶋さんが海外慣れするために必要な勉強です。
「みぱぱさ~ん、助けてください」
あまり長くかかると後ろの人に迷惑がかかります。
ここはみぱぱの出番です。
「えくすきゅーずみー」
嶋さんと変わらない片言英語で堂々と説明します。
なんとか納得して貰って空港を出ます。
「みぱぱさん、ありがとうございます」
「いやいや、たいしたことしてないですよ。片言でも、単語だけでもいいので口に出してなんとか伝えようとしてみましょう。今回はみんながいるので良いですが、出張の時は一人でどうにかしなければいけないんですよ」
「分かりました」
「納得の……」
「な! ……みぱぱさん、締まらないですよ」
みぱぱたちは現場に着くと、試運転は速攻で終わります。それもそのはず、いつもであれば一人で行う試運転ですが、会社のフルメンバーで行いました。
「じゃあ、嶋さん。この装置の説明をお願いします」
自分の会社の試運転が終わった後、他社の装置の見学をします。
そこで山下さんは嶋さんへ愛の鞭を振るいます。
「え、あ、おふ……」
勉強しているはずですが、上手く説明出来ません。
一応、みぱぱが補足しながら、説明をする嶋さん。おかげで嶋さんの緊急帰国は免れました。
そうして仕事および研修はこれで終わりです。
その日のうちにオアフ島へ戻りました。